上 下
87 / 105
第7章 帝国内戦

第86話 遷都

しおりを挟む
 ハヤブサの姿でリーンフェルの戻ってくると、帝都に繋がるリーンフェルの町門に多くの人たちが集まっていた。

 空から見てる限り、大きな馬車や荷馬車等が多くみられ、キャラバンと言うわけでもなさそうだった。

 何があったんだろう?
 そんなことを思いながら、公爵邸の裏にある林の地面に降り立った。

 本来の姿に戻り表側に周ると。

「おや?」

 庭の手入れをしていた執事がいた。
 スイッフの町にアリサを迎えに来ていた執事だった。

「ん?」
「いえ、いつの間に戻られていたのかと」
「つい先ほど?」
「そうですか、皇帝様にはお会いになりましたか?」
「いえ、まだこれから」
「そうですか、執務室の方にいらっしゃいますよ、案内しましょう」
「はぁ……」

 その後、執事に皇帝と公爵の居る執務室まで案内された。

「おかえり、首尾はどうだい?」

 そう聞いてきたのは公爵の方だった。

「川の上流にダムを建て堰き止めました」
「やっぱりそうか、思っていたより上流に建てたんだね、近くを流れる川も昨日まで干上がったように水量が少なかったからね」
「ところで何かあったんですか?町に戻ってくるときに人が一杯いたんですが」
「そうだね、帝都に住んでいた騎士と兵士の家族達や、リーンフェルに避難してくる人たちだね」
「騎士と兵士の家族に市民避難ですか?」
「そう、君のお友達が帝都に大規模な光魔法を放ったらしいんだけど何か知っているかい?」

 どういうことだ?

「バハムートの事ですよね?」
「そう1週間ほど前、城と町全域に2度なんらかの光魔法が使われたらしい、手の者によるとクリアランスじゃないかとは言っていたけど確証は無いらしい」
「その魔法が使われたときにバハムートが居たと?」
「あぁ、多くの人が見たって噂が流れているようだね」

 多くの人が見た?
 もしかして自分が正弘に話した内容から、“あ!俺も見たかも!”みたいな感じで多くの人が見た状態になっている気がする。

 それよりも、騎士や兵士の家族と言ってるあたり、クリアランスは効果あったようだ。
 だからこそ、騎士がリーンフェルに逃げてきているんだろう。

「それでバハムートが帝都を襲うかもって事で逃げて来てるって事です?」
「あぁ、おそらく向こうが攻めてくる事は無くなっただろうが、まずはこの町に来た者達を何とかしないとだね」

 “攻めてくる事は無くなった”これが聞けただけでも帝都で行動した甲斐があったというものだ。

「でどうするんです?」
「そこで君に頼みがある」

 今度は皇帝が口を開いた。

「自分にです?」
「あぁ、先の川堰き止めの件も含めて報酬を出すつもりだが、城壁の外側に町と城壁作りを手伝ってもらえないだろうか、場合によっては遷都することになる」
「遷都って、リーンフェルが帝都になるって事ですか?」
「そう言う事だ」

 上流のダムを使う必要性が無くなったのは良かったが、遷都とか、ダム作りの次は街づくりの支援ですか?

「はぁ、分かりましたけど、どのようにするんです?」
「そうだね、今考えているのは、町の規模を3~4倍にしつつ、町全体を囲む堀をと考えている」

 町の規模を3~4倍ってかなりの拡張工事だと思うんだが?

「お金の方は大丈夫なんです?工事に携わる人たちに報酬を出す必要があるでしょう?」
「そこは問題ないよ、帝国の財布を預かるのが我が家の役目だからね」

 皇帝に代わり公爵が言った。

「そうなんです?」
「あぁ、君と帝都に行った日、城の財産をすべてこちらに持ってきたからね」

 第一皇子は金がないのに戦を起こそうとしたのか?

「それじゃあ、避難してきた人たちの当分の間の仕事はあるって事ですか」
「そう言う事だ、それまでの仮設住宅とかを頼みたいんだがいいかな?」

 まぁ、関わった以上仕方あるまい。

「わかりましたが、戦の方は大丈夫なんですか?」
「あぁ、そっちはほぼ問題ないだろう。東側に居る他の貴族がここに攻めてくるのが課題だな、あとはグリーンベルト家からの救援依頼がきているが、ここからは出せる程いないがファーファ卿が支援するとの事だが間に合うかどうか……」

 次はグリーンベルト家の救援を先にやった方が良さそうな状態か?

「そうですか、ちょっとアリサと遠出してきても良いです?」
「それは構わないけど、どこに行くんだい?」
「グリーンベルト家領内?」
「まさか援軍に行くつもりなのかい?」
「そうですね、戦場に立つつもりは無いですが、城壁の修理とかなら役に立てるかと」
「確かにそうだが、アリサもって事はどういうことだい?」
「自分とアリサが公爵家からの助っ人だと思われるためですかね?」
「ふむ」

 公爵はそう言うと、皇帝と目を合わせ何かを考えている様子だった。

「わかった。君に任せよう、グリーンベルト家はメンダーの北側に位置する領土だ領民の9割が獣人で構成され、複数の部族からなる為、町らしい町が存在しない」

 町らしい町が存在しないって……。

「皆テントとかですか?」
「さよう、メンダーから北に行くと大きな湖が見えてくるはずだ、その湖の畔に白いテントが複数見えてきたら、そこが白狼族ジャンヌ・グリーンベルトのいる集落だ」

 メンダーから北に向かい大きな湖の畔にある白いテントね。

「わかりました。アリサも連れてっていいんです?」
「あぁ、構わないよ、多分君1人だと君にも襲い掛かりそうだからね」
「え?」

 なんか、獣人特有の力こそすべて!
 とかそういう状態ってことか?

「まぁ悪い奴じゃない」
「そうですね、あの地方を収める獣人族の長ならではと言ったところですね」
「そうですか……。それじゃあ自分は」
「気を付けてね、アリサは私室に居ると思うよ」
「わかりました」

 何かトラブルが起きそうだなと思いつつ、執務室を後にした。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,854pt お気に入り:211

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:8,265pt お気に入り:4,114

世界神様、サービスしすぎじゃないですか?

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,840pt お気に入り:2,196

転生少女は元に戻りたい

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:177pt お気に入り:95

処理中です...