【待合室書店】のオーナーきゅうりさんの履歴書とアクアマリンのカード

愛澤凛音

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第12話

あの本はありますか?

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その日は、朝から雨が強弱をつけながら、

気ままに降り続けるような…

憂鬱な天気でした…

が…そのお客さんが、店内に入って来られたときから…

その人の周りだけが、特別な光で包まれたよう感じに…

晴れやかな笑顔を浮かべて…こちらの方に近づいて来られました。

その人は、以前、ご来店されて、

私がタロット占いをした…真田花恋さんだったのです。

「美咲さん、こんにちは。先日は、本当にありがとうございました。

気持ちが軽くなって、あの後、少しずつ、

いろんなことが変化していきました。

店長さんがおっしゃられたように、自分が気づかないうちに、

物事を悪い方向に考える癖がついてしまっていたのかもしれません。

あのとき、突然の思い付きでしたが、この書店に足を運んで、

本当に良かったです」

と…前回、お会いした人と同じ人物だとは思えないくらいの、

前向きに生きるエネルギーを感じました。

書店の窓から見える…

外の雨が降り続くどんよりとした背景とは、正反対でした。

そして、再度、確認できたことは、花恋さんが、

可愛らしさを残しながらも、キラキラとした瞳をしていて、

その瞳を中心として…

整ったお顔…つまり…美人ということでした。

さらには、前回のスーツ姿とは正反対でカジュアルで

ブルーボーダーのラガーシャツと、

グレーのストレッチデニムパンツを穿いて、

足元は、パトリックのスニーカーで、

肩から白のトートバックを掛けたカジュアルな姿でした。

「麻鈴さん、少しですけど…お土産のどら焼きです。」

「ありがとうございます。きゅうりさんといただきますね!」

「きゅうりさん?」

と…花恋さんが、不思議そうなお顔をされるので…

命名の由来をいつものごとく…説明したのです。

「きゅうりさん…といわれると…

何となく雰囲気が合っているような、気がしますね」

「でしょ?」

と二人で笑ったのです。

「あ、真田さん、いらっしゃいませ」

私たちの話し声に気付いたきゅうりさんが、近づいてきました。

きゅうりさんも、花恋さんの前回との雰囲気の違いに気づいたのか…

「今のご様子からだと、だいぶん、気持ちは落ち着いたようですね。」

「はい、その節はご迷惑をおかけしました」

「いいえ~お力になれてなによりですよ!」

と…いつもの優しいきゅうりさんスマイルをみせました。

「あの~今日は、欲しい本がありまして…

【ウインドメッセンジ~風の使者】という本なのです。

作者は、ムツラ☆ボシという小説家の方で、

もともとWEB小説の投稿から書籍化されたみたいなのですが

今度、アニメ化されているみたいで、人気があるんですよ」

花恋さんが、きゅうりさんに尋ねました。

「ボクは、その類いの本には詳しくないのですが、

探してみますね。取り寄せでも大丈夫ですか?

真田さんが、ご自分でネットでご購入されてもいいと思いますが…」

「こちらで購入できれば…思いまして」

「わたりました。ありがとうございます」

ときゅうりさんが、ペコリと頭をさげました。

私は、何となく気になったので…

「花恋さん、その本は、面白いのですか?」

「はい、私もアニメを少し見ただけで、そんなには詳しくはないのですが…

簡単に説明すると…

現代でいじめられていた中学生の少年が、異世界に転生して、

風の都市のウインクから水の王国のワーラへ、

あるを任務遂行するために、難所を潜り抜けながら、

ひたすら走り続けるストーリーなんですよ…

水の王国のワーラ国とお姫様を助けることが最終的な使命です。

あと、敵国は、火の帝国という国なのですが、

その国のエイトという皇帝がすごく魅力的なんですね~

ヒールキャラなんですけど…心の闇と闘う戦士みたいで…」

と…花恋さんは、熱く語ってくれました。

それを聞いたきゅうりさんが

「最近、そんな感じの設定のストーリーは、多いですよね~

まあ、昔からの鉄板ストーリーですけどね…

古代ギリシャとかローマとか中世ヨーロッパを舞台にしてるやつね!

共和制から独裁者が出てきて、皇帝になったり…

国王が通報されて、共和制になったり…」

と…追加のような説明をしてくれました。

「意外とお詳しいですね…」と真田さんがいうと

「一応、社会科関係の教科の担当をしていたんでね」

「あっそうか…きゅうりさん、元高校教師だったんでしたね。

そこら辺にいるフツーのおじさんだと思っていたので、

そのことを、忘れてましたよ」

と私がワザとらしくいうと…

「高校の先生が別にえらいわけでも何でもないからね…

仕事だから…何の職業に就いていようと…

ボクらの年代は、皆、ただのオジサンだよ!

ボクはそう思っているけどね…」

と…きゅうりさんらしい持論を展開していました。

花恋さんの本の注文は確定し、

後日、本が到着次第、連絡することになりました。

花恋さんが、店を出るときは、雨は止んでいて、

遠くの空は、晴れ間が見えていました。

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