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52 魔人ベータ
しおりを挟む屋敷に戻ると、ネーヴェリクが半泣きで駆け寄って来た。
「か、カイトシェイド様ァァァ……!! も、申し訳ありマセんっ!! ネーヴェリクが、ネーヴェリクが……っ!!」
「いや、大丈夫だ、ネーヴェリク。ダンジョン・コアはこの通り、無事だ」
「うぅぅ……よ、良かったデス……」
「ネーヴェリク、とりあえず屋敷の住人を集めてくれ」
「ハイ」
食堂に俺とネーヴェリク、それに一番最初に購入して来た奴隷たち14人が一堂に会する。
やはり、彼らの注目はアルファだ。
「お前たちにはきちんとした事情を話しておいた方が良いと思う。アルファがこうなったことを含めて説明するから聞いて欲しい。実は、俺とネーヴェリクは……」
彼等には、俺たちの事情を説明した。
俺とネーヴェリクが魔族であること、魔王城から追放されてここでダンジョンを創っていること、アルファとオメガを魔族化させたこと、そして、魔王達から狙われる可能性があること。
「……そんな訳で、アルファを魔族化させたらこうなったんだ。別に人間を食べる種族じゃないから安心していいぞ」
奴隷たちは、全員口をぽかーんと開けて目を丸くしている。
「だ、旦那様は……なぜ、それを我々にお話しいただいけたんですか?」
ベータのヤツが一同を代表して口を開いた。
「うん、実はな?」
このダンジョンの命ともいえるコア、それの保管場所がこの屋敷の二階なのだ。
つまり、この屋敷は、コアへの最終防衛ライン、といっても良い場所だ。
今までは、周りに人間しか居なかったので、さほど警戒していなかったのだが、今回の件で、流石の俺も少し危機感を持った訳である。
相手が魔族となれば、人間の家に勝手に入らない、などという常識は通用しない。
この屋敷の壁や扉はダンジョン化した時点で、地下のダンジョンと同様の強化がされているから、普通の魔法では破壊が出来ない。
だが、逆に、通常の広域型攻撃呪文で町を焼き払われたのに、ウチの屋敷だけ木造なのに焼け焦げもしない……となると、怪しさ爆発である。
つまり、このコアを守る守護者が必要なのだ。
本当の最終防衛ラインは俺自身なのだが、今後、出来る限り『分身体』を増やさずにやりくりしたい。
となると、アルファやオメガに守護者を任せたい訳だが……
「屋敷の中に魔族がウロウロしていても気にしたり、気味悪がったりしないで欲しいんだよ」
特にオメガの奴は人から気味悪がられるのはトラウマっぽいし。
「人間って普通、魔族のことが嫌いだろ?」
「まさか!! 例え旦那様が魔族であっても、仮に邪神であったとしても我々の忠誠心が変わる事はございません! 嫌うなどありえません!!」
おぉ!? ベータのヤツが思いの外、強い口調で答える。
「そうだよ!」「旦那様は旦那様だ!!」「そうよね、やってる事は悪い事じゃないもの」「むしろ、頼もしいわよね」「アルファさんの角だってかっこいいですよ」「オメガちゃんの目の事、気持ち悪いって言っちゃってごめんね……」
他の皆も口々に同意してくれた。
……なんだろう。地味にうれしい。
「ところで……アルファとオメガを魔族化させた、と仰っていましたが、私めも魔族にしていただくことは可能なのでしょうか?」
「へ!? ベータ、お前も魔族になりたいのか?」
「はい、その方が旦那様にお仕えするには良いかと感じました」
一応、魔族を増やすメリットは「魔力が増え、人間よりかなり強くなることから、1体当たりのダンジョン・ポイント増加率が大きくなる」「人間よりも寿命が長いから、生涯で得られるトータルポイント数が上がる」「死亡時のボーナスポイントが大きくなる」などである。
逆に最大のデメリットは「子供ができにくくなること」「成長に時間がかかること」だ。
魔族を増やすのは実はなかなか面倒なのだ。
増えることにのみ特化している種族も居るには居るが、特に高位魔族は増やしにくい。
俺の魔族化の魔法も、実は無制限というわけではない。眷属に出来る最大数は俺自身のレベルと比例する。今の俺のレベルだと、多分最大でも10人いくか、いかないか……じゃないかな~?
高位魔族の眷属を創れる数って。
「ベータだけなら構わないが……他の皆は?」
流石に、他に魔族になりたい、と言い出すヤツは居なかったので、ひと風呂浴びて、魔力を回復した後にベータの奴も眷属化しましたよ?
【氏名:ベータ 種族:魔人】
オーソドックスに一番癖が無いバランスタイプだ。
物理攻撃も魔法攻撃も扱えるし、その他特殊能力も扱える万能型。
ただ、ベータが元々持っていたスキル的に後方支援の方が得意かもしれない。
情報を集めたり、分析して先手を打ったり、罠や事前準備……そして、薬物系の操作はレベル1の魔人とは思えない。
屋敷内にこれだけ魔族がいれば、とりあえずは安心だ。
よーし! これで、空白期間が終わったら、ボーギルのアドバイスも参考に、ダンジョンを組み直すぞ!
応援ありがとうございます!
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