不遇恩恵で世界最強~貰った恩恵が【経験力】だったので型破りな経験をしてみようと思う~

詩葉 豊庸(旧名:堅茹でパスタ)

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7話 特訓開始!

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 あれから。
 俺は大量のヒンス草をレイヤさんから受け取り、コボルト討伐に勤しんだ。

 俺一人の戦いが始まったのだ。
 ちなみに二人には安置場所でゆっくりとしてもらうよう言っておいた。

「はぁぁぁぁぁッ!」

 向かってくるコボルトたちを狩って、狩って、狩りまくる。

 たとえ攻撃を受けても何度でも立ち上がって。

 とにかく身体を絶えず動かし、コボルトを狩ることだけに集中した。

 
 ≪能力:【高速剣技】を取得≫
 ≪能力:【高速移動】を取得≫
 

 戦闘経験を積んでいくうちに次々と能力の向上、獲得をしていく。
 そのおかげもあってか、最初よりも動きがより早く鋭く、剣筋に関しては見違えるほどの成長を遂げていた。
 
 そして気がつけば、何十匹のコボルトが相手だろうが、ほぼ一撃で仕留められるほどまでになっていた。

 だが、コボルトたちもバカじゃない。
 俺一人に苦戦していると知ると、兵力をさらに投入してくる。

 中には魔法を使うマジックコボルトや、コボルトの上位種であるハイ・コボルトなども現れ、現場はますます激化していった。

 だが、戦う度に強化されていく俺の前には歯が立たず。
 皆、静かに大地へと返っていった。
 
 そんな戦いを通し、いつしか特訓開始から三時間という時が経っていた。

「ふぅ……だいぶ狩ったな。ステータスの参照がてら少し休憩するか」

 超大量のコボルトたちの死骸に囲まれながら、ハンカチで額の汗を拭く。
 コボルトたちの勢いもピタッとなくなったためか、この辺にいる奴らは皆討伐してしてしまったんだろうか。

 俺は疑問に思いつつも、安置場所にいるアリスたちの方へと歩いていく。

「お、アリシアくん。休憩――って血だらけじゃないか!」

「大丈夫、アリシアくん!?」

「何とかね……アリス、今すぐ回復魔法をお願いできるか?」

「もちろんだよ! そこに座って」

 俺は地に胡坐をかいて座ると、回復魔法をかけてくれる。
 流石はアリスだ。
 ものの数秒で体力の回復、傷も跡すら残らず癒してくれた。

「もう、無理し過ぎだよ……」

「悪い。ちょっと張り切りすぎちゃった」

 根性といえど傷の具合がよくなるわけじゃないからな。
 もちろん痛みも感じる。

 ただ、根性のおかげで痛みには耐えられるけど。

「まさか、あれからずっとコボルトを?」

「ええ、まぁ……」

「驚いたな……君は疲れというものを知らないのかい?」

「あはは……実はそれ、俺が授かった天恵のおかげなんですよ。【根性】っていうですけど」

「根性……? 聞いたことのない天恵だね」

「みんなそう言います。とはいっても内容は人の何倍も身体を酷使できるっていうものです。おかげで生まれたから天恵関係でバカにされることもしばしばあって……」

「いや……俺は逆に素晴らしい天恵だと思うけどね」

「そ、そうですか?」

「うん。要は人の何倍も事に打ち込むことができるってことだよね?」

「そ、そうなりますね……」

「だったら、それはすごい武器になるよ。今後、生きていくためにね」

「ほ、本当ですか?」

「ああ。俺から言わせればなんちゃら適性なんかよりも、よっぽど有用性があると思うよ」

「何故、そう思うんですか?」

 俺からすれば疑問しかなかった。
 ただメンタルが強くなって、人よりもアクティブになれることのどこにメリットがあるのかと。

 むしろこの天恵のせいで俺は今までコキ使われてきた。
 
 確かに力仕事とかになると、使い道はあるのかもしれない。
 でも有用かと言われると、俺はどうにもピンとこなかったのだ。

 レイヤさんはそんな考えを持つ俺に、理由を話してくれた。

「人は皆、何かを経験することで一人前へと成長していく。そこに才能の有無は関係ない。天才だろうが、凡人だろうが、経験を通さない限り、先はないんだ。学校の教本とかに乗っているような稀代の天才なんて呼ばれている偉人たちでさえ、誰よりも多くの知識を得て、誰よりも多くの実戦経験を得て、偉業を達してきた。”経験”は人をより強くするんだよ」

「経験は人をより強くする……ですか」

「そうだ。君にはその”経験”を誰よりもすることができる力を持っている。人の限界を超越できるということは人が通常得られる経験の何倍もの経験を得ることが出来るということ。しかも短時間でね」

「……」

「俺はこれでも25年間も冒険者という職業をしている。恩恵が【剣士】で親が冒険者だったからというのもあってこの道に進んだが、やはり強いと言われている冒険者たちは誰よりも多くの経験を積んでいた。そして、才能があっても経験不足だった人間は最初こそその名を轟かせても、いつしか存在そのものが消えていた。だから俺もたくさん経験を積もうと思ったんだ。もちろん、鍛錬や戦闘以外にも色々とね。おかげで俺はA級冒険者という名誉ある立場に居座ることができているんだ」

「そうだったんですか……」

 今まで俺はこの天恵に関する有用性なんて考えたことなんてなかった。
 みんな違うもの、バカにされるからという理由で勝手に不遇な天恵なのだと思い込んでいた。

 何が、恵みだ。
 何が、女神からの祝福だ。

 そんな日々を送ってきたけど……

「ありがとうございます、レイヤさん。おかげで少し気が楽になりました」

「そうかい? なら、よかったよ」

「じゃあ、これからいっぱい色々な経験していかなきゃだね! お互いに!」

「ああ、そうだな! 頑張ろうぜ、アリス!」

「うんっ!」

 と、気合いが注入されたところで俺はステータスボードを取り出す。
 するとアリスも食いついてきた。

「あ、わたしも見たい!」

「おう。じゃあ一緒に見ようぜ」

「お、ステータスボードか。俺にも見せてくれるかい?」

「もちろんです!」

 そんなわけで全員で俺のステータスボートを見ることに。
 なんかこうして自分の個人情報を晒すのはなんか恥ずかしいな。

「えーっと、ステータスファイル……っと」

 だが次の瞬間。
 俺たちの目にとんでもない情報が入ってきた。


 ■ステータスファイル

 名前:アリシア・アルファード
 役職:無職
 種族:人族ヒューマン 
 性別:男
 年齢:15歳
 身分:平民
 総合レベル:25

 天恵
 ○【根性】
 
 恩恵
 ○【経験力】
 
 取得能力
 ○【特殊眼力(LV3/5)】
 ○【絶対聴覚(LV3/5)】
 ○【状況判断力(LV3/5)】
 ○【高速剣技(LV総合LVに依存)】
 ○【高速移動(Lvは総合LVに依存)】
 

「なっ、なんだよ……これ……」

「す、ステータスが……」

「アリシアくん、これって……!」

 二人も驚いていたが、もっと驚いていたのは他でもない俺自身だった。
 なんとステータスが昨日の倍以上に増えていたのだ。

「総合レベル25って……前よりも20も増えているじゃないか」

 総合レベルというのは全ての能力値を合計して出した、いわばその人の戦闘能力を示す指標。
 レベルが高いほど、戦闘能力が高いという一つの証明になる。

 昨日までは確かレベル5だったはず。
 俺が15年もの生涯をかけてあげてきたレベルの倍以上の数値をたった三時間程度の猛特訓で上昇させたわけだ。

 だがすごいのはそれだけではなかった。

「アリシアくん、君はなんでこんなにも能力を持っているんだ? しかもどれも違う役職のものを……」

 レイヤさん曰く俺の持っている能力は役職にばらつきがあるとのこと。
 例えば一番最初に手に入れた【特殊眼力】は【盗賊】の恩恵を持つ者にしか獲得できない能力らしい。

 続いて手に入れた【絶対聴覚】は【暗殺師】。
 
 要するに、俺は役職の壁を越えて能力を取得することができるみたいなのだ。

 俺は天恵に続いて、貰った恩恵についてもレイヤさんに話した。

「なるほど……だから迷宮に入ってモンスターを狩りまくりたいって思ったわけか」

「そうです。何らかの変化が現れるんじゃないかと思って」

「でも、どうやらそれは的中みたいだぞ。君の持つその恩恵は経験をすることで、効果を発揮する。しかもその経験量に比例して効果は大きくなるってわけか。色々な能力が手に入るのも恐らく役職を持っていないからだな。こりゃ、とんでもない恩恵を貰ったぞアリシアくん!」

 何故か俺よりも興奮気味に語るレイヤさん。
 でも俺が思っていたことが現実となった今、この恩恵がいかにとんでもないものなのかは十二分に分かった。

 こうなったら後はもう……やることは一つだけだ。

「アリシアくん? もう休憩は大丈夫なの?」

「大丈夫だ。それよりも、もっとコボルト討伐したい。決闘までに時間はもうないんだ。時間の許す限り、上げれるだけ上げておきたい」

「なら、もっと深層に行ってみよう。多分、ここら一帯のコボルトは狩り尽くしてしまっただろうからね」

「分かりました。案内していただけますか、レイヤさん?」

「もちろん! 付いてきて!」

 俺たちはさらに迷宮の奥深くへと進んでいく。

 こうして。
 俺の破格の特訓は始まった。

 俺は勝負までの残り日数を全て鍛錬に費やした。
 
 寝る間も惜しんで鍛錬に励み、学校のある日も帰りにわざわざ迷宮まで足を運び、特訓を続けた。
 
 アリスもお弁当を作ったりして、一緒に特訓に付いてきてくれた。
 回復魔法も適度にしてもらい、おかげで大きな怪我を負うこともなかった。

 そうして、俺は実戦を経て着々と力をつけていった。

 絶対に負けられない、来るべき勝負に向けて。




「よし、これなら……!」




 そして時は進み、運命の決闘日当日を迎えた。
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