破滅確定の悪役令嬢ですが、魅惑の女王になりました。

専業プウタ

文字の大きさ
32 / 35

32.ルシアは本当の悪女だ。

しおりを挟む
「本当に無礼な方ですね。しっかりと国を通じて抗議しますから」

 私は必死に力を込めネイエスが脱いだ服を彼に押し付け部屋の外に押し出した。

 その途端、止めどなく涙が溢れてきて床に座り込む。

 ルシアは本当の悪女だ。
 婚約者がいながら浮気も不倫もしていた。
 ただでさえ男性不信なのに、軽薄な男が私の恋人のように寄ってくる。

 レオ・ステランと通じだのはなぜだろう。
 スグラ王国を陥れる手段として、膿であるステラン公爵家の情報を抜いて間者のようにローラン王国に流していたのかもしれない。

 (不倫する最低男にはまって、国を陥れる馬鹿女じゃん⋯⋯)

「人の人生を引き継ぐなんて、無理だよ⋯⋯」
 女王になると決めた時は目標ができて胸が高鳴った。

 それなのに、この体の主が過去にしてきた事を考えると恐怖で震えた。
 隣国の王太子に、自国の公爵令息⋯⋯おそらくルシアの本命はネイエス・ローランだ。

 彼が現れてから体の反応がおかしかった。

 他国の王太子と通じて、自国の有力貴族の息子を拐かしていた。

「ルシアが反逆者じゃん⋯⋯この国をめちゃくちゃにして、自分の好きな男とくっつきたかっただけだ⋯⋯クソバカ女」
 
 国外追放になって晴々した顔をしていたルシアを気高い女だと勝手に思っていた。本当は自国の機密情報をごっそり持って、ネイエスの元に行く気だったのだろう。

 ノックがして、震える声で返事をするとミカエルが部屋の中に入って来た。
 しゃがみ込んで泣いている私を見て、彼は慌てて扉を閉めた。

「大丈夫? 何かされた?」
「違う⋯⋯私がしてたの。私が不倫をしてたの」

 正直、不倫をしていたなんて事実を自分だけでは抱えられなかった。
よく考えれば、ミカエルはネイエスとは腹違いの兄弟だ。
(伝えちゃまずかった? 墓まで持っていく案件だった?)

「えっと、少し落ち着こうか。不倫をしていたのはルシアとネイエス・ローランなのかな?」
 ミカエルは私を立ち上がらせ、ソファーに座らせてじっと目を見つめながら聞いてくる。
 婚約者だった私が浮気どころか不倫までしていたのに随分落ち着いている。

「そうなの⋯⋯アルベルト様にも、言った方が良いよね。私がお兄様と不倫していたこと⋯⋯」
 ミカエルに教えたのだから、ネイエスと兄弟のアルベルト様には教えといた方が良い気がしてきた。

「もし、その⋯⋯ネイエス王太子殿下とルシアの関係が本当なら、絶対に誰にも言わない方が良いよ」
「そうなんだ⋯⋯じゃあ、今聞いたことは忘れてくれる?」

「いや、もしその話が本当なら非常に不味いことになる。対策をとっておいた方が良い」

 闇堕ちしたり、頼りなく不安定に見えたミカエルが頼もしく見える。

「婚約者だった女に浮気も不倫もされて、よく落ち着いていられるね。もっと、ルシアに首輪をつけて管理しておかなきゃダメでしょ」

「ルシア⋯⋯動揺して言っていることがめちゃくちゃだよ。君が男女平等が良いって言ってた癖に、今度は首輪って⋯⋯それに、浮気も不倫もしてたのは君じゃないんじゃない?」

 私はミカエルの言葉に一瞬で涙が止まった。

「私の正体に気づいてる?」
「今、分かった⋯⋯君は異世界からルシアの体に入った人だよね」

 信じられない。
 私にとってここは乙女ゲームの世界だった。
 実は橘茉莉花の世界と通じていると言うことだ。

「どうして分かったの?」
「だって⋯⋯あれだけ、カイロス国王の不貞行為を批判していて、自分は不倫していたとかおかしいでしょ。それ以外にもルシアと君は違い過ぎる。スグラ王国では3年前にも、異世界から来たと主張する方がいたことがあったんだ」

「その方はどこに?」
「1年したら取り憑かれた人間は元の人格に戻っていたから元の世界に戻ったんだと思う」
 もしかしたら、乙女ゲーム『誘惑の悪女』はその方が作ったゲームかもしれない。

「私も、戻れるの? 戻りたい。戻って自分の人生を生きたいの。本当の私は死んでる可能性も高いし、植物状態になっているかもしれない。それでも構わない茉莉花としての人生を送りたい」

「マリカ? 君の名前なんだね。戻れるかどうかは全く分からないんだ。該当の人物も1年間の記憶はないらしい⋯⋯それに、僕は君にここにいて欲しい」

 私のことを優しく抱きしめながら、ミカエルが囁く。

「なんで? 本物のルシアが好きだったんじゃないの? 彼女に戻って来て欲しいとは思わないの」

「わからない、何でだろう。君が言ってた通り、ルシアへの感情は性欲の勘違いだったのかも⋯⋯僕のマリカへの感情は愛しい、守りたい、自分から離れるのは憎らしいだよ」
 
 最後の「憎らしい」という言葉に顔が引き攣ってしまった。
彼が闇堕ちした時の姿を思い出すだけで身震いがする。

「私が本当のルシアじゃない事、みんなに言った方が良いかな?」
「それは絶対秘密にしないと⋯⋯実は1年間、異世界の人間に取り憑かれたと言ていたのは母上なんだ⋯⋯王妃である母上がそんな不安定な精神状態だとバレないように王室のトップシークレットになった」

 エミリアン王妃におそらく橘茉莉花の世界の人間が憑依していたと言うことだ。
 確かに王妃に取り憑かれるような人間を据えていたなんて明かせるものではない。


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

処理中です...