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140.戦闘開始
しおりを挟む「背後に扉のようなものが見えますよね? あそこがこの空間から脱するための唯一の道です。お二人は急いであの場所まで行って脱出してください!」
「扉……?」
確かによく見ると背後のずっと先に、謎の扉があった。
距離的に遠くにあるので気づかなかったが、一直線に道も出来ている。
「い、良いのですか……?」
「もちろんです。というか、むしろ我々の方が適任ですよ。ソフィア様の身に危険があっては今後ギルドマスターとして陛下に顔向けできませんからね」
ドロイドさんは爽やかな笑みを見せながら、そう言った。
余裕があるのか分からないが、いつにもまして爽やかさが際立っていた。
「で、ですが……!」
しかしソフィアはあまり乗り気な反応ではなかった。
自分の為に他人が身を危険に曝そうとしているのだ。
当然の反応である。
「ソフィア行こう。今は考えている暇はないんだ。ここはドロイドさんたちに任せて、俺たちは俺たちのすべきことをしよう。この国を守るために」
「そ、そう……ですね。ランスの言う通りです。……行きましょう」
俺の説得で不安が一掃されたのか、ソフィアの顔つきが変わる。
「ドロイドさん、ここはお願いします」
「ええ。お二人もお気をつけて。ソフィア様のことお願いしますよ、ランス君」
「はい!」
「お二人とも……ありがとうございます!」
俺たちは二人に礼をすると、そのまま振り返り、その場から走り去る。
振り返ることなく、ただソフィアの手を握りしめて。
「ランス」
「どうした?」
「必ず成功させましょう。ドロイドさんたちの為にも……!」
「……ああ、もちろんだ!」
結束を強め、俺たちはやるべきことの為に足を動かす。
だがその後。
不思議なことに敵が俺たちを追ってくることはなかった。
♦
「彼ら、行ってしまいましたよ。追わないんですか?」
「別に彼らを追ったところで結果は変わらないさ。どうせここから出ることは不可能だからね。それよりも、俺としては君の始末の方を優先させたいのでね」
「なるほど。そういうことですか」
睨み合う両陣営。
余裕を見せる男にドロイドもまた、冷静な笑みを浮かべ、言葉を返す。
「ま、彼らはあとでゆっくりと料理するさ。その前に……」
男は一拍置くと、スッと早業の如く険しい表情に変わった。
「君は一体何者だ? 我々の計画を知っているような感じだったけど」
「さぁ、どうでしょうか。仮に知っていたとしたら、貴方はどうするつもりで?」
「もちろん、二度と生者の世界に帰ってこられないようにするだけだ」
男は躊躇なく、殺害宣言をする。
しかしドロイドは全く動じなかった。
「まぁそうなりますよね。ですが、私はまだこんなところで死ぬわけにはいきません。立場上、やることが山ほどあるのでね」
「その様子だと、教える気はない……という認識でいいのかな?」
「まだ会って間もない人に自分のことをベラベラ話すのは少し気が引けますのでね。そういうことはもっと親しい間柄にならないと」
「そうかい、なら仕方ない」
男はふわっと空中浮揚すると、怪物の元へと近づく。
「悪いけど、君にはそのお堅い口を割ってくれるまで痛い目に遭ってもらうよ」
「割ってもどうせ殺すのでしょう?」
「う~ん、それは気分次第かな。ちょっと不安になってきたの?」
「いえ、むしろ気分が高揚しています。こうして戦うのは久々なものでして。貴方がどれほど私を楽しませてくれるのか、楽しみですよ」
一片も変わることないドロイドの余裕の姿勢に男はペッと唾を吐きながら。
「……ちっ、ふざけたことを。今に恐怖を味わせてやるよ。被験体C01、奴らを叩き潰せ!」
――GYUUUUUUUUUUUUUUUUU!!
男の一言と共に怪物は目を見開き、目覚める。
そして力強い咆哮と共に二人に殺意を向けた。
「行きますよ。準備はいいですか?」
「私はいつでも大丈夫です」
「では参りましょうか。ランスくんたちの迎えが来るまで!」
臨戦態勢を整える二人の戦士。
怪物は活気溢れる二人に牙を向けると、猛烈なスピードで彼らに襲い掛かった。
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