ラブイズホラー ~痛めて菜抽子さん~

風浦らの

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正攻法では無理

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 私には学歴がある。
    お金も株で一生分は稼いだ。
    容姿もその辺のアイドルよりも優れている。
    この23年間生きてきて、手に入れられなかった物など無いと言っても過言ではない。


 ──ただ一つを除いては──

 ■■■■



「私と付き合ってください!」
「ごめんなさい。俺はあなたとお付き合いする事はできません。直ぐに俺なんかより素敵な人が現れると思うので、俺の事は忘れてください」

 この日、私は溢れた思いを打ち明け見事に玉砕された。誠心誠意差し伸べたその右手は、虚しく空振りに終わった。
    私の好きな人。世界で1番大切な、その相手というのが──、

「やっぱり私では駄目なの?    私は本当に瑠二るに君が大好きなの!」
「あの……これで13回目なんですけど、そろそろ諦めて頂けませんか……?」

 そう──、
    私はこの半年間で、実に13回も瑠二君に振られていたのだ。それでも溢れる思いは抑えきれず、振られても振られても尚溢れ出して来る想いは、次第に強く激しくなっていた。

「そもそも俺は、あなたの名前すら知らないんですけど……」
「え!?    な、名前……言ってなかった。私ってば本当にドジっ娘ね!    申し遅れたわ。私の名前は川井菜抽子かわいなぬこよ。これから宜しくね瑠二君!」
「あの、ツッコミどころが多すぎるんですけど、ツッコンでもいいんでしょうか……」
「突っ込む!?    イキナリ突っ込むだなんて……い、いいわ。初めてだけど、瑠二君なら許せるわ!    さぁ、思う存分突っ込んで頂戴!」
「ツッコムの意味履き違えてませんよねぇ!?    そして名前申し遅れすぎですから!    ドジっ娘ってレベルじゃないですよ!    それに最後のこれから宜しくねって何ですか?     また会いに来るつもりなんですか?    たった今諦めてくださいって言いましたよね!?    思考回路がショートしてるんですか!?    あなたはセーラー〇ーンですか!?    違いますよね!」

 息を切らし、思う存分激しく突っ込んだ瑠二君。

    あぁ、これが愛し合うってことなのね!

「イクぅぅぅ!!」
「もぅ、早くどっか行ってくださいよ!    ……ったく。俺も忙しいんで、この辺で帰りますね。もう俺に付き纏わないで下さい。それでは、さようなら菜抽子さん」

 とまぁ彼の気を引くために、この半年間あの手この手で気を引こうとしてきた。今回は捻りを加えて散々ふざけてみたものの、彼の気持ちは一向にこちらに向いてはこない。

 彼は私に別れを告げると、背を向け歩き出す。そして、1度も振り返ることなく私の前からその姿を消したのだった。

    その光景に、私は悔しさのあまり思わず唇を噛んだ。

 私にも分かっていた。
    また振られたのだという事が。
    私とてそこまで脳内お花畑という訳では無い。

 血の味がする。
    悔しい。悲しい。何故、瑠二君は私に振り向いてくれないのだろうか。
    私は頭もいいし見た目もいい。お金だってある。他に何が足りないと言うのか。

    瑠二君。あなたは一体何を望んでいるの?    分からないわ。でも……

 それでもただ一つだけ嬉しい事があった。
 最後に、瑠二君が私の名前を呼んでくれた事──、

菜抽子なぬこさん』

 その言葉が頭の中でループする。
    その一言で私の想いはまた溢れ出す。


    絶対に諦めない。


 絶対に──、


 諦めないんだから。


 もう正攻法では無理なのね。わかったわ。あなたが望むのならば、私も変わらなければならないみたい。
    いいわ。待ってて瑠二君。すぐに私の物にしてあげるわ。


 すぐに。


 うふふふ。



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