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105.国家非常事態宣言
しおりを挟む「それで、集合場所は……」
「明日の昼過ぎにギルド前だそうです。一応昼前にドロイドギルドマスターが募集で募った冒険者が王都へ来る予定になってますが……」
「結局、全員招集になったってことか……」
俺とソフィアは再びリビングへと戻っていた。
それも新たな情報が入ったからである。
その情報とはギルドでアルバートさんたちが言っていた国家非常事態宣言が発令されたことだ。
その宣言で俺たち冒険者は強制的に招集されることになったらしい。
とうとう国側も王都防衛に本腰を入れたみたいだ。
「でも問題は予定通り明日の晩に計画が決行されるか、ですよね」
「うん。恐らく向こうも俺たちと同様にある程度の情報を掴んでいるだろうし、もしかすれば計画を変更した可能性もあるからな」
でも厄介なのはある程度の予測すらもできないことだ。
ここ最近で起きた事件は全部繋がっているのは間違いない。
しかし事件が至るところで起き過ぎて、行く末が全く見えない。
黒づくめの連中のこと
陛下の暗殺未遂こと。
聖剣が奪われたこと。
使用人の首にあった謎の刻印のこと。
(一体、次はどんなことを仕掛けてくるのか……)
「ところで、アリシアさん。イリアの方はどんな感じでした?」
「今のところ順調だそうです。ただ、解析にはもう少しだけ時間がかかると……」
「そうですか……」
情報さえ掴めれば次の行動が容易にできるというのに。
明日の強制招集だって、何が起こるか分からない。
多くの冒険者が一同に集まることをいいことにまた新たな策を仕掛けてくる可能性もあるのだ。
ただ……相手がもし、この情報を掴んでいたらの話になるが。
それに俺にはソフィアがいる。
俺がすべき第一のことはソフィアを守ることだ。
いくら強制とはいえ、彼女を置いて外に行くのだけは嫌だ。
だからといって、彼女も同行するには非常に高いリスクを背負うことになるのだ。
ギルドでは威勢よくあんなこと言ったけど、冷静に考えてみればかなりの危険を伴う。
「……」
「ら、ランス様? どうかなさいましたか?」
「い、いや……明日の召集の件なんですけど、辞退はできないのかなって」
やはり危険な橋は渡るべからず。
本音を言えば俺も王都防衛に参加したい。
何せ、あの場であんな啖呵をきったんだからな。
だが、俺にはその他にやるべきことがある。
アルバートさんたちには悪いけど、ここは一歩引くのが最善だろう。
「私から伝えればできると思います。確かに今の王都は危険です。アルバート様もレイム様も事情を言えば納得していただけると思います」
「なら、お願いしても――」
「それは嫌です、ランス!」
「……!? ソフィア?」
話を進めていると、横からソフィアが割って入ってきた。
ソフィアは今まで見たことないほどに、ムッとした顔をこちらに向けてくる。
「黙って見ているだけなんて、嫌です」
「で、でもソフィアにもしものことがあったら俺は……」
「分かっています。ランスはわたしに危険が及ぶ可能性の高さを考えて、そう言ってくれたんですよね? でも今こうして国が危機に曝されているのにわたしだけ逃げに講じるわけにはいきません。満足に民を守れない人間に、王女の名は語れないのです!」
「ソフィア……」
色々とグサッと刺さった一言だった。
思い返してみれば、ソフィアはこういう人だ。
国や民のことを誰よりも想い、愛し、そして何よりこの国の為に自分に何ができるかを考えていた。
そんな人間がこんな緊急事態に自分だけ身籠るなんて選択肢をするだろうか?
答えは否だ。
「ごめんなさい、ランス。でもわたしはこの国を自らの手で守りたいんです。もちろん危険が伴うことも分かっています。この国の王女としての自覚を持った時から、覚悟はできていますから」
真っ直ぐとした碧眼の瞳が俺に向けられる。
彼女の本気さは目を見れば一目瞭然だった。
いつもみたいに綺麗だけど、同時に力強さも感じた。
いつもは優しくて温厚なソフィアが、こんな目をするなんてな。
「……分かった。ソフィアの想いは確かに受け取ったよ」
「そ、それじゃあ……」
「ああ……二人で、いや……みんなで守ろう」
この国を……!
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