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前日の悲劇
しおりを挟むそうと決まれば善は急げだ。早速パソコンと向かい合い、チケットの手配を済ませる。必要な物は向こうで全て揃えるとして、最短で予約できるのは──、
【明日の15時発のバンコク行き】
これにしましょう。
その日の夜の瑠二君は、機嫌がいいと言えば語弊はあるが、少し穏やかだった。私が隣に寄り添うように寝るのを、顔を歪めるでも無く振り払うでも無く、私を傍に置いてくれた。
まるで本当に恋人同士になったみたいだわ。明日いよいよ愛の浪漫飛行よッ!
こんなに素直な瑠二君を見るのは初めてだった。
思い返せば、拒絶されつき離され続けた半年間。こんな日が来るなんて、まるで夢のようだ。
込み上げてきた感情に思わず目が潤むと、同時に私の下半身もジワリと濡れた。
「瑠二君……愛し合いましょう」
私は耳元で囁き、覆いかぶさる様に彼の自由を奪う。
しかし瑠二君が手を動かす事でジャラリと響くチェーンの音に少々興を削がれてしまった。
今日はとことん愛し合いたいのに!
私はポケットから鍵を取り出し、手錠を外してあげる。
「今日は瑠二君が動いて頂戴」
「俺が、ですか? なんで俺が……」
こんなにも可愛い女の子とセックス出来るのだ。愛があるとか無いとか関係なしに、男なら嬉しくて当然だ。
それに私は瑠二君に"される"という事に憧れていた。これは女の子としてのささやかな夢である。
私は着ていた服を1枚1枚丁寧に脱いでいく。そして最後の下着を脱ぎ終わると、両手を広げて瑠二君に合図した。
「来て……」
「えっ……」
「旅行が終わるまでは私の物よ。断ったらどうなるか忘れたのかしら?」
瑠二君が小さく言葉を漏らし、仕方なく服を脱ぎだそうとしたその時だった──、
ジリリリリリリリリリリリリッッッ!!!──
突然、けだたましい防災ベルの音が鳴り響き渡った!
これは一体何事か!?
「ま、まさか火事かしら!? 私ちょっと様子を見てくるわ! 危ないから瑠二君はここに居てね」
私は上着を1枚羽織り、リビングに来ると辺りを注意深く見渡した。
「この家が火事って訳じゃ、無さそうね。という事は──」
他の人の部屋が燃えているのだろうか? いづれにせよ早くここから脱出しなくてはならない。私は外の様子を見るために、玄関に足を運んだ。そして、ゆっくりとドアを開いてみる。もしかしたら扉の外は、既に煙で一杯になってしまってい、る──、
──ッッッ!!!!
僅かに開かれたドアの隙間に、強引に何者かが足を差し込んできた!!
「えっっ!?」
その僅かな隙間をこじ開けるように、次に見えてきたのは……鈍く光るも鋭い──、
「ほ、包丁っ!?」
私は恐怖のあまり思わずドアから手を離し、後ろに下がってしまった。その結果、まずいことにその訪問者の侵入を許してしまう事となってしまったのである。
開かれたドアから私達の愛の巣に足を踏み入れたのは……
なんで……なんでコイツがここに居るの? なんで、なんで、なんでぇ!?
「こんばんわ『川井菜抽子』さん」
オダマキィィィィィィィ!!!!
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