桜と幽霊の話

宵月

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桜と幽霊の話

3.

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夏。

暑い中少年は来た。

「お姉さん暑いのによくここにいるね。」

そう呆れながら。

「そう思うんなら来るんじゃないわよ。ほら、帰りなさい」

「やだね。今日はこっちに涼みに来たんだから。」

「そう変わらないわよ気温なんて。」

日差しが直に来ない分まだ涼しく感じるだろうが私にとってはそう変わらない。

「あと、お姉さんに聞きたいことがあって。」

「は?なによ。」

珍しく真剣そうな表情をしてそんな事を言うもんだから私もつい真面目に聞こうとした。

「お姉さんって桜の妖精なの?」

「は?」

あまりにも聡い子だと思ったのも束の間で。

予想は外れたようだった。

真面目に聞こうとした私が馬鹿だったと私は頭を抱えた。

「あのねぇ、妖精なんてものじゃないのよ。」

そう、そんな綺麗なものじゃない。

「言ったでしょ?守り人みたいなものだって。何を思って。」

「お姉さん、冬には居なかったから。」

少年は私の話を遮ってそう言った。

その表情は少し寂しげだった。

「ただ、何となく。」

その一言に私は何かを思った。

でもそれは言葉になることも無いまま消えた。

「まぁ。そうね。桜の咲く時期にだけここに居るわ。なんせ冬の間は手入れなんて要らないもの。」

適当な言葉だった。

なのに少年は深いことも聞かずに「じゃあ、冬の間はいないの?」と聞いた。

「冬の間はここにはいないわ。」

私は冬の間は寝なくちゃ行けないから。

それは言わないまま。

少年は疑問が解決したのかそっか、と言って帰っていった。

「…なんなのよあの少年。」

そしてその冬の間は静かだった。
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