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45.○○な朝(前)
しおりを挟む朝になった。
が、目覚めた途端事件は起こった。
「こ、これは……!」
俺の目線の先にはすらりと艶やかな銀の髪。
そして柔らかい感触が俺の身体全体を包み込む。
「な、なぜこうなった……!?」
これは俺にとって事件の何ものでもなかった。
そう……今、俺の上には今ソフィアがうつ伏せで寝ているのである。
対して俺は仰向けでソフィアを抱えるように寝ていたらしく、いつの間にかとんでもない態勢が構築されていた。
(そうか。確か俺もあの時に寝落ちして……)
蘇って来る記憶。
だが今はそんなことなどどうでもいい。
(ど、どうする!? この状況から脱却するには……)
少しずつ動いてぬるっと切り抜ける……いや、起きる確率が高い。
だがこの状況だと一度ソフィアを俺の身体の上からベッドに移す必要がある。
かなり難題だが……
(少しずつ動いて抜ける方法しかないか……)
俺はそっと身体を動かし、ソフィアを起こさないように少しずつベッドの端の方へ。
(そっとだぞ……そっと……)
今のところかなり順調。
地に足さえつければ後はどうとでもなる。
(ゆっくりだ……慌てるな)
そう自分に念じながらもぞもぞと動く。
ソフィアは依然として熟睡状態。
相当疲れていたんだろう。
可愛い寝息がすっと耳に入って来る。
てか普通に寝顔が可愛い。
できることならずっと見ていたいくらいである。
が、もし起こしてしまったら一巻の終わり。
この状況を知れば流石のソフィアも怒るだろう。
そうなれば今まで築いてきた関係が崩れかねない。
(それは嫌だ!)
ならばこの状況を何事もなかったかのように切り抜けるしかない。
俺はそう思いながら慎重に慎重に動いていく。
それにしても……
(動く度にソフィアのむ、胸が……感触が……!)
服の上からでも十分に分かる柔らかな感触。
胸元にふかふかのクッションでも抱えているかのような感覚だ。
(……ダメだ。意識するなオレ!)
とはいっても俺だって男だ。
欲がないと言えば当然ウソになる。
ちょっとくらい……なんて感情も時折脳裏を掠める。
(無だ。そう……無の心だ。これが魔法の鍛錬だって思えばいい)
魔法もより高度なものにするには”心”による影響が大きく出る。
強く真のある心を持てばより強力な魔法が。
逆に冷静沈着に落ち着いた心を持てば繊細かつ高精度な魔法を放つことができる。
要はこれもいわゆる心の訓練だと思えばいい。
(そうすれば疚しいことなんて考えない……はずだ!)
そう自分にひたすら言い聞かせ、身体をベットの端へ寄せていく。
(よし、ここまで来れば足が……)
身体を少しだけ捻って足を延ばす。
それも慎重に……慎重に。
そして――
(よし、足が地面についた!)
後はゆっくりと身体を傾けてスルッとその場から出るだけ。
これならソフィアも起きないだろう、多分。
どうやら脱出は上手くいきそうだ……
そう思っていた、その時だった。
――コツコツコツコツ
(ん、なんだこの音……足音?)
耳を澄ませば部屋の外から聞こえてくる誰かの足音。
(音的にヒールの踵の音……ってことは……!)
もしかして……アリシアさんか!?
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