不器用な指先

merori

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6年前、忘れられない少女

鈴木小夜

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「しつこいですが…渡辺先生、こればかりは本当に分からないものですよ」



そう言って職員室を後にした高野先生の言葉が、僕の中で未だに残り続けている。

恋をまともにした事がない僕にとって、とても衝撃的な話だったからだ。
幸いなことに、今日は5時間目と6時間目の授業が無かった。慣れていない現実的な恋愛の話によって、今の僕はかなり調子がおかしくなっている。


最近の中学生はこんな早いうちに恋愛をするのか…?
それともこの学校が早いだけなのか…?
下手したら、僕にとって未知の世界であるキスやそれ以上の事もしているのかもしれない。



…ふと、小夜の事を思い出した。


不純と無縁な彼女の容姿と話し方だったが、実は彼氏がいたりそれ以上のことも…
いやいや。こればかりは本人とその周りしか分からないものだ。僕が関与するような事じゃない。

それより、なぜ彼女の事を思い出したのか…自分でもよく分からなかった。



心が慌ただしい僕に落ち着け、落ち着け……と必死に言い聞かせていたら、あっという間に放課後になっていた。




僕ひとりしか居なかった職員室へ、各教室から徐々に先生達が戻ってくる。




「渡辺先生、下校時の指導が始まるので一緒に行きましょう」


そう話しかけてきたのは、まさかの高野先生だった。
その声を聞き、僕の体は反射的にビクッと動いた。



「あっ、は、はい、わかりました」


「……もしかして、5時間目に話したこと引きずってます?」


……的中してますよ、高野先生。


「ま、まぁ…ちょっとだけ気にしていました」


「そうですよね、こんなお盛んな中学校なかなか無いですしね」


「た…確かにお盛んですよねぇ……」



そうじゃないんです、高野先生……。

恋愛経験無い僕には刺激的過ぎる内容だった、ということは隠して高野先生に話を合わせる。



「そんな生徒が大半だと思ってしまうかもしれません。というか、そんな生徒が多いのがウチの学校の現状なんですが……。そうじゃない生徒も、もちろんいますよ」


「そうなんですか…」


【そうじゃない生徒】というワードに僕は少し安心した。


「例えば、ウチのクラスで言うと…鈴木小夜とかはそういった話は聞いたことが一度もないですね」


……鈴木小夜!!
純真無垢でいて欲しい、と思っていた僕の心は高野先生の言葉によって急に満たされた。


「渡辺先生、今日来たばかりですしまだ分からないかもしれませんが…鈴木小夜は理科係なので、これから渡辺先生と話す事が増えていくかもしれません」


「…僕、鈴木小夜さんと昼休みに話しました。授業の準備はありますか、と僕のところに来てくれました」


昼休みに彼女が来てくれた事を話すと高野先生は「おっ!」と言い、元々明るい表情の彼だが、その表情は僕の話を聞いて益々明るくなった。


「鈴木さん、この学校に相応しくない位にいい子なんです。礼儀正しい上に成績も学年トップクラスでして…赴任初日の渡辺先生のもとに訪ねるくらいに」


「そ、そうなんですね。確かに凄く礼儀正しい生徒でした」



今日彼女に出会い、その時に感じていた事を僕は必死に隠し…高野先生との話を続ける。



「さて、そろそろ校庭に向かいましょう。下校指導に遅れちゃいます」



高野先生はそう言い、僕を校舎から校庭に連れて行ってくれた。

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