148 / 160
148.親の心
しおりを挟む
新年あけましておめでとうございます。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「では、城の方はまだ何も起きていないのですね?」
「ああ、こっちは今のところ何ともない。心配はいらん」
屋敷へと戻っている最中。
ソフィアは城にいる陛下の安否を確認するべく、通信魔法で陛下と通話をしていた。
「お体の方は……」
「そっちの方も順調に回復している。私のことは気にするな」
声からして元気は良さそうだった。
城にも今のところ異変はないみたいだから、ひとまず安心だな。
「それよりもお前の方は大丈夫だったのか? ドロイドから聞いたぞ、敵の巣穴に忍び込んだのだと」
「わたしなら大丈夫です。ランスが守ってくれたので……」
「そうか」
ホッとした声が通信魔法を介して聞こえてくる。
「だが、私に何も連絡せずに行動するのは感心しないな。ドロイドから話を聞いた時にはどれほど心配したことか」
「ご、ごめんなさいお父様。でもじっとしていられなくて……」
謝るソフィア。
だが陛下の言い分はごもっともだ。
何せ、自分の愛娘が敵の巣穴に飛び込んでいったのだ。
あの親バカ陛下が心配していないはずがない。
でもソフィアにはソフィアなりの行動理念があった。
民を守りたい。
王女として、自分に出来ることをしたい。
その想いは直に耳にした俺が一番よく分かっている。
「陛下、お言葉ですがこれにはしっかりとした理由が……」
思い切って会話に割り込むと。
「良い、ランスくん。予想はしていたことだからな」
冷静な声で。
俺にそう一言言うと。
「君も娘と共に行動しているならもう分かっているだろう。一度こうなると、誰も手をつけられぬことを」
「はい。それはもう……」
よく存じ上げております。
「ソフィア。本来ならば、お前には王族専用の地下シェルターに身を潜めていてほしい。今の王都は非常に危険な闇に犯されつつある。これは、紛れもない私の本音だ」
「お父様……」
声色からして本気でそう言っているのが伺える。
いつもは陽気で親バカな国王だが、今回に限っては真剣そのものだった。
「だが、その様子だと最後までやり切るつもりなのだろう?」
陛下がそう問いかけると、ソフィアは少し間を空けながらも「うん」と返答した。
「ふふっ、昔はあんなに臆病だったのに変わったな。ソフィアよ」
「そ、それは昔の話です! 今は関係ありません!」
頬を赤く染めるソフィア。
そう言えば昔のソフィアの話ってあんまりしたことなかったような……
臆病ってことは昔は今の性格とは全く違う感じだったのか?
「何がともあれ、お前がそう決断したのなら私は止める気はない。だが無理だけはするな。人には身の丈に合うことと合わないことがある。無謀に突き進んでも、悲劇を生むだけだということを頭に入れておくことだ」
「分かっています、お父様。でも今のわたしは一人じゃありません。わたしを守ってくれる最高の殿方がいますから」
ソフィアはそういうと俺に笑顔を向けてくる。
その一瞬にドキッと心を動かされる。
「なら、此処から先はお前が信じる道を突き進んでいくがよい。その途中で助けがいるなら、いくらでも力になろう。私もこのままむざむざと帝国に国を明け渡すつもりはないからな」
「ありがとうございます、お父様!」
公認を得たところで。
今度は俺が陛下に呼ばれる。
どうやら二人きりで話したいとのことで、ソフィアには一度外してもらった。
「ランス君」
「何でしょうか?」
「娘の世話には苦労をかけている。中々クセが強い子で大変だろう?」
「いえ、俺もソフィアといることで学ぶことが一杯あったので、むしろ陛下には感謝したいです。歳も近いのに本当に心からこの国のことを考えていて、素直に尊敬しています」
立場の違いとかはあるかもしれないけど、国のことを誰よりも深く考え、行動に起こすことなんて簡単に出来るもんじゃない。
彼女は若いながら、もう責任というものがどういうものかよく分かっているのだ。
「そう思ってくれているのなら良かった。君に娘を託したのは間違いではなかったようだ」
陛下はここで一瞬溜めをつくると、穏やかな口調で。
「ランス君、娘を頼んだぞ。君が、あの子の希望を叶えてやってくれ」
その一言に俺は迷うことなく返答した。
「もちろんです。絶対に、お約束します」
責任。
俺はこの時、その言葉の意味をより深く心に刻んだのだった。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「では、城の方はまだ何も起きていないのですね?」
「ああ、こっちは今のところ何ともない。心配はいらん」
屋敷へと戻っている最中。
ソフィアは城にいる陛下の安否を確認するべく、通信魔法で陛下と通話をしていた。
「お体の方は……」
「そっちの方も順調に回復している。私のことは気にするな」
声からして元気は良さそうだった。
城にも今のところ異変はないみたいだから、ひとまず安心だな。
「それよりもお前の方は大丈夫だったのか? ドロイドから聞いたぞ、敵の巣穴に忍び込んだのだと」
「わたしなら大丈夫です。ランスが守ってくれたので……」
「そうか」
ホッとした声が通信魔法を介して聞こえてくる。
「だが、私に何も連絡せずに行動するのは感心しないな。ドロイドから話を聞いた時にはどれほど心配したことか」
「ご、ごめんなさいお父様。でもじっとしていられなくて……」
謝るソフィア。
だが陛下の言い分はごもっともだ。
何せ、自分の愛娘が敵の巣穴に飛び込んでいったのだ。
あの親バカ陛下が心配していないはずがない。
でもソフィアにはソフィアなりの行動理念があった。
民を守りたい。
王女として、自分に出来ることをしたい。
その想いは直に耳にした俺が一番よく分かっている。
「陛下、お言葉ですがこれにはしっかりとした理由が……」
思い切って会話に割り込むと。
「良い、ランスくん。予想はしていたことだからな」
冷静な声で。
俺にそう一言言うと。
「君も娘と共に行動しているならもう分かっているだろう。一度こうなると、誰も手をつけられぬことを」
「はい。それはもう……」
よく存じ上げております。
「ソフィア。本来ならば、お前には王族専用の地下シェルターに身を潜めていてほしい。今の王都は非常に危険な闇に犯されつつある。これは、紛れもない私の本音だ」
「お父様……」
声色からして本気でそう言っているのが伺える。
いつもは陽気で親バカな国王だが、今回に限っては真剣そのものだった。
「だが、その様子だと最後までやり切るつもりなのだろう?」
陛下がそう問いかけると、ソフィアは少し間を空けながらも「うん」と返答した。
「ふふっ、昔はあんなに臆病だったのに変わったな。ソフィアよ」
「そ、それは昔の話です! 今は関係ありません!」
頬を赤く染めるソフィア。
そう言えば昔のソフィアの話ってあんまりしたことなかったような……
臆病ってことは昔は今の性格とは全く違う感じだったのか?
「何がともあれ、お前がそう決断したのなら私は止める気はない。だが無理だけはするな。人には身の丈に合うことと合わないことがある。無謀に突き進んでも、悲劇を生むだけだということを頭に入れておくことだ」
「分かっています、お父様。でも今のわたしは一人じゃありません。わたしを守ってくれる最高の殿方がいますから」
ソフィアはそういうと俺に笑顔を向けてくる。
その一瞬にドキッと心を動かされる。
「なら、此処から先はお前が信じる道を突き進んでいくがよい。その途中で助けがいるなら、いくらでも力になろう。私もこのままむざむざと帝国に国を明け渡すつもりはないからな」
「ありがとうございます、お父様!」
公認を得たところで。
今度は俺が陛下に呼ばれる。
どうやら二人きりで話したいとのことで、ソフィアには一度外してもらった。
「ランス君」
「何でしょうか?」
「娘の世話には苦労をかけている。中々クセが強い子で大変だろう?」
「いえ、俺もソフィアといることで学ぶことが一杯あったので、むしろ陛下には感謝したいです。歳も近いのに本当に心からこの国のことを考えていて、素直に尊敬しています」
立場の違いとかはあるかもしれないけど、国のことを誰よりも深く考え、行動に起こすことなんて簡単に出来るもんじゃない。
彼女は若いながら、もう責任というものがどういうものかよく分かっているのだ。
「そう思ってくれているのなら良かった。君に娘を託したのは間違いではなかったようだ」
陛下はここで一瞬溜めをつくると、穏やかな口調で。
「ランス君、娘を頼んだぞ。君が、あの子の希望を叶えてやってくれ」
その一言に俺は迷うことなく返答した。
「もちろんです。絶対に、お約束します」
責任。
俺はこの時、その言葉の意味をより深く心に刻んだのだった。
21
あなたにおすすめの小説
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。
夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。
もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。
純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく!
最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!
自分が作ったSSSランクパーティから追放されたおっさんは、自分の幸せを求めて彷徨い歩く。〜十数年酷使した体は最強になっていたようです〜
ねっとり
ファンタジー
世界一強いと言われているSSSランクの冒険者パーティ。
その一員であるケイド。
スーパーサブとしてずっと同行していたが、パーティメンバーからはただのパシリとして使われていた。
戦闘は役立たず。荷物持ちにしかならないお荷物だと。
それでも彼はこのパーティでやって来ていた。
彼がスカウトしたメンバーと一緒に冒険をしたかったからだ。
ある日仲間のミスをケイドのせいにされ、そのままパーティを追い出される。
途方にくれ、なんの目的も持たずにふらふらする日々。
だが、彼自身が気付いていない能力があった。
ずっと荷物持ちやパシリをして来たケイドは、筋力も敏捷も凄まじく成長していた。
その事実をとあるきっかけで知り、喜んだ。
自分は戦闘もできる。
もう荷物持ちだけではないのだと。
見捨てられたパーティがどうなろうと知ったこっちゃない。
むしろもう自分を卑下する必要もない。
我慢しなくていいのだ。
ケイドは自分の幸せを探すために旅へと出る。
※小説家になろう様でも連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる