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謎の女
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■■■■
小田真紀事件から4日経っても、警察からはなんの連絡も入ってこなかった。
逃走を考えた事は一度も無い。
それをしてしまえば、私は何のために小田真紀を刺したのか分からなくなるからだ。
“私は愛する瑠二君の側に居たい”
ただそれだけが望みなのだ。
遠く離れてしまえば、人を傷つけたという事実だけが残ってしまうだろう。
── 一緒に居たい ──
そんな思いから私の部屋は、スマホのカメラで撮影した写真を元に、現像し引き伸ばした瑠二君ポスターや、プリントアウトしたTシャツ、瑠二君の唇が印刷されたマグカップと、部屋中瑠二君グッズで溢れかえっていた。そしてベッドの枕元にはお腹を糸で縫い合わされた熊五郎がちょこんと置いてある。
瑠二君と熊五郎さえ居れば私は幸せになれるのだ。
マグカップに注がれたコーヒーを啜り、一息ついた。
あれから瑠二君は、小田真紀の入院する病院に毎日通っていた。あろう事か、遠ざける筈が逆に二人を引き合わせることとなってしまったのだ。それも瑠二君自ら足を運ぶという結果に。
正直、今回の作戦はあまり上手くいったとは言い難い。このままでは瑠二君に振り向いてもらうのは夢のまた夢。
しかし、どうやったら彼に振り向いて貰えるのだろうか?それが未だに分からなかった。
全てを兼ね備えてもダメなのか。
一体何が足りないのか。
そしてあの時は、何故私が泣いているのを優しく受け止めてくれたのか。
分からない……分からないわ……
■■■■
この三日間、私は瑠二君の家に通っては尾行するといった生活を繰り返していた。家の中に隠しカメラを仕掛けて、生活を共有しようと考えたのだが、あれから窓は一度も空いてはいなかった。きっと空けたら空きっぱなし、閉めたら閉めっぱなしなのだろう。それには少しガッカリしたものだ。しかし、代わりにポストを漁る事を始めた。もっと彼の事が知りたい。彼の情報を集めたい。と、毎日欠かさずチェックした。
携帯の請求明細。探偵を頼らなくても、これがあれば電話番号など容易く知ることが出来る。親展と書かれた封筒を開ける時のドキドキ感もまた堪らない。年齢、血液型、趣味と色々知ることが出来た。そして彼は今、就職活動中である事も分かった。
楽しい……楽しいわ! 暗証番号を1から順番に試した甲斐があったわ!
当然この日も私は瑠二君のポストを開けて、中の郵便物を物色していた。
と、その時。
ガチャりと玄関の開く音が聞こえてきた。
この集合ポストからはこちらは見えない、が、こちらからもどの部屋の住人が出てきたのかは分からない。
私は慌ててポストを閉めて、何食わぬ顔でポストから距離を取った。
一応どんな人が出てきたの確認する必要があるわね。どれどれ──、
──ッえ!?
出てきた人を確認した私は驚いた。なんとアパートから出てきたのは、以前瑠二君の家に忍び込んだ時に、合鍵を使って部屋に入ってきた女。そして、瑠二君とツーショットで写真を撮り、尚且つ瑠二君が机にしまい込んでたという……私にとってまさに──、
──最大の敵ッッ──
やっと見つけた。
必ずまたここに来ると思っていたわ。
今ハッキリと分かったの。お前さえ……お前さえいなければ瑠二君は、
「私の物になるのにッッ」
そうだ、瑠二君が振り向いてくれない理由は、この女がいるからに違いないッ!それしか考えられないッ!この女さえ消えて居なくなれば──
■■■■
私は部屋から出た女を尾行していた。ここで見失ったら、今度はいつ会えるかわからない。最低でも家を突き止める必要があった。
尾行すること、電車を乗り継ぎ30分。彼女はそこで電車を降りた。
その間、私はどうやってこの女を瑠二君から遠ざけようか考えていた。一度小田真紀をこの手で刺している為、もうこれ以上自分の手を汚す事は避けたい。
──と、駅を降りた女が誰かと会っている。予め待ち合わせをしていたのだろうか?しかもその相手というのが……
「男!? あの女、瑠二君という存在がありながら別の男と会うなんて……」
なんと謎の女は、降りた駅で男と待ち合わせをして、そのまま仲良く手を繋いで一緒に家に帰るようだ。
私は気づかれないように二人を尾行して、二人が目指すアパートを突き止め、部屋の明かりが付くのを確認した後、今日の目的は達成されたと判断。一晩じっくり作戦を練り、必ずあの女を瑠二君から引きはがすと心に誓った。
■■■■
家に帰るといつものように、特大瑠二君ポスターにキスをし、瑠二君クッションを抱いて寛ぐ。そして今日の出来事を振り返ってみる。
あの女、名前はなんて言うのかしら?瑠二君の家の合鍵を持っていたということは、彼女という存在なのかしら?それに、今日駅で待ち合わせしていた男。かなり親しげだったわ……だとしたらあの女は浮気しているという事になるわね……
なんて汚い女なの? ドブで産まれた娼婦めが。絶対に私の手でドブに送り返してやるわ。必ず、
女としての人生を──、
「終わらせてやるッッ!!」
小田真紀事件から4日経っても、警察からはなんの連絡も入ってこなかった。
逃走を考えた事は一度も無い。
それをしてしまえば、私は何のために小田真紀を刺したのか分からなくなるからだ。
“私は愛する瑠二君の側に居たい”
ただそれだけが望みなのだ。
遠く離れてしまえば、人を傷つけたという事実だけが残ってしまうだろう。
── 一緒に居たい ──
そんな思いから私の部屋は、スマホのカメラで撮影した写真を元に、現像し引き伸ばした瑠二君ポスターや、プリントアウトしたTシャツ、瑠二君の唇が印刷されたマグカップと、部屋中瑠二君グッズで溢れかえっていた。そしてベッドの枕元にはお腹を糸で縫い合わされた熊五郎がちょこんと置いてある。
瑠二君と熊五郎さえ居れば私は幸せになれるのだ。
マグカップに注がれたコーヒーを啜り、一息ついた。
あれから瑠二君は、小田真紀の入院する病院に毎日通っていた。あろう事か、遠ざける筈が逆に二人を引き合わせることとなってしまったのだ。それも瑠二君自ら足を運ぶという結果に。
正直、今回の作戦はあまり上手くいったとは言い難い。このままでは瑠二君に振り向いてもらうのは夢のまた夢。
しかし、どうやったら彼に振り向いて貰えるのだろうか?それが未だに分からなかった。
全てを兼ね備えてもダメなのか。
一体何が足りないのか。
そしてあの時は、何故私が泣いているのを優しく受け止めてくれたのか。
分からない……分からないわ……
■■■■
この三日間、私は瑠二君の家に通っては尾行するといった生活を繰り返していた。家の中に隠しカメラを仕掛けて、生活を共有しようと考えたのだが、あれから窓は一度も空いてはいなかった。きっと空けたら空きっぱなし、閉めたら閉めっぱなしなのだろう。それには少しガッカリしたものだ。しかし、代わりにポストを漁る事を始めた。もっと彼の事が知りたい。彼の情報を集めたい。と、毎日欠かさずチェックした。
携帯の請求明細。探偵を頼らなくても、これがあれば電話番号など容易く知ることが出来る。親展と書かれた封筒を開ける時のドキドキ感もまた堪らない。年齢、血液型、趣味と色々知ることが出来た。そして彼は今、就職活動中である事も分かった。
楽しい……楽しいわ! 暗証番号を1から順番に試した甲斐があったわ!
当然この日も私は瑠二君のポストを開けて、中の郵便物を物色していた。
と、その時。
ガチャりと玄関の開く音が聞こえてきた。
この集合ポストからはこちらは見えない、が、こちらからもどの部屋の住人が出てきたのかは分からない。
私は慌ててポストを閉めて、何食わぬ顔でポストから距離を取った。
一応どんな人が出てきたの確認する必要があるわね。どれどれ──、
──ッえ!?
出てきた人を確認した私は驚いた。なんとアパートから出てきたのは、以前瑠二君の家に忍び込んだ時に、合鍵を使って部屋に入ってきた女。そして、瑠二君とツーショットで写真を撮り、尚且つ瑠二君が机にしまい込んでたという……私にとってまさに──、
──最大の敵ッッ──
やっと見つけた。
必ずまたここに来ると思っていたわ。
今ハッキリと分かったの。お前さえ……お前さえいなければ瑠二君は、
「私の物になるのにッッ」
そうだ、瑠二君が振り向いてくれない理由は、この女がいるからに違いないッ!それしか考えられないッ!この女さえ消えて居なくなれば──
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私は部屋から出た女を尾行していた。ここで見失ったら、今度はいつ会えるかわからない。最低でも家を突き止める必要があった。
尾行すること、電車を乗り継ぎ30分。彼女はそこで電車を降りた。
その間、私はどうやってこの女を瑠二君から遠ざけようか考えていた。一度小田真紀をこの手で刺している為、もうこれ以上自分の手を汚す事は避けたい。
──と、駅を降りた女が誰かと会っている。予め待ち合わせをしていたのだろうか?しかもその相手というのが……
「男!? あの女、瑠二君という存在がありながら別の男と会うなんて……」
なんと謎の女は、降りた駅で男と待ち合わせをして、そのまま仲良く手を繋いで一緒に家に帰るようだ。
私は気づかれないように二人を尾行して、二人が目指すアパートを突き止め、部屋の明かりが付くのを確認した後、今日の目的は達成されたと判断。一晩じっくり作戦を練り、必ずあの女を瑠二君から引きはがすと心に誓った。
■■■■
家に帰るといつものように、特大瑠二君ポスターにキスをし、瑠二君クッションを抱いて寛ぐ。そして今日の出来事を振り返ってみる。
あの女、名前はなんて言うのかしら?瑠二君の家の合鍵を持っていたということは、彼女という存在なのかしら?それに、今日駅で待ち合わせしていた男。かなり親しげだったわ……だとしたらあの女は浮気しているという事になるわね……
なんて汚い女なの? ドブで産まれた娼婦めが。絶対に私の手でドブに送り返してやるわ。必ず、
女としての人生を──、
「終わらせてやるッッ!!」
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