ラブイズホラー ~痛めて菜抽子さん~

風浦らの

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愛に比べたら金なんて

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 あれから二日、私は謎の女を監視していた。女は瑠二君の家に行くでも無く、ただ家と学校の行き来を繰り返す毎日。

 名前は『伊奈栄いなえ』。友達との会話から知り得た情報だ。しかし、まだ苗字は分かっていない。家にまで行ってみても、肝心の表札が無いのだ。ポストにも無く、部屋番が刺さっているだけ。きっとズボラな性格なのだろう。浮気女らしいと言えばそれまでなのだが。

 女を貶める作戦は既に考えてある。名前がどうとか、そんな事はもうどうでもいいのだ。女の行動パターンと、この街の監視カメラ。それさえ分かればあとは何でも良かった。

 伊奈栄の住む駅の近くには、決まって数人の浮浪者が寝ている。本来ならば見向きもせず、寧ろ毛嫌いしてしまうその存在。だが今回だけは彼等に用があった。
    私はその地べたに寝転がる男達に近づき、話しかける。

「割のいい仕事があるのだけれど」

 私の呼びかけに、「あぁ?」と薄く目を開け、低く掠れ面倒臭そうな声を出す男達。近くで見ると更に強烈だ。
    肌はくすみ、服はボロ雑巾。
    黄ばんだ歯があちこち抜け落ち、髪はボサボサ。
    そして臭いがまた衝撃的だった。
    しかし私は怯まない。寧ろ心のどこかで、ほくそ笑んでさえいた。

 私はそんな男達の目の前に、バサッと紙を投げ置いた。その紙の束、ざっと30万円。

 突然目の前に現れた現金に、呆気に取られる男達。ソロソロと集まり出し、恐る恐るその金を手にする。

「引き受けてくれるなら、このお金は前払いよ。成功報酬はこの倍出すわ。どう?     やってくれるかしら?」

 暫くは見た事がないであろう大金に、暫し言葉を失う浮浪者達。しかしそのちんもくはすぐに破られる。

「は……話を聞こうじゃないか」

 その言葉に自然と、二マリと口角が上がる。

「内容は簡単。それもとっても楽しいのよ。やってほしい事はたったの二つ」

 息を飲み、食い入るように話を聞く浮浪者達。私はその男達の前に一台のスマホを置いた。

 このスマホは、その辺の中古ショップで買ってきた、何の変哲もないタダのスマホだ。勿論、SIM等入ってはいない。


「まず一つ目は、このスマホを使って動画を撮影する事」
「動画?たったそれだけか?」

 ふふふ。簡単でしょ。

「そして二つ目が……」

 私は置いたスマホを操作し1枚の写真を呼び出し、人差し指で押さえつける。

「この女をレイプする事──、」

 その一言に流石にザワつく男達。勿論やる事は犯罪だ。この場にいる誰もが分かりきった事。しかし、性への欲求。目の前の大金。成功報酬。その全てが彼等を惑わせた。

 ──結果──

「お、俺がやる!」
「いや、俺が!」
「俺の仕事だ!」

   醜く奪い合う始末。


    ふふふ。なんて醜いの。いい。いいわあなた達!


「仲良く協力してやって頂戴。報酬は弾むわ」

 チラリと更に懐から札束を覗かせると、ゴクリと息を飲みすぐにまた静かになった。


 コイツらがあの女を──、


 ふっ……ふふ……ふはははっ! 
 あはははははははははははははははッッ!!


 傑作だわ!    こんなのにヤられたんじゃ、あの女もおしまいね。これで2度と瑠二君の前に現れる事は無くなるでしょうね。汚された体で、瑠二君が受け入れてくれる筈ないもの。彼は美しいの。住んでいる世界が違うのよ。思い知りなさい。ドブネズミめ。
 ドブネズミはドブで交尾がお似合いだわッ!

 想像しただけで笑いが止まらなかった。

 私はその後、彼等に手順を説明し、その日はその場を立ち去った。


 ■■■■


 次の日の朝、私は始発でその駅に来ていた。そこから10分ほど離れた公園のベンチの下からスマホを拾い上げ、代わりに大金の入った紙袋を置く。口止め料の意味合いもあるため、少し多目にお金は包んだ。お金等、愛に比べたらなんの価値もない。こんな事に出し惜しみをする私では無い。


 スマホを持ち、私は防犯カメラが無いであろうルートを選択し再び駅へと戻り、何事も無かったかのように自分の住む街へと帰っていった。


    ■■■■

 家に帰って来ると、早速画像のチェックをする。そこには女の後をつける所から始まり、暗がりに引きずり込む所、そしてその先までもが生々しく映し出されていた。


 最初は気分よく観ていたのだが、何度も見ているうちに気持ち悪くなり、吐き気と胸糞悪い気分が襲ってくる。


 流石にやりすぎたかしら……この子、この後どうなっちゃうのかな……

 でも……

 でもあなたが悪いのよ。男がいながら、瑠二君にまで手を出すからいけないのよ。当たり前の事じゃない。そんなに男が好きなら寧ろ本望でしょ?
 その汚れた体で、2度と瑠二君の前に姿を現さないで頂戴ね。あなたに普通の感性があるなら、無理よね?

    あはははははははッ!

 やったわ瑠二君。心を弄ぶ悪女を私が退治したわ!    私が!    私が!   この私がッ!!
 これで邪魔者は居ない。やっと瑠二君が私のモノにッ!
 待ってて瑠二君。いま、会いに行くわ。


    ──愛される準備は出来てるかしら?──








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