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77.不毛な
しおりを挟む席に戻ると、何やら先ほどよりもデザート皿の枚数が増えていた。
「な、なんだこの皿の山は……」
「彼女だよ」
「え?」
リベルの視線の方向。
その山の隣でモグモグと幸せそうにデザートを頬張るソフィアの姿が。
「これ……全部ソフィアが食べたんですか?」
「そうだよ。いやぁ~たくさんたべる女性は素敵だね。男の僕でも逞しいなと思うよ」
「いや……」
この量は逞しいなんてもんじゃない気がするぞ。
俺なら控えめに言ってドン引きだ。
ていうか、ソフィアってこんなに食べる子だったっけ!?
「(もぐもぐ)はぁ~~これもおいしいです!」
「お、おい……ソフィア」
「あ、ランス! お腹の方はもう大丈夫なんですか?」
「え?」
「なんかイリアさんが”ランスがお腹痛くて死にそうって言うからお手洗いに連れていくね”って言っていたので」
いや、言ってないし!
微塵も言ってないし!
俺はその話を聞くと、すぐにイリアの方を向く。
イリアは俺と目が合うなり、スッと目を逸らした。
「ランス……?」
「あ、ああ……もう大丈夫だ。この通り!」
マッスルポーズで元気アピール。
ソフィアを心配させるわけにはいかないからな。
イリアの肩を持つのは癪に障るが。
「良かった~」
ホッと一息つくソフィア。
そんな彼女の純粋さを見ると、罪悪感が湧き上がって来る。
「にしてもソフィアってそんなに食べるタイプだったか?」
「いえ。普段はここまで食べることないんですが、おいしすぎて手が止まらなくなっちゃって、気がつけばこんなことに……」
「そ、そうか……」
それでもこの量は破格だ。
周りのお客さんや店員さんもその山を見るなり、あんぐりと口をあけていた。
「あ、すみませーーーん! これ、追加でお願いします!」
「ま、まだ食べるのか!?」
「大丈夫ですよ、ランス! お代はしっかりと払うので! 国の経費として!」
「いや、そういう問題じゃ……てか、経費に落とすんかい!」
いいのか、それで……
流石は一国の王女、やることが違う。
でもまぁ、ソフィアが幸せになるんならいいか。
「ムムムッ……! やるわね、ソフィア! こうなったらわたしも……!」
そんな様子を見ていたイリアが何やら顔を険しくさせている。
「ん、どうしたんだイリア?」
聞いてみても返答がない。
すると。
イリアは何故か、張り合うようにしてデザートを注文する。
そして大量のデザートで俺たちのテーブルが埋め尽くされる。
「おいイリア。いきなりどうしたんだよ」
「なんか近くでたくさん食べている人を見てると、燃えてくるのよ」
「なんで?」
「わたしもたくさん食べないとってね。特にソフィアみたいな人には……」
「ソフィアみたいな人……?」
イリアの目線の先。
そう、それはソフィアが持つ豊満な二つのお山に焦点が定まっていた。
(ああ……そういうことか)
この時点で何となく、察しがついてしまった。
ちなみにイリアの方は決して小さいわけではない。
だがソフィアと比べるとその差は歴然。
戦闘力に大きな違いがあることは明白であった。
「多分、アレは甘い物をたくさん食べることから生まれる産物。決して大食いではない彼女だから、ずっと気になっていたけど……そういうことだったのね」
「い、いや多分そんな理由じゃ――」
「こうしてはいられないわ! わたしもとことん食べるわよ! このまま彼女ばかり大きくなってしまってたまるものですか!」
(聞いてないし……)
なんだか、分からないが。
イリアの中に強い闘争心が芽生えてしまったらしい。
てか……作戦会議は?
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