【待合室書店】のオーナーきゅうりさんの履歴書とアクアマリンのカード

愛澤凛音

文字の大きさ
14 / 21
第13話

ボスキャラの登場!

しおりを挟む
私が書店のレジの近くの椅子に座って、伝票処理をしていると…

書店にまっすぐに入って来ようとする女性の姿が見えました。

遠目でも、スラっとして綺麗な女性であることは、わかりました。

白のシャツにワンポイントのシルバーネックレス、

シャツの上に、グレーのジャケットを羽織り、

脚の線が綺麗にわかる紺色のナロースカートをはいて、

足元は黒のパンプスでした。

艶のある黒髪は、肩まであり、顔立ちはスッキリしていて、

鼻筋が綺麗に通って、何とも魅力的な唇をしていて、

かなりの目力のある女性でした。

カツ、カツ、カツ、カツ…

とパンプスの音を響かせながら…

その女性が、書店に入って、私に向かってくる、勢いがすごくて…

私は、心の中で

(なに、なに、なに、なに?私、何かしたかな?)

と…慌てふためいていました。

その女性は、私の近くに来て…

「潤矢さん、いるでしょ?どこ?」

と…私を睨みつけるようにして、いいました。

「あの~失礼ですけど…」

と…私がいいかけたとき…

「三条実花が来たって、いえばわかる!」

と…ぶっきらぼうに答えました。

突然のボスキャラ級の登場に、私は恐れを感じて…

背中に冷や汗が流れているのがわかりました。

そのときには、すでに、きゅうりさんは、

私のすぐそばに立っていました。

きゅうりさんは、いつもと変わらず、冷静にゆっくりと…

「実花さん、久しぶりだね!元気してたか?

そんな、鬼のような顔をしていたら、せっかくの美人が…

もったいないでしょ?」

と…きゅうりさんスマイルで言い放ちました。

「それは、それは、結構なご挨拶で…

お姉さんが亡くなって、犬飼って、学校辞めて、

変な本屋を始めたと思ったら…

今度は、若いかわいい女の子ですか…

全く男っていう生き物は、

いくつになっても、ノーテンキでいいわね~」

と綺麗なお顔で毒を吐きます。

「そうだね~勝手なことばかりしてるね。

でも、実花ちゃん、この子は、この書店の店員さんだよ!

書店の経営にも協力してもらっているんだ」

しばらく、実花さんという女性は、

きゅうりさんを睨みつけていたが…

一旦、その場で目を閉じて、ゆっくりと深呼吸をしました。

「フー」

その後、黒のショルダーバックから封筒差し出して…

その封筒をカウンターに置きました。

「もう、結花姉さんが、いなくなって何十年も経つの…

もう、お金はいらないから…私だって、

独立して税理士やっているんだから」

「そっか」

と…きゅうりさんは、いつものように優しくいいました。

「もう!その優しさがいらないっていうのよ!何なのよ!」

と…いいながら、目には涙が、たくさんあふれていました。

「実花ちゃん、ごめんね」

といいながら、ハンカチを手渡したのです。

「いらないって…いってるでしょ」

とハンカチを投げ捨てたのです。

そのあと、実花さんは、両手で顔をおさえて、そのまま立っていました。

きゅうりさんは、実花さんを諭すように…

「実花ちゃん、ここは、お客さんが来るから、奥に行こうか~」

と…きゅうりさんが促すと

「どこにお客さんがいるのよ!暇なくせに!」

と…またまた、ド直球の暴言を吐きました。

それでも、きゅうりさんは、落ち着いて、

「そうだね、暇だから、コーヒーでも飲んでいってよ」

と…めげた様子はなく、また、きゅうりさんスマイルだった。

さすがの実花さんも、それ以上は、何も言わずに大人しく、

奥の昔の診察室へ入っていったのです。

そして、その後、何事もなかったように書店は静まりかえりました。

数人のお客さんが、来店されたので、

そのまま、約1時間くらい過ぎたでしょうか。

実花さんは、きゅうりさんとお話をされたのだと…思います。

実花さんは、きゅうりさんと一緒に出てきました。

実花さんは、書店に入って来たときとは、

別人の顔のように、優しく、落ち着いていました。

「さっきは、ごめんなさいね。あれ、私の悪い癖…

病気だともって、許してもらえないかしら…」

と、私をみつめて、いわれるので…

「私は、大丈夫です。お気遣いいただき申し訳ありません」

と頭をさげました。

「ごめんなさい、あれ、あなた、綺麗なネックレスしているわね~

それって、アクアマリンでしょ?

お姉さんが大好きだった、宝石よ!綺麗ね~」

「育ての母から譲り受けたものですけど…」

「そう、大切にしなさいね。幸せになれるわよ、きっと…」

気のせいかもしれませんが、実花さんのその言葉に、

アクアマリンが反応して、輝いたような気がしました。

実花さんが、書店の外に出られた後、

きゅうりさんは、

「美咲さん、ごめんね。気分害してない?

実花ちゃんは、強がるところがあるけど、

本当は優しんだよ。結花が亡くなったとき…

ボクより悲しんでいたんだから…」

「結花さんって、きゅうりさんと婚約されていた方ですよね?

きゅうりさんは、うつむき加減で

「そうだよ」呟いたのです。

「実花さんは、ご結婚されていないんですよね?」

「うん、もしかしたら、実花ちゃんは、

ボクよりも結花のことを慕っていたのかもしれないね。

実花ちゃん、お付き合いしていた男性もいたようだけど…

結花がいなくなって、結花より自分は幸せになれないって…

あとは、仕事一筋で、税理士になって頑張っている。

結花の分まで幸せになってよ…って、

ボクは、いうんだけどさ~

いうこと聞いてくれないんだよね~

でも、もし、結花が実花ちゃんの立場だったら…

同じことすると思うな…あの姉妹は…困ったもんだよ」

と…きゅうりさんは、目を閉じたまま、

話した後、ふーっとため息をつきました。

「あとね、結花は事故死だったんだ。

さっきまで、普通にそばで生きていた人が、

急にいなくなることは、想像もつかない、

悲しみになることを、ボクは感じたし、

実花ちゃんもそうだったと思うよ。

テレビとか新聞とかで、悲惨なニュースがさ~

たくさん報道されるけど、ボクらは、どこかでさ~

自分とは関係ない…

と、勝手に思い込んでしまっているような、

ところがあるんだよ…きっと。

でも、あのとき、突然、結花はいなくなった…。

それは、事実なんだよ。もう、会えないしね。

だから、そこで、時間が止まっているように感じる。

特に、実花ちゃんは、そう感じているんだと思うよ」

と…ひととおりの話が終わると…

きゅうりさんは、「ごめん、少し休憩していいかな?」

といったので…

「ごゆっくり、どうぞ…」と返事をしました。

そのときも、私のネックレスのアクアマリンが、

輝いたような気がしました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

灰かぶりの姉

吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。 「今日からあなたのお父さんと妹だよ」 そう言われたあの日から…。 * * * 『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。 国枝 那月×野口 航平の過去編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...