桜と幽霊の話

宵月

文字の大きさ
上 下
4 / 5
桜と幽霊の話

4.

しおりを挟む
目を覚ました。

芽を数えるのが日課…年課?になっていた。

今年はいいだろと手をつけられなかったのか脇芽も多く葉が綺麗に出るだろうと思えた。

でも今日は、少年は居なかった。

それだけなのに寂しく思えた。

私は木に座って寄りかかりその少年を待つけど待っても待っても来なかった。

1日、というのはこんなに長いものだっただろうか。

そして桜の蕾がつき始めた頃。

初めて、来た。

「暇そうだね、お姉さん。」

またその余裕そうな表情で。

「少年、本当に冬の間来なかったの。」

「寒いし、僕の家族にここへは行くなって言われてたから冬の間だけはね。」

「はぁ…だろうねぇ…ここの木は悪いのを溜め込んでるって言うからね。」

「あっそれ聞いた。お姉さんもその1人?」

サラッと聞かれたその質問に、私は答えることが出来なかった。

「…まぁいいや。お姉さん、僕やっと中学生になるんだ。」

「中学生?へぇ、じゃあ学校の制服姿とか見れるのかな?」

「お姉さんと並んだら学生の恋人っぽく見えるといいね。僕の制服、学ランだから。」

笑顔で少年はそう言って笑った。

「少年は少年のままだからなぁ…私学生って年じゃないし。」

「知ってるけどさ。」

少年は変わらない。

変わったところと言えば…少し性格が悪くなっただろうか。

それでも相変わらず、そのむしり取ったであろう根っこもそのままな花は必ず持っていた。

今年は暖かかったのだろうか。

持っていた花はカタバミだ。

小さな小さな、花がこてんと、首を傾げている。

どうして私はここへ?というように。

「…置いときなさい。円匙持ってくるわ。」

花はいつものように自分の根元に植えた。

それだけで少し暖かい気持ちになった。

日差しも弱いくせに。

しおりを挟む

処理中です...