60 / 160
60.帰宅
しおりを挟む「あっ、ランス! お帰りなさい」
「ただいま、ソフィア」
「遅かったね。ギルマスに何言われてたの?」
「まぁ、色々とな」
ドロイドとの話が終わり、俺は皆の元へと戻っていた。
ギルドのロビーに先ほどの冒険者たちの姿はなく、二人に話を聞く限り、例のドラゴンの捕獲へと向かったらしい。
「ランスくん、本当にすまなかった。君たちまで巻き込んでしまって」
「リベルさんのせいじゃないですよ。運が悪かっただけです」
一つ面倒なことを頼まれはしたが、その分の報酬は出るらしいし、気にしてはいない。
パーティーとしての活動も学ぶことができたし、逆にいい経験になった。
「リベルさんはこれから何を?」
「僕はこれからボルとルナと共にもう一度さっきの場所に行く。ドラゴン回収の手伝いをしにいくんだ」
ドラゴン回収……さっきの冒険者たちがやりにいったやつか。
多分調査のために捕獲するんだろうけど。
「なら俺たちも行きます。関与していて任せっぱなしは悪いですし。みんなもいいか?」
「わたしは全然大丈夫です!」
「わたしもオーケーよ」
一応俺たちも関係者だ。
任せっきりにするのはどうも後味が悪い。
二人の許可も取れたし、ここは手伝いに行くべきだ。
「分かった。じゃあみんなで行こう」
リベルは俺の要求に了承。
俺たちも手伝いに行くことになった。
そしてなんやかんや時間が経ち……
「はぁ……やっと帰れる」
「中々大変でしたね」
「わたしたちとルナさん以外、全員男だったのにこんなに時間がかかるなんて……」
「ドラゴン恐るべし……ですね」
時刻は夕暮れ。
俺たちはドラゴン回収の手伝いを済ませて、屋敷に帰っている最中だった。
「それにしても、誘拐事件の調査だなんて。物騒な依頼を頼まれたわね」
「ギルドマスター直々の頼みだからな。仕方ないよ」
「その黒ずくめの集団というのも気になります」
俺は二人に例の事件のことを話していた。
そしてその調査に協力してほしいと言われたことも。
結局。
俺はあの話の後、リベルと共に調査協力に同意。
早速明日から依頼内容が通達されるという運びとなった。
基本、この話について国調査の極秘事項であるため、拡散することは禁句だ。
だが流石に二人に伝えず、コソコソとやるのも申し訳ないので俺と関わりの深い人物には教えることに。
ドロイドもそのことには了承してくれた。
幸いにもソフィアたちはイリアを除いて皆、国側の人たちだ。
公開しても何ら問題はないとのことで、二人の調査参加もOKだとも言ってくれた。
「ソフィアは知っていたのか? この事件のこと」
「いえ、わたしは知りませんでした。ここ最近、お城には出向いていませんので……」
「そうか……」
この調査は元々ギルドに寄せられた被害届が発端。
最初はギルド側で調査をしていたが、被害件数の増加で手に負えなくなって国に協力を持ち掛け、今に至る。
「でも最近、国家騎士たちの動きがいつもよりも激しいなとは思っていました」
「そうね。わたしもこの前ソフィアと王都へ買い物に行った時にそれは思ったわ」
「なるほど。と、なると事件はだいぶ前から動いていた可能性はあるわけか」
黒ずくめの集団が見つかったのも最近だが、もっと早い段階で王都に潜伏していたのかもしれない。
(なんか胸騒ぎがするな……)
よくない感じだ。
何かいけないことが盛大に起こる……そんな気がする。
「俺は明日からリベルさんと一緒に調査に参加するけど、二人はどうする?」
「もちろん、わたしも行きます! この国を脅かす人たちに制裁を加えないと!」
「わたしも行くわ。一人だけお留守番だなんてつまらないし」
二人ともやる気のようだ。
危険を伴う調査なので、本来なら連れていくべきではないんだろうけど。
「分かった。じゃあ明日はみんなで朝6時起きだな」
「え、えぇーー!? なんでそんなに早いの!?」
「調査が7時からだからだよ。無理そうか?」
「だ、大丈夫。頑張って起きるから……」
俺は比較的朝は強い方なのでいいが、弱い人にとっては少々辛い時間帯。
朝、クエストに行く冒険者とかなら当たり前の時間かもしれないけど、イリアの顔を見る限り、結構辛いのだろう。
「ソフィアは大丈夫か?」
「はい。普段はその時間よりも早い時間にいつも起床していますので」
ソフィアは余裕そうだった。
ということは、前に俺と一緒のベッドで寝たのはレアケースだったわけか。
「それじゃ、そういうことだから二人とも準備しておいてくれ」
「はい!」「りょ~かい~」
話が纏まったところでちょうど屋敷の目の前まで来ていた。
が、屋敷に近づいていく内に何やら異変があることに気が付く。
「ん、あれは……?」
前見た時と同じ風景。
屋敷の前に数台の馬車が止まっており、その馬車の側面部分には国章がデカデカと刻まれていた。
13
あなたにおすすめの小説
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる