【R18】婚約破棄されたらおっとり系アラフォーを攻めることになりまして

チーズたると

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 そこで、ヤンダークがナミアを狙っている事実をニアンナは思い出した。

 ニアンナの胸中に、最初は生じなかった感情が湧出してくる。ナミアに対する独占欲だった。

 彼をヤンダークに渡したくはないと、明確に思ってしまう。考えてみれば、こんなふうに誰かを独占したいと感じることも、ニアンナにとっては珍しいことなのかもしれなかった。

 すると、当のナミアが不思議と落ち着きなさげにしているのに気付く。ニアンナは訊いた。

「……どうしたんですか」

 尋ねられた彼は目を泳がせてから、依然として赤い顔のままおずおずと返答する。

「あの……僕、あんまり……その、女性との経験が多いわけじゃない、から……」

 言いさし、眉尻をさげて、今にも消え入りそうな声音で継いだ。

「なんだか……は、恥ずかしくて……」

 この瞬間、ニアンナの中で、庇護欲というものが盛大に爆発した。そう、爆発してしまったのだ。

 なにがなんでもナミアをヤンダークの魔の手から守らなくてはいけないという使命感が、ニアンナの心を震わせる。

 その感情は、まるで幼い子供を守るもののようでもあり、姫を守る騎士のもののようでもあり、天然記念物を保護する国の権力者のもののようでもあった。

 そう、こんなにも初心で可愛らしい人間を、あの男に委ねてはならないのである。いっそ、ニアンナがナミアと駆け落ちしたいくらいであった。

 しかし、そんな真似をすれば、父から受け継いだ店を経営している彼に迷惑が掛かるだろう。となれば、導き出される答えはひとつ。

 ヤンダークを――なんとかせねばならない。

 どちらにしろ、婚約破棄の件で手は打たなければいけないのだ。目的が、ひとつからふたつに増えるだけのこと。

 だが、目的が増えたことによって、ますます事は急を要する。呑気にガレディが国に帰ってくるのを待つわけにはいかなかった。

 ナミアの身の安全のためにも、早急になんとかしなくてはならない。自分に出来ることを、出来る限りやらなくては。

 ニアンナは、内心で拳を握った。城から追い出された直後以上に、そのハートはやる気に満ち溢れているのであった。





 着衣を整え、しばらくすると、扉の向こうが騒がしくなった。遠くから微かに、ヤンダークと家臣達の声が響いてくる。

「なんで、あんな隠し扉になかなか気付けなかったんだ、俺達は!」
「じつにうまく隠されておりましたな」

「おまけに、数人の家臣が媚薬効果入りの煙を吸う始末! お前達のために用意したものじゃない!」
「危うく街の一郭がガチムチのハッテン場と化すところでした」

「捕まっちゃうだろ! あいつらはちゃんと城に帰したんだろうな?」

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