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148.親の心

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 新年あけましておめでとうございます。
 今年もどうぞ宜しくお願い致します。

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「では、城の方はまだ何も起きていないのですね?」

「ああ、こっちは今のところ何ともない。心配はいらん」

 屋敷へと戻っている最中。
 ソフィアは城にいる陛下の安否を確認するべく、通信魔法で陛下と通話をしていた。

「お体の方は……」

「そっちの方も順調に回復している。私のことは気にするな」

 声からして元気は良さそうだった。
 城にも今のところ異変はないみたいだから、ひとまず安心だな。

「それよりもお前の方は大丈夫だったのか? ドロイドから聞いたぞ、敵のに忍び込んだのだと」

「わたしなら大丈夫です。ランスが守ってくれたので……」

「そうか」

 ホッとした声が通信魔法を介して聞こえてくる。
 
「だが、私に何も連絡せずに行動するのは感心しないな。ドロイドから話を聞いた時にはどれほど心配したことか」

「ご、ごめんなさいお父様。でもじっとしていられなくて……」

 謝るソフィア。
 だが陛下の言い分はごもっともだ。

 何せ、自分の愛娘が敵の巣穴に飛び込んでいったのだ。
 あの親バカ陛下が心配していないはずがない。

 でもソフィアにはソフィアなりの行動理念があった。

 民を守りたい。
 王女として、自分に出来ることをしたい。

 その想いは直に耳にした俺が一番よく分かっている。

「陛下、お言葉ですがこれにはしっかりとした理由が……」

 思い切って会話に割り込むと。

「良い、ランスくん。予想はしていたことだからな」

 冷静な声で。
 俺にそう一言言うと。

「君も娘と共に行動しているならもう分かっているだろう。一度こうなると、誰も手をつけられぬことを」

「はい。それはもう……」

 よく存じ上げております。

「ソフィア。本来ならば、お前には王族専用の地下シェルターに身を潜めていてほしい。今の王都は非常に危険な闇に犯されつつある。これは、紛れもない私の本音だ」

「お父様……」

 声色からして本気でそう言っているのが伺える。
 いつもは陽気で親バカな国王だが、今回に限っては真剣そのものだった。

「だが、その様子だと最後までやり切るつもりなのだろう?」

 陛下がそう問いかけると、ソフィアは少し間を空けながらも「うん」と返答した。

「ふふっ、昔はあんなに臆病だったのに変わったな。ソフィアよ」

「そ、それは昔の話です! 今は関係ありません!」

 頬を赤く染めるソフィア。
 そう言えば昔のソフィアの話ってあんまりしたことなかったような……

 臆病ってことは昔は今の性格とは全く違う感じだったのか?
 
「何がともあれ、お前がそう決断したのなら私は止める気はない。だが無理だけはするな。人には身の丈に合うことと合わないことがある。無謀に突き進んでも、悲劇を生むだけだということを頭に入れておくことだ」

「分かっています、お父様。でも今のわたしは一人じゃありません。わたしを守ってくれる最高の殿方がいますから」

 ソフィアはそういうと俺に笑顔を向けてくる。
 その一瞬にドキッと心を動かされる。

「なら、此処から先はお前が信じる道を突き進んでいくがよい。その途中で助けがいるなら、いくらでも力になろう。私もこのままむざむざと帝国に国を明け渡すつもりはないからな」

「ありがとうございます、お父様!」

 公認を得たところで。
 今度は俺が陛下に呼ばれる。

 どうやら二人きりで話したいとのことで、ソフィアには一度外してもらった。

「ランス君」

「何でしょうか?」

「娘の世話には苦労をかけている。中々クセが強い子で大変だろう?」

「いえ、俺もソフィアといることで学ぶことが一杯あったので、むしろ陛下には感謝したいです。歳も近いのに本当に心からこの国のことを考えていて、素直に尊敬しています」

 立場の違いとかはあるかもしれないけど、国のことを誰よりも深く考え、行動に起こすことなんて簡単に出来るもんじゃない。
 彼女は若いながら、もう責任というものがどういうものかよく分かっているのだ。

「そう思ってくれているのなら良かった。君に娘を託したのは間違いではなかったようだ」

 陛下はここで一瞬溜めをつくると、穏やかな口調で。

「ランス君、娘を頼んだぞ。君が、あの子の希望を叶えてやってくれ」

 その一言に俺は迷うことなく返答した。

「もちろんです。絶対に、お約束します」

 責任。
 俺はこの時、その言葉の意味をより深く心に刻んだのだった。
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