彼女は、人間を想う。

ツキミヤ

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Third memory~家族と過去~

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「うちの親までなんか変なこと言ってるよ・・・」

俺はハァーと大きなため息をついて落胆する。

俺がそういうことを想定してか、父と母は続けてこう言った。

「まあ、静夜がこのことに疑問を抱くのも無理はないが、詳しい事情はレイスから聞いてくれ。」

「静くん~ごめんね~女の子に免疫がないのはわかっているんだどね~」

「うっせ」

すると母さんは表情を変え、一言だけ俺に言った。

「静夜、時間がないの、三日以内にその場所を離れなさい。」

「詳しい事情はレイスから聞いて。今はとにかく時間がないの。お願い。」

いつもより緊迫した空気を漂わせる母の口調と表情は俺の不安を掻き立てるのには十分だった。

「なんだよそれ・・・詳しく説明しろよ!」
俺の声が部屋に響く。しかし母はただ黙ったままだ。沈黙に耐えきれなくなった俺はさらに問い詰めようと口を開いたとき、横から声がかかる。
「静夜様のお気持ちはよくわかります。いきなりこんなことを言われても困りますよね。」
レイスだ。彼女は申し訳なさそうに眉をひそめ、下を向いている。そして何かを決意したように顔を上げると、レイスは話し始めた。
「私は、静夜様のご両親から頼まれて、あなたの恋人となり、そしてあなたの命を守る為にやってまいりました。」
「守る・・・?」
俺は彼女の言葉に違和感を感じた。俺の命を狙うものなどいるはずもないのだが、なぜ彼女はわざわざ俺のことを守ってくれようとしているのか・・・
「はい、静夜様は狙われているのです。帝国の最高戦力のAI軍事機関に。」
「帝国?それに軍事機関ってどういうことだ。」
「はい、まずは私達のことについてお話しします。」
そう言うと、レイスは静かに語り始めた。
まず、この世界には二つの国がある。
一つ目は「クウィン平和連合国」
二つ目は「ノギア帝国」
という国がそうだ。
クウィンは科学の発展によって人々の生活を向上させ、主に人工知能を搭載した人型アンドロイドを開発した。それは人と見た目はほとんど変わらず、また、人との間に子を成すことも可能なため、日本の少子高齢化の大きな役に立ってきた。一方で、機械に頼りすぎると人間の退化につながるということから、ある程度の科学技術の発達をストップし、代わりに、科学を発展させるための資源を他の分野に投資するという方針をとった。
一方、ノギア帝国は、軍事力に力を入れていた。特に、他国から恐れられていたのが、人工知能搭載型の兵器「ロボット」である。
現在のノギア帝国のロボットAIはもともとはノギアの科学者であった静夜の両親が開発に成功し、その第一号として「ジャンヌ」というアンドロイドが作られ、ノギアの教会の聖女として活動しているとか。また、ジャンヌは戦闘能力もとても高く、そこから次々にジャンヌの設計データを基にしたアンドロイドたちが作られ、現在に至る。だが、ジャンヌは軍事関係などの戦争を起こしそうなことには一切興味がない優しい子だと静夜の両親は知っている。では、今、ノギア帝国の軍事力に力を入れる指示をしているのは誰なのだろうか。それがレイスの話の内容だった。
「では、レイス。次はお前について教えてくれないか?」
「はい、了解しました。」
そういうと、レイスはまたどこから取り出したのか今度はタブレット端末のようなものを取り出し、それをタッチして操作しながら俺の質問に答え始める。
「まず、君は人間なのか?さっきからアンドロイドの話やらなんやらが出てくるから君もアンドロイドかもと思ってね。」
レイスはその質問に答えるのを少しためらうような素振りを見せたが、すぐに覚悟を決めたかのようにこちらをまっすぐ見つめる。
「私は、アンドロイドです。」
「え?まじで?」
「はい、本当です。私の体は、全て人工物です。」
「ちょっ!ちょっと待って!じゃあ、その体を作ったのって俺の両親!?」
「はい、その通りです。私のボディはこの二人によって作られました。」「マジかよ・・・」
俺は驚きのあまり口を開けたまま固まってしまう。
まさか自分の両親にこんな技術力があったとは思わなかったからだ。
以前から両親が科学者であることは知っていたのだがまさかここまでとは・・・
それに両親がもとは帝国の人間だったなんて・・・知らないことばかりで少し混乱してしまったがまあいい・・・
俺は次の疑問をぶつける。
「それで、レイスは何者なんだ?ただの俺の護衛のために作られたわけじゃないんだろ?」
「はい。私は静夜様の婚約者兼護衛としての仕事と静夜様とともに帝国の現状を調査する仕事があります。」
「なるほど、大体のことはわかった。でも、俺の両親がなぜそんなことをしているんだ?それに帝国は俺を狙っていると言っていたけど、何が目的なんだ?」
「はい、それは静夜様のご両親が、ジャンヌを作りしばらくした後、帝国に状況調査のために一度帝国に戻ったのです。そのときは、ジャンヌと帝国の護衛兵が出迎えてくれたそうなのですが、突如、護衛兵がご両親と静夜様に攻撃を仕掛け、ジャンヌのおかげで静夜様だけはかろうじて生き残ることができたのです。しかしご両親の方は、抵抗むなしく・・・・・・」
「そうだったのか・・・」
俺は話を聞いて、思わず下を向いてしまう。
するとレイスは心配そうに俺の顔色を伺いながら言った。
「大丈夫ですか・・・?」
「ああ、問題ないよ・・・」
俺はレイスにそう返すが、正直心の中では怒りに満ち溢れていた。
(俺の両親を殺し、そのうえ俺まで殺そうとしていたなんて許せない・・・)
俺は拳を強く握りしめ、顔を上げて言う。
「ありがとう、レイス。俺の両親がどんな人だったのか知れてよかった。」
「いえ、静夜様のお役に立てたなら光栄です。」
俺はそこで一つ思い出す。
「あっ!そうだ!俺の両親を殺した奴らはどうなったんだ?それに、レイスはどうしてそのことについて詳しく知っているんだ?帝国に残っていたのか?」
「いいえ、私は帝国に残りませんでした。私も静夜様と同じように帝国からの追手に追われていましたから。」
「そうだったのか。」
「はい、そうだったのです。」
「今は、クウィンのAI研究機関に私の研究及び保護という名目でかくまってもらっています。それに、機関の方々は静夜様のことはよくご存じなので、快く出迎えてくださると思いますよ。」
「そうか、それは良かった。」
レイスの言葉に俺は安堵する。
これで、両親を失った悲しみは残るが、少しは安心することができた。
「それと、私があなたの恋人になったのは、静夜様を守る為には恋人になるのが一番だと思ったからです。」
「え?どういうことだ?」
「静夜様がもしノギア帝国に行ったときに、帝国兵に襲われないようにするには、私と婚約した方が安全だと考えたからです。」
「そういうことだったのか。」
「はい、そういうことです。」
「ちなみに、静夜様は私のことが嫌いですか?」
レイスが不安そうな表情で聞いてくる。
その質問に対して俺は笑顔で答える。
「そんなことはないよ。むしろ、好きになったくらいだよ。」
「それでは、これからよろしくお願いします。」
レイスはそう言って、深々と頭を下げる。
こうして、俺の新たな生活が始まった。
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