98 / 160
98.事情聴取
しおりを挟む「ただいま、帰りました」
「あっ、皆さん。よくぞご無事で……!」
家に入ると、真っ先に玄関へと駆けてくるアリシアさん。
あれから色々と探し回っていたのだろう。
表情に少しばかり焦りが見えていた。
「せ、聖剣は……どうでしたか?」
「有益な情報は手に入れることができました。ですがその前に、あの場にいた使用人の方全員をリビングへと集めていただけませんか?」
そうアリシアさんに話すと、俺は最後に一言付け加えた。
「これから、緊急会議を開きたいので……」
♦
俺たち一同はリビングに集結していた。
俺とソフィアとイリア、そしてアリシアさんとあの場にいた使用人全員だ。
これから当事者たちでイリアの事情聴衆を含めた緊急の会議が行われる。
「イリア、詳しい話を聞かせてくれないか? 覚えている範囲でいい」
「う、うん」
イリアはコクリと頷くと、自分の知る限りの情報を皆に教えてくれた。
あんなことになった経緯やそして犯人がどんな人物だったかまで。
記憶にあること全てを吐きだしてもらった。
「……わたしが覚えている情報はここまでよ」
「そんなことが……」
この話で一番衝撃を受けていたのはアリシアさんだった。
イリアが説明を終えるのと同時に、アリシアさんは口を開いた。
「申し訳ありません、イリア様。私の不手際で、お辛い想いをさせてしまって……」
滅多に見ないアリシアさんの懺悔だ。
表情もいつものクールさはなく、かなり落ち込んでいるようだった。
「あ、謝らないでくださいアリシアさん! わたしなら大丈夫ですから……」
イリアはいつにも見ないアリシアさんの雰囲気に少々焦りを見せていた。
とにかく、話を端的に纏めるとこうだ。
その人物が犯行を犯したのは休憩中だった。
俺たちが別室で休憩をしている中、イリアはたまたま一人部屋に入っていく使用人の姿をみたとのこと。
ちなみに部屋内は特殊な結界で守られていたから、誰も入れないはずだったのだが、その者は悠々と中に入っていったらしい。
そこで怪しんだイリアも様子見で中へと入ったことで、犯行現場に遭遇。
たまたまとはいえ、目撃したイリアは犯人を捕まえようと試みるが、逃がしてしまい、王都内に逃げ込まれた。
イリアはそれを追いかけ、例の都内公園へと追いつめたのだが、その際に数人のローブ集団と会し、返り討ち。
それから数十分後に俺たちに発見された、というのが大まかな流れだ。
要するに犯人は使用人に紛れ、誰もいない時間を狙い、結界を破壊して部屋内に進入し、聖剣を奪ったということになる。
犯人たちの特徴は使用人の恰好をした者以外、全員黒ローブを羽織っており、フードを被っていたためか、顔までは分かっていないらしい。
ただ、使用人に扮していた人物は女で蒼髪で顔立ちは20代くらいだったとのこと。
暗闇で明瞭には見えなかったが、とにかく若い女が事件の犯人らしい。
ちなみに他には特に犯人たちを象徴づけるものが何もなかったためか、それが犯人を識別する唯一の特徴となった。
あとイリアがいうには聖剣を運ぶ際にアイテムボックスが使われたのこと。
まぁ現実的に考えて、聖剣を手に持って逃げるのは現実的ではないからな。
あとはローブの集団が男だったってところくらいか。
理由は体格的なところと、去り際に仲間と話しているところを聞いた時の声質が男っぽい感じだったらしい。
返り討ちに遭って意識が朦朧としていたからか、内容までは覚えていないとのこと。
結局、そっちに関しては黒ローブを着ていたということ以外は証拠になるものはなさそうだった。
(黒ローブの集団か……)
最近やたらと出てくるワードだ。
でも共通しているのはほぼ間違いないと言ってもいい。
こんな状況でこんな事件が起きれば、犯人は王都占領計画を企てている一味……そう考えるのが自然だ。
と、なるとあのアジトにいた誰か、ということになるな。
でも動機が分からない。
そもそもなぜ聖剣を奪ったんだ?
それに屋敷には護衛の騎士も一定数いる。
(どうやって忍び込んだというんだ……?)
考えれば考えるほど、頭が痛くなってくる。
「蒼髪の使用人か……アリシアさん、その人物に心当たりってあります?」
「いえ、それが記憶にないのです。わたしは屋敷にいる使用人全員の顔を名前を覚えているのですが、そのような特徴を持った者は……」
「そうですか……」
これは外にいる護衛騎士にも話を聞く必要があるみたいだな。
う~んと頭を悩ませ、考えていた……その時だ。
「あ、アリシア殿! 大変です!」
急にリビングの扉がバタンと開き、護衛の騎士たちが慌てて中に入ってきた。
どうにも普通じゃない様子だが……」
「ど、どうなされたのですか?」
恐る恐るそう聞くアリシアさんに騎士の一人が少し早口で答えた。
「う、裏庭に人が……人が倒れているのを発見致しました!」
11
あなたにおすすめの小説
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる