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しおりを挟むその刹那、陰茎がひときわ深いところを穿った。
彩香は目を見張り、背を仰け反らせて、悲鳴にすら聞こえる嬌声をあげる。意識が丸ごと真っ白になり、あとには愉悦を享受する体だけが残った。
「やぁアアあぁアッ!」
秘部が壊れたように痙攣し、男の熱を締めつける。全身がガクガクと跳ねたような気がしたが、絶頂の渦に呑まれた彩香には詳細を確認する手段がなかった。
直後、ローランドの体が離れて、内部の圧迫感が消失する。
それに寂しさを覚えるよりも早く、今度は乳房と顔に熱さを感じた。なにが起こったのか、わからなかった。
大きい――あまりにも大きい絶頂の余韻がわずかに去り、荒い呼吸を繰り返して、そこでようやく、彩香は自身の胸と顔に射精をされたのだと理解する。
億劫に視線を動かして見ると、多量の白濁が胸を濡らしていた。視認は出来ないが、きっと顔も同じふうに汚れていることだろう。
「はは、やらしい」
彩香を見下ろしながら、ローランドが笑った。その眼差しはいくらか高揚しているようで、妙に艶めかしく見える。
と、急激に彩香はまぶたの重みを感じた。最初は絶頂感による怠さから来るものかと思ったが、どうやらそうではないらしい。
このまぶたの重みは、明確な眠気だった。それも、不自然なまでの眠気である。
彩香が睡魔に襲われていることに感付いたローランドが、片方の眉を持ち上げて言った。
「あ、眠くなってきちゃった? まぁ、魔力を俺に奪われた形になるからな。魔術の素人にはきつくて当然だ」
男の大きな手が、彩香の頭を撫でる。すでに意識が朦朧としている彩香には、言われたことの意味が半分も理解できなかった。言葉がただの言葉のまま、耳を素通りしていく。
「寝ていいよ。あとのことくらいは、おじさんがやっとくからね」
撫でてくれる温かい手が、心地好い。
そこで、頭を撫でられるなんてずいぶんと久しぶりである事実に気が付いた。いったい、いつぶりだろう。幼いころ以来だろうか。
彩香はまぶたを閉じる。誰かに頭を撫でられるというのは、こんなにも安心するものだったか。こんなにも、身をゆだねたくなるものだったか。
両目を瞑った真っ暗な視野の中で、ローランドの声が反響する。
「気持ちよかったよ、彩香ちゃん。彩香ちゃんにとっても、そうだと嬉しいんだけどな」
意識が、落ちていく。思考が、ぬくもりのある闇の底へと沈んでいく。
絶頂の余韻と、疲労した肉体の疲れが彩香を優しく包み込んだ。こんなにも気持ちよく眠りにつけるのは初めてかもしれないと思いながら、彩香は睡魔にすべてを預ける。
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