桜と幽霊の話

宵月

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桜と幽霊の話

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その少年は不思議な子だった。

冬場に地面に倒れているかと思えば突然飛び上がって来るし、ここは御神木…悪霊が溜まる場所だからと言っているのに何度も来るし。

御神木、というのももう間違いだ。

悪霊の木と呼ばれてる。

社ももうボロボロだ。

いつだっただろうか。

桜に鮮やかな色がついた時があった。

村の人達はそれを見て死体が埋まっているんだと言った。

どっかの本にあったわよね、なんて思っていたのに。

それをみんなは信じて1人にされた。

なのに少年はそれを言っても、ここに来るのをやめなかった。





2月という寒い日中。

目を覚ませば外はまた少し空気が変わっていて。

また生きにくくなるなぁと笑った。

枝の先についた芽の数を数える。

誰かがバスバス切っていくから芽の数が去年よりも減ったじゃないの。

こんな下手な切り方するなら剪定屋にでも頼みなさいよ。

いくつか、切り落とされた枝の1部から黒くなってしまっているのがある。

いつかその1部は崩れていくだろう。

「あーもう!冬の間に沢山の枝切った馬鹿は誰よ!」

「何怒ってるの。お姉さん。」

すると、少し前に会った少年が視界に入る。

もちろん私は芽の数を数えていたおかげで枝の上だ。

「少年…なんでまだいるの。」

「芽が出てきたからお姉さんに会えると思って。」

寒そうにしながら。

モコモコのコートにマフラーを限界までぐるぐる巻きにして手袋もしている。

「あんたねぇ…寒いんでしょ。」

「そりゃ…そうですね…寒いです。」

「少年、いつの間に敬語なんて使えるようになったのよ。」

「そりゃ僕も大人になりますし?」

「そんなまだ髭も生えてないような少年が何言ってんの。」

木の枝から飛び降りて少年を小突く。

少年は、あ、と言ってまた私に、咲く前の雑草であろうものを連れてきた。

ヒメオドリコソウだ。

「…はぁ…懲りないよね少年。また秋までの間ずっと連れてくる気?」

「もちろん。持ってくるよ。」

「あのねぇ…桜の根元は危険だって知ってる?」

「なんで?」

「草木が枯れていくって。」

少年は迷ったような素振りをしながら私の足元にそのヒメオドリコソウを植えた。

「じゃあやっぱり持ってこなきゃ。」

「なんでそうなるのよ!」

「お姉さんが寂しくないように。」

花を植えて少年はニコッと笑った。

そんな寂しくなんてないのに。

「大人ぶってる暇あるなら勉強しなさい少年。」

呆れるように私はニコリと笑ってそう言った。



でもいつの間にかそれが楽しみで、桜の下でずっと待ってた。

着物が変われば綺麗ですねと笑ってくれるし今の小学生ってませてんな…とか思いながら。

でも少年は何も知らないじゃないか。

まだ純粋で、知らなくてもいいじゃないか。

こんな汚れた事を知ることもないじゃないか。

そんな事を少し妬んだ。
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