【R18】婚約破棄されたらおっとり系アラフォーを攻めることになりまして

チーズたると

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「はい。ただ、供の者をひとりしかつけられなかったため、最悪の場合、帰り道で三人でおっぱじめている可能性が――」
「やめろ! 捕まる!」

 どうやら、床の隠し扉を発見したヤンダーク一行がおりてきたらしい。

 ナミアが不安げな眼差しで、ニアンナを見やる。そんな彼にニアンナは唇の前に人差し指を立て、ふたりはそろって息を殺した。

 ヤンダークの声音が、僅かにうきうきとする。

「それにしても……わ、悪くない地下通路だな。ふむ……まぁ、男のロマンがないこともない、かな」
「街のどこかに繋がっているのでしょうか」

 家臣の疑問に、ヤンダークは「たぶんな」と言って、続けた。

「いわゆる、抜け道として使っていたんだろう。くそっ、こんな通路があったなんて……やられたな」

 ヤンダーク達の声が、徐々に近付いてくる。しかし、ニアンナとナミアはじっとしていることしか出来なかった。

 とうとう、足音が扉のすぐ向こうにまで迫る。ヤンダークの声が、間近で響いた。

「おい、こっちは行き止まりじゃないか。やっぱりもう一方の道だったんだ」
「……もしや、ここから先も分かれ道が続くのでしょうか」

「かもしれないな……。なにか目印を用意したほうがいいか」
「一度、城に戻って人員を整えるというのは……?」

「そんなことしてるあいだに、彼に逃げられちゃうだろ。ここで逃げられたら、次は警戒されてもっと近付きづらくなる。なんとしてでも追いつくんだ。……はぁ、俺とナミアの甘い時間が……」

「……失礼ですが、女性を相手にすれば、こんなにも苦労する必要はないのでは? 王子を好ましく思う女性は、きっと多いことでしょう」

「馬鹿野郎! ひとつ大事なことを教えてやる! 恋愛っていうのはなぁ――年齢も性別も、関係ないんだよっ!」

「はぁ」
「はぁ、じゃない! ここは感動するところだ! 俺、今いいこと言っただろ!」

「説得力の問題かもしれません」
「どういう意味だ! まるで俺に説得力がないみたいな言い方じゃないか!」

「…………」
「おい、なんとか言え!」

 ヤンダークと家臣達の声が、遠ざかっていく。やはり、彼の部下もそれなりに大変らしかった。

 ニアンナとナミアは静かに息を吐き、不審に思われなかったことを安堵する。ふたりは小声で言葉を交わした。

「……地下通路がなかったら、大変なことになってましたね」
「本当に……」

 しかし、安心したのもつかの間、足音がひとつ戻ってきたために、ニアンナとナミアは再び緊張に固まることとなる。

 少し離れたところから、ヤンダークの家臣の声音が聞こえた。

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