【待合室書店】のオーナーきゅうりさんの履歴書とアクアマリンのカード

愛澤凛音

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第10話

晴れたり…曇ったり…雨が降ったり…の繰り返し?

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突然、泣きだしてしまった女性に気をつかってか…

きゅうりさんは、女性から少し距離を置いていました。

私も同じように、レジの近くで、伝票の処理作業をしていました。

女性は、きゅうりさんからのコーヒーを飲みながら、

窓の外に広がる景色をぼーっと眺めているようでした。

女性の心は、曇り時々…雨みたいな、すぐれない天気のようですが、

窓の外は、それとは真逆で、夕暮れとはいい、

気持ちがいいくらい晴れていました。

女性は、落ち着いたのか、きゅうりさんが、

作業している本棚の方へ向かいました。

それに気づいたきゅうりさんは、微笑んで…

「休憩できましたか?」

「ありがとうございます。突然、取り乱して、ごめんなさい。

私…ご迷惑をおかけしたみたいで…」

「いいえ、とんでもないです。ご来店していただいただけでも…

ありがたいですよ」

伏し目がちの女性が顔をあげると、

端正な顔立ちから、笑顔を浮かばせたのです。

「SNSで、この書店を見つけて、気になっていたのですが、

仕事が忙しくて、なかなか足が動かなかったのですが…

行くだけ行ってみようと…思い切って来ました」

「そうでしたか、ありがとうございます」

と、きゅうりさんが言うと…

女性は、セイコーの腕時計をみながら…

「ごめんなさい、もう、閉店時間が過ぎてましたね」

「もし、よろしければ、今から書店は閉店しますが、

ゆっくり店内を見て回られても大丈夫ですよ」

と…きゅうりさんがいうと、きゅうりさんの急な提案に女性は、

少し戸惑っている表情をみせたものの、少し微笑んで…

「いいのですか?

次回、いつ来れるかが、わからないので…

お言葉に甘えてもよろしいでしょうか?

あと、ユーチューブの占いも気になっていました」

と安心したように答えました。

「わかりました。今から、書店は閉店しますね。

美咲さん~タロットカードの占いできますか?」

「はい、私は、いつでも大丈夫ですよ」

「ありがとう…

では、先に書店内をご覧になってください。

その後、奥の部屋で、鑑定をしましょうか?」

きゅうりさんの提案に、女性は申し訳なさそうにしながら、

「では、そうさせていただきます。申し訳ありません」

と頭を深々と下げたのです。

「そんなに恐縮されなくて大丈夫ですよ。

書店にこうして来ていただいたことも、

何かのご縁だと思いますので…」

と…きゅうりさんが話した後、

女性は店内をゆっくりと回り始めました。

数十分程度、女性は、店内をご覧になられて、

私のいるレジに、

「ココロの整頓の仕方」、「初心者のためのマインドフルネス」

という2冊を持参されました。

「お買い上げありがとうございます」と私が言うと…

「いいえ、これだけの購入では、足りないと思いますが…」

と女性は、申し訳なさそうに言われました。

そばにいたきゅうりさんも、

「そんなに、お気になさらずに…大丈夫ですよ。

では、次は奥で、こちらの美咲さんにタロットカードで占って、

もらいましょうね」

と奥の部屋を案内しました。

きゅうりさんは、女性を奥の部屋である、昔の診察室を案内しました。

私は、山科桔梗さんを鑑定したときと同じように、

私と女性はローテーブルを挟んで、お互いソファに腰を下ろしました。。

「では、美咲さん、よろしくお願いします」と

きゅうりさんが、部屋を出ようとしたときに…

女性は、

「もしよろしければ、一緒に聞いてもらえないでしょうか?」と言うのです。

きゅうりさんは、一瞬、驚いたような顔をしましたが、

「わかりました」

と…笑顔で答えて…私から少し距離を置いてソファの端に腰を下ろしました。

その後、女性は、

「私は、真田花恋さなだかれんと申します。

今日は、大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

こんなに遅くまで、お時間いただいて、ありがとうございます。

私は、広告代理店で、3年ほど、働いていたのですが、

人間関係を上手くできませんでした。

営業や経理の部署をまわったのですが、1年ほど前に退職しました。

退職後は、失業保険をいただいて、仕事を探していたのですが、

なかなか見つからずに、

学生時代にWEBデザイナーに関する資格を取得していたので、

今は、フリーランスでWEBデザイナーをしています。

でも、個人事業主になるので、なかなか仕事や他の事が大変で…

フリーランスという言葉は、聞こえはいいのですが、

全てを自分で責任をとらないといけませんし…。

意外とクライアントさんとのコミュニケーション能力も必要になるので、

行き詰っていまして…

以前から、こちらの書店が気になっていましたので…

急にお邪魔してしまいました」

と…身上を丁寧に説明されました。

「そうでしたか…ご苦労されているようで、大変でしたね

生きていれば、何があるかわかりませんからね。

なかなか、物事を悪い方向に考える癖がついてしまうと、

そうなるのかもしれませんね。

気休めかもしれませんが、ある意味、気休めも必要かもしれませんので、

美咲さんに占ってもらいましょうね」

と、私の方をみました。

私は、「では、始めますね」と言い…

キャンドルとインセンス、タロットカード用のクロスを準備しました。

その後、タロットカードを、いつものようにシャッフルして、

3枚のカードを選び、さらにカード切りなおして、1枚選びました。

「真田さん、では、今から結果をお伝えしますね」

真田さんは、緊張した様子で、私を見つめていました。

「まず、過去ですが、もう、お仕事はやめられているということで、

ひとつの区切りは終わって、方向転換されていますよね。

これから再生していく準備は整っていると出ていますよ。

現在は、不安もあると思いますが、

ご自分の行動力で、新しいチャンスが来ているようです。

将来的には、真田さんの実力が十二分に発揮されて、

上手くいくのではないでしょうか?

ご自身の持つ、強い意志で、切り開かれていくと思います」

私が、ひと通り結果をお伝えすると…真田さんは、

「仕事の依頼が増えたのですが、なかなか対応できずに困っていました。

全てを請け負わずに、できる範囲でやってみようと思います」

それを聞いたきゅうりさんは、

「そうですか、ご自分のペースで進まれるといいかもですね。

実は、私も、以前は高校で教師をしていたのです。

仕事も順調で、婚約者もいたのですが、

婚約者を、結構式前に事故で亡くしてしまって…

それから、少し体調を崩しまして…

色々な人や動物の力を借りて、ここまで、来ることができました。

人それぞれ、皆さん、

自分自身の人生の履歴書を作成していく過程があると思うんです。

誰かに助けられていることに感謝すれば、

ゆっくりでも、前に進めると思いますよ。

人生は、晴れたり、曇ったり、雨が降ったり…の繰り返しだと思いますよ!」

と…きゅうりさんは、優しく語りかけていました。

そして、鑑定後、いつものとおり、鑑定料金は、お断りしました。

「また、ご来店いただければ、それで十分ですよ」

「ありがとうございました」と真田さんは、頭を下げました。

もう、書店の外は暗くなっていましたが、

真田さんの心は明るくなったようで、

私も安心して、きゅうりさんと真田さんの帰宅される後姿を見送っていました。

「美咲さん、今日も、鑑定、ありがとうございました」

「いいえ、少し、びっくりしました。きゅうりさん、婚約者がいらしたのですね」

きゅうりさんは、照れたように…

「ああ」…と言った後、

「あっ、そうだ、美咲さん、今日は、煮込みハンバーグを作ったんだけど…食べる?」

きゅうりさんは、婚約者の話をするのが、嫌そうだったので…

私は、そのきゅうりさんの気持ちを尊重して、それ以上は、何も言いませんでした。

空を見上げると、もう暗くなっていて、星がキラキラと輝いていて…

幸せな気分になりました。

煮込みハンバーグのことを思い浮かべたら…

おなかが反応してしまい、

きゅうりさんが、

「おなか、すいたって…美咲さんのおなかがいってます!!!」

というので、きゅうりさんのふくらはぎあたりに、

軽く蹴りを入れると…

「あっ、美咲さんの逆パワハラだ~」

と…きゅうりさんは、笑っていました。
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