もし明日、死ねるなら

宵月

文字の大きさ
上 下
2 / 9

宣告と見える終わり

しおりを挟む
「ねぇ。」

「…。」

「ねーぇってば。」

「…。」

「悲しい?」

「いや別に。」

「なら怒ってる?」

「怒る気にもなれないというか。」

金色の髪に瞳は似合わない茶色。

毛先がピンクがかってる。

紛れもなく少年ではありえない人間ではないなにかだ。

ふわふわとした髪が特徴の少年が突如背後に現れてはそう言い放った。

「珍しいね、そんなにサラッと受け入れる人、僕初めて。僕が死神だって言っても信じるかい?」

「…まぁ、うん、そうですか。」

今、何もかも捨てて飛び降りようとしてた、なんて言えない。

なんせここは2階だ。

死にはしない。

もしここで飛び降りても下のボロボロに錆びてところどころに腐食の跡のあるトタン屋根をぶち抜けるのかどうか。

俺の命より先に肋骨の方が逝きそうだが。

「明日、までむしろ生きるんだ。」

「そうだね。君は、周藤 京太は明日までは生きるよ。」

「どうして、僕に伝えたんですか。」

飛び降りても、無駄なのだ。

そう言われた気がして。

「どうしてってそうだからさ。」

「そう、とは。」

「だってほら、"そう"だろう?」

その返答はあまりにも、僕を納得させるには十分だった。

「そう、ですか。」

「うん、そうなのさ。」

あまりにも周りから見たら馬鹿みたいなやり取りだろう。

ただ、死ぬ運命だった。

表されたのはその一言で片付く。

1人ため息を吐いて低い窓枠から足を外す。

「明日には死ぬんだよな?」

「うん、明日に死ぬよ。理解が早いようで何よりだ。」

彼の目は、あまりにも純粋に暗い。

だから疑う気にもなれなかった。

「君は何をする?これは、僕からの猶予さ。」

不敵に笑う少年は、あまりにも未熟な口元をしている。
しおりを挟む

処理中です...