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79.尾行

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「次はあの店か……」

 俺は引き続き、例の二人を追跡していた。
 
 大柄なカフェの店員と謎の黒づくめの人物。
 俺はこの二人に何か良からぬものを感じ、こうして尾行しているわけだが……

「さっきから店を出たり入ったり……何してんだ?」

 追いかけていくと彼らの奇行を目の当たりにすることに。
 どういうわけか、店に入っては出たりを繰り返しているのだ。

 しかもその店は面白いことに全部カフェ。
 
 入るまではいい。
 だが入ってから5分の立たないうちに外に出てくるのだ。

 たとえ爆速でコーヒーを飲んで出てきたとしても5分で退店できるだろうか。

 今も他のお店に入っていったし……

「さっきから執拗に周りを気にしているのも怪しいよな……」
 
 単なるカフェ巡りだったら、それでいい。
 というか、そうであってほしい。

 事件は小さな発見から始まる。
 前に俺の読んでいたミステリー小説にそんなことが書いてあった。

 まだ今のところは事件にはなっていないけど、この発見がそれに繋がるなんてこと……

(いや、考えすぎか)

 でも一応調べておかないと。
 現状が現状だからな。

「あ、また出てきた……」
 
 今回も5分ほどで店から出てくる謎の二人。
 そしてそのままスタスタと歩いていく。

 俺はその背後からそっと後を追う。

 一応、向こうに悟られないように潜伏系の魔術を自身に付与している。
 相手が魔法解除系に特化した高位魔術師でない限り、悟られることはない。

「……今度はあの店か」

 もうこれで5件目だ。
 一体何をしたいんだ……?

「このままじゃ、埒が明かないな。俺も店の中に入ってみるか」

 別にお客として入りたいわけじゃないが、この状況が続くようじゃ追跡している意味がない。
 それに店の中に入ればあの二人が何をしているか分かるしな。

 ただただコーヒーを飲んでいるだけなら、それはそれでいいし。

「よし……」

 そんなわけで。
 俺も二人の後を追って店の中へ。

 そしてそのままお客として店員さんに案内される。
 案内された先は店内全体がよく見えるテーブル席だった。

(ラッキー! ここなら、座りながら店内を見れるぞ)

 そう思いながら、俺はとりあえずホットコーヒーを注文。
 流石に店に入って何も頼まないわけにはいかないからな。

 コーヒーなら多分、1~2分くらいで来るだろうし。

 あいつらが店に入ってからまだ1分弱くらいしか経っていない。
 5分で出てきたとしてもあと時間は4分近く残っている。
 
 コーヒーが出てくるまでのこの時間で奴らを……

「って、なに!?」

 思わず声に出てしまった。
 近くにいた客が全員こっちを見てくる。

(あ、ヤバ……)

 俺は両手で自分の口を塞ぎ、姿勢を低くする。

(ど、どうなってんだ?)

 俺は驚いていた。
 何故なら店内どこを見渡しても奴らの姿がなかったからだ。
 
(見間違いか……?」

 そう思ってもう一度見渡してみるが、やっぱり奴らの姿はなかった。

「ど、どういうことだ……あいつらは」

「お待たせいたしました。ホットコーヒーになります」

「あ、どうも」

 そうこうしているうちにコーヒーが手元に。 
 すると、その時。

「……ッ!」

 俺のすぐ前方にある扉。
 あの扉から店員が出入りしているから、厨房か何かと繋がっているのだろう。

 その扉がガチャッと開くと、なんと例の二人組が現れたのだ。

「な、なんであんなところから……」

 二人は扉が出てくると、真っ直ぐに出口の方へ。
 時間を見ると店に入ってからちょうど5分くらいが経っていた。

(マズイ……! このままじゃ、見失う!)

 二人は店を出ると、今度は来た道の逆方向へと歩いていった。

(早く俺も出なければ!)

 俺はすぐに手元に置かれたコーヒーを一気飲みする――が、

「あっつぅぅぅぅぅぅぅーーーー!」

 猫舌炸裂。
 その後、コーヒーを飲んで出るまでに3分も使うことになった。
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