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104.守るために
しおりを挟む「色々と情報が掴めましたね」
「ああ。意外と収穫だったな」
あれから俺たちは書庫にある帝国関連の書物に目を通し、様々な情報を手にした。
あくまで上辺だけの情報ではあるが、聖十字魔法師団のことや王国と帝国の関係のこと。
それと刻印のこともほんの少しだけだが、分かった。
流石は王家の屋敷が保有する書庫と言ったところだ。
「でももし今回の一件が帝国主導で行ったことだとしたら、何で今なんだろう。戦争でも始めようっていうのか?」
「分かりません。ですが、王国と帝国の関係は芳しくないことは紛れもない事実です。王帝間の国務会議でもずっと緊迫した雰囲気でしたし」
「そんなに悪いのか?」
「はい。噂によると現帝国皇帝のダウト総帥閣下はお父様に積年の恨みがあるとか……」
「そうなのか……」
なんか複雑な事情があるようだ。
前みたいに政治経済に全く関心を示さなかったら、見向きもしない話題だったけど……
(恐ろしいな。現実を知るというのは……)
今の俺は危機感で満ちていた。
前も似たような感覚を味わったけど、今回はより一層それが強かった。
こんな状況下でソフィアが近くにいることも関係しているんだろう。
ソフィア曰く、帝国との関係からいつ戦争になってもおかしくないという。
そして起きた今回の事件。
危機感と共に不安が一気に募って来る。
それに……
「聖十字魔法師団のことも気になる。まだ王都のどこかにいるんだろうけど、恐らく陛下に傷を負わせたのは……」
「可能性は高いですね……」
でも一つだけ疑問点がある。
それは陛下が殺されていなかったことだ。
というのも相手は殺しのスペシャリスト。皇帝が私営部隊にそえるほどのエリートなのだから、暗殺にかけての技術も超一流のはずだ。
そんな連中が陛下一人の命を奪うのに失敗するだろうか?
もしかしたら陛下の生命力が異常に高いから生き延びることができたのかもしれないけど……
でも殺しの専門だったら確実に殺すために急所を狙うはずだ。
聞けば陛下が撃たれた場所はどこも急所を外していたらしい。
仮に殺す意思があったとして、こんな凡庸なミスを犯すだろうか?
まぁこれはあくまで素人目での推測に過ぎないが、わざと殺さなかった……というのもあり得るのではないか。
だとすれば、奴らの目的は一体……
「ソフィア」
「は、はい。どうなさいましたか?」
「これからは如何なる時も二人で行動しよう。今の世の中は危険すぎる」
「は、はぁ……」
困惑するソフィア。
当然の反応であるが、俺は至って真剣だった。
陛下の命が狙われているのなら、第一王女のソフィアだって例外ではない。
いつどこからどんな形で狙われているか、分からない。
幸いなのはソフィアが俺と行動を共にしていることで、王女ということをカモフラージュできていることだ。
だからすぐに特定される危険性はない。
でも念には念をだ。
何かあってからでは遅いからな。
俺はどんなことがあってもソフィアを守る、いや守らないといけないんだ。
「だからソフィア、今日はその……一緒に」
「い、一緒に――?」
「――ランス様、ソフィア様!」
「「……ッ!?」」
突然バタンと書庫の扉が開く。
その音と共に部屋の中へ入ってきたのはアリシアさんだった。
「あ、アリシアさん!? ど、どうしたんですか? そんなに慌てて……」
唐突な介入にまだ驚きで詰まる俺の言葉とは違い、アリシアさんは真剣な眼差しを向けると。
「先ほど城の方から連絡がありました。発令されたようです」
国家非常事態宣言が。
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