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正体不明の
ジョーク
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本当は彼女の本音なんてわかっていた。彼女が魔法をどれほど嫌っているかも、どうするべきだと考えているのかも……当たり前だ。僕はいったい何度そのことを彼女から感じ取ったことだろう。何度聞いたことだろう。――彼女は魔法を批判するときいつもつらそうな顔をしていた。
彼女は僕を大切に思ってくれている。僕だって、彼女を大切にしたい。でも、そこに葛藤が全くないなんてはずがない。
魔法愛好家とは、魔法が好きな人間のことだ。そんな人間が口先で、心の表面上で何度彼女に協力しようと口にしても……考えても、深層意識の上ではどこか否定する心がある。
僕は思わず、横で寝ているアルの顔を見つめる。それだけで、罪悪感が少しだけ薄れる気がしたからだ。
「……今日まで僕は人から一体どれほど魔法を奪ってきたのだろうね」
罪……それは僕の中にある葛藤だ。
彼女、アルを思う心と、魔法を奪いたくないという心……その二つはまるで正反対でいびつだ。普通の人間ならこの二つで迷うことなどありえないかもしれない。だけど、僕は本当の愛を知らない。アルを愛しているつもりでも、心のどこか奥底ではわからないでいる。
覚悟はとっくに決まっていたはずだ。でもそれなら、僕はどうして彼女に何度も回答を求めたのだろう。自分でも自分の心がわからないでいる。
思えば、アルとの出会いも劇的なものではない。彼女を暴漢から救っただとか、幼馴染だとか、運命的な出会いをしたとかではなく、ただ普通に告白されて付き合ったそれだけ、それなのに、彼女は僕を大切に思ってくれている。――あれ? 僕は彼女とどうやって出会ったんだ?
普通にであったにしても、何も記憶がなさすぎることに僕は気がついた。
「まあいいか」
考えたところで仕方がない。それに、そんなことは関係なく、僕は彼女を救いたいと感じたのだから、魔法を奪うことにも同意した。だったら、悩もうが僕は魔法よりも彼女を選ばなければならない。
僕は考えるのをやめて、ベットから抜け出す。
「……もう朝なの?」
アルが目をこすりながら体を起こす。
まあ、朝といえば朝なわけだが、まだまだ夜ともいえるぐらいに暗い。いわゆる明け方というやつだ。かっこよく言うのであれば黎明、仰々しく言えば払暁とでも言うのだろう。
ともかく、僕はアルに対して返事をしなければならないわけだが、普通に答えても何とも面白みに欠ける。元来僕は冗談を言わないほうであるが、ともかく何でも挑戦というだろう。
「もう朝が来ることはないよ……世界は滅びたからね」
勢いで言ってしまったが、世界が滅びるってなんだよ。
僕は冗談のセンスがないことに悲観しているが、もう引くにも引けない。
「世界が……滅びた!?」
アルは以外にも乗ってきた。昨日の今日であまりにもノリがいい気もするが、ともかく乗ってきたのなら余計に引きくとはできないだろう。さっきまで真剣なことを考えていた自分がどうにも馬鹿らしく感じる。
もしかすると、僕は彼女のそういうところが好きだったのかもしれない。
「うん、残念だけど魔法が暴走してね……幸い誰も死ぬことはなかったけど、朝が来ることはなくなってしまった」
「世界が滅びたのに、人間は生きているの?」
ちょっと苦しかったか? なんなら僕たちだけ奇跡的に生きていたっていう設定にするべきだっただろうか? でもそれじゃあおもしろくない。
ばれない冗談ほど面白くないものはないからだ。
「ああ」
「どうして?」
「なぜか生きているんだ。まあご都合主義ってやつ? なんか生きてたんだよ」
「だます気ないでしょ?」
寝ぼけているにも関わらず、彼女はすぐに僕の嘘を見破った。まあ当たり前だろうけど、もう少しだけ引っ張れると思っていた僕もいる。
今回のことからわかったことは一つだけ、慣れないことはしても無駄というわけだ。まあしなければずっと慣れないままなわけだが、それでも恥ずかしいから二度とやりたくない。
なんてことをやっている間に、外は明るくなっていた。
「ご飯でも食べる?」
アルは気を使ってか、静かに僕に尋ねた。
そんなに気を使われなくても、自分の冗談……いや冗談にすらなってなかったけど、ともかく、自分のセンスのなさには気がついているよ!
もちろんご飯は食べるけどね。
彼女は僕を大切に思ってくれている。僕だって、彼女を大切にしたい。でも、そこに葛藤が全くないなんてはずがない。
魔法愛好家とは、魔法が好きな人間のことだ。そんな人間が口先で、心の表面上で何度彼女に協力しようと口にしても……考えても、深層意識の上ではどこか否定する心がある。
僕は思わず、横で寝ているアルの顔を見つめる。それだけで、罪悪感が少しだけ薄れる気がしたからだ。
「……今日まで僕は人から一体どれほど魔法を奪ってきたのだろうね」
罪……それは僕の中にある葛藤だ。
彼女、アルを思う心と、魔法を奪いたくないという心……その二つはまるで正反対でいびつだ。普通の人間ならこの二つで迷うことなどありえないかもしれない。だけど、僕は本当の愛を知らない。アルを愛しているつもりでも、心のどこか奥底ではわからないでいる。
覚悟はとっくに決まっていたはずだ。でもそれなら、僕はどうして彼女に何度も回答を求めたのだろう。自分でも自分の心がわからないでいる。
思えば、アルとの出会いも劇的なものではない。彼女を暴漢から救っただとか、幼馴染だとか、運命的な出会いをしたとかではなく、ただ普通に告白されて付き合ったそれだけ、それなのに、彼女は僕を大切に思ってくれている。――あれ? 僕は彼女とどうやって出会ったんだ?
普通にであったにしても、何も記憶がなさすぎることに僕は気がついた。
「まあいいか」
考えたところで仕方がない。それに、そんなことは関係なく、僕は彼女を救いたいと感じたのだから、魔法を奪うことにも同意した。だったら、悩もうが僕は魔法よりも彼女を選ばなければならない。
僕は考えるのをやめて、ベットから抜け出す。
「……もう朝なの?」
アルが目をこすりながら体を起こす。
まあ、朝といえば朝なわけだが、まだまだ夜ともいえるぐらいに暗い。いわゆる明け方というやつだ。かっこよく言うのであれば黎明、仰々しく言えば払暁とでも言うのだろう。
ともかく、僕はアルに対して返事をしなければならないわけだが、普通に答えても何とも面白みに欠ける。元来僕は冗談を言わないほうであるが、ともかく何でも挑戦というだろう。
「もう朝が来ることはないよ……世界は滅びたからね」
勢いで言ってしまったが、世界が滅びるってなんだよ。
僕は冗談のセンスがないことに悲観しているが、もう引くにも引けない。
「世界が……滅びた!?」
アルは以外にも乗ってきた。昨日の今日であまりにもノリがいい気もするが、ともかく乗ってきたのなら余計に引きくとはできないだろう。さっきまで真剣なことを考えていた自分がどうにも馬鹿らしく感じる。
もしかすると、僕は彼女のそういうところが好きだったのかもしれない。
「うん、残念だけど魔法が暴走してね……幸い誰も死ぬことはなかったけど、朝が来ることはなくなってしまった」
「世界が滅びたのに、人間は生きているの?」
ちょっと苦しかったか? なんなら僕たちだけ奇跡的に生きていたっていう設定にするべきだっただろうか? でもそれじゃあおもしろくない。
ばれない冗談ほど面白くないものはないからだ。
「ああ」
「どうして?」
「なぜか生きているんだ。まあご都合主義ってやつ? なんか生きてたんだよ」
「だます気ないでしょ?」
寝ぼけているにも関わらず、彼女はすぐに僕の嘘を見破った。まあ当たり前だろうけど、もう少しだけ引っ張れると思っていた僕もいる。
今回のことからわかったことは一つだけ、慣れないことはしても無駄というわけだ。まあしなければずっと慣れないままなわけだが、それでも恥ずかしいから二度とやりたくない。
なんてことをやっている間に、外は明るくなっていた。
「ご飯でも食べる?」
アルは気を使ってか、静かに僕に尋ねた。
そんなに気を使われなくても、自分の冗談……いや冗談にすらなってなかったけど、ともかく、自分のセンスのなさには気がついているよ!
もちろんご飯は食べるけどね。
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