彼女はその程度か? ~奪われし魔法~

城井 白

文字の大きさ
13 / 25
悪霊と貴族と

魔法

しおりを挟む
 十大拷問魔法なんてものは誰でも知っているけど、その本質を知っているのは限られた人間のみというわけだ。
 まあ、ジャンヌは貴族を守るものの一人だから知っていても不思議ではないのかもしれないが、何か引っかかるとことがある気もする。
 だがまあそれはおいておいて、もう一つ気になることがある。

「じゃあ何魔法なの?」
「ただ単に気配を限りなく消す魔法です」

 簡単に言い切るジャンヌだが、それはそれですごい。僕はおろか、アルですら彼女の気配を感じられなかったみたいだし、普通に驚異的で危険な魔法だ。

「あー……その魔法は私も知ってるけど、それほどすごい魔法だったっけ?」

 アルはばつが悪そうにつぶやいた。
 実のところ僕ですらその魔法は知っているのだが、それは全く気配が感じられないなんてものではなかったし、姿が見えなくなるほど完璧な魔法ではない。普通の人よりも影が薄くなる程度、いわば僕たちのいうくだらない魔法と同列だ。

「全然」

 ジャンヌは言い切った。平然とした顔で当たり前のことを当たり前だというように、何事もなかったかのように言い切った。そして、そのあとで「ただ」と続ける。

「魔法の効果だけではなく、自分自身の気配を消す努力をすればいいのです。いわば魔法も使いようです」

 そりゃそうだろうし、使い方次第で弱い魔法が強い魔法に代わることは……ないとは言い切れないが、普通に考えるとこれほどまでに劇的に変わるなんてことはありえないだろう。

「魔法ってのは、そこまで自由なものでもないと思うけど」

 僕は不満げにつぶやく。それは、自分の持つ魔法に対する価値観がジャンヌによって破壊されかねないと感じたからであるが、少し大人げない対応だったかもしれない。
 まあ、今までの常識を覆されかねないと考えるなら、誰だってそうするだろう。
 自分の持つ当たり前が消え去るのだから。
 しかし、怪盗団のもう一人の一員である彼女にとってはそうではない。アルにとって魔法とは道具でしかない。道具にはいろいろな使い方があり、使い方によっては最強にも最弱にもなると知っていたようだ。

「自由とは違う……それはもっとおぞましいもので、使い方によっては悪にも全にもなる。それが魔法……。だから魔法は素晴らしく、そして恐ろしい」
「はい、恐ろしいです。だからこそ抑制されるし、使い方を見誤るし、知らず知らずのうちにセーブする」

 僕のいら立ちをよそに、二人は気が合ったかのように同時に怖い顔をする。
 もし、今二人がよからぬことを考えているのではないか? なんて聞かれたら、僕は否定することは出来ないだろう。貴族として、人間として、一人の男として、彼女たちに僕はかなわないだろう。彼女たちは貴族よりも、人間よりも、男よりもはるかに強く、僕にとっては人間の域をはるかに超えている。――力ではない、負の感情がだ。
 彼女たちにとっては今の魔法の使い方自体が、人の心によって抑えられており、それを本当の意味で知ってしまえばもっと恐ろしいことが起こると考えているのだろう。僕の体験談からではそのような発想には至らない、それこそが彼女たちの抱える心の闇を表しているのだろう。
 そんな二人に対して僕はなんて声をかけるべきだろう。考えども答えは出ない。特にアルのことはよく知っているからこそ下手なことが言えないのだ。

「それで、その魔法は僕たちににも使えるの?」

 僕はいたたまれなくなり、会話をそらす。僕だって一般的な常識ぐらいは持ち合わせているが、空気を読んで何か言葉を吐くなんてことは今のこの状況から憚られる。
 それだけに自分の言葉の弱さを知った。
 しかし、彼女たちには関係ない用で、僕の空気の読めない言葉にも答えを返してくれる。いわば、逆に空気を読まれたということだろう。

「それは無理です」
「たぶん無理よ」

 二人同時に否定するのもどうかとは思うが、ひとまず暗い空気から脱却できたことに感謝する。僕は暗い空気とか、落ち込んだ人とか、闇に近いものがあまり好きではない。まあ、ほとんどの人間がそうなんだろうが、その人間の中でも僕はずば抜けてそれらを嫌っていると自負できる。
 もし、闇が僕ほど嫌いなものがいれば、この町に十何年も住んできたら精神が崩壊していることだろう。
 それはともかく、彼女たちの答えの理由を知りたい。

「どうして?」

 僕の頭ではその答えを導き出すことは出来ない。ならは答えを知っているものに聞き出すのが一番だろう。
 答えを知っているのかもしれない方は、いつの間にか椅子から立ち上がりベットに寝転がっている。
 一方、確実に答えを知っているであろう方は、ベットへと移動したアルが座っていた椅子に座っている。

「簡単です」
「なに?」

 ジャンヌは息をためる。
 よっぽど重要なことをしゃべるのだろうと、僕は少なからず期待していた。期待して待っていた。

「その質問に答えることができません!」

 神妙な顔でジャンヌが言った。
 よくわからないけれど、僕はあえてこういうべきだろう。

「そうなんだ……」

 そうして、徐々に考えがまとまるようになった僕は、ようやく彼女の言葉の意味が分かる。

「って、は?」
「だから答えられないってことが答えなんです」
「え? なに?」

 考えがまとまっているようで、僕はいまいち状況が理解できていないようだ。彼女の言っている意味が分からない。
 答えられないってどういうことだ……いやそのまんまの意味なんだろうが、まだ理解できない自分がいる。

「つまりは、それだけ危険な知識ってことじゃないの?」
「正解であり、不正解です。あなたたちになら教えても大丈夫だとは思っていますし、あなたたちにはその権利もあると思います……。ですが、それを望まないもの……いいえ望まないやつ等もいるということです。そう言ったてんでは危険な知識なることでしょう」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...