異世界を旅する、最強の家の物語。

松井すき焼き

文字の大きさ
1 / 2

プロローグ?

しおりを挟む

その日ジャントルは空腹で喘いでいた。
三日何も食べていない。砂漠のど真ん中で盗賊に会い、荷物も水もすべて取られてしまった。
もう死ぬしかない。
どうしても生きたいと、一歩一歩歩いていた。
激しい灼熱の地獄。
汗で体が干上がりそうだ。水が欲しい。激しいのどの渇きに、遠くに湖がある幻覚が見えてくる。
ああ、そこに湖が。
ジャントルは手を伸ばし、そのまま熱い砂の上に倒れこんだ。

「あの大丈夫ですか?」

間の抜けた声。
ジャントルは顔を上げると、そこには少年の姿があった。東洋人なのか、黒い髪と黒い瞳のんっぺりとした顔立ちの少年が、ジャントルを見下ろしている。

「み、水をくれ」
ひりつく喉で、なんとかジャントルはそれだけを言う。
「よかったら、家の中にどうぞ。ここ砂漠のど真ん中で、暑いですし」
「は?」
ジャントルは目を見開く。
少年の後ろにはいつのまにか、家のドアだけが浮いていた。砂漠のど真ん中だぞここは?ついに死の間際に幻覚を乱したのかと、ジャントルは焦る。

少年は平然とした顔で、たたずむドアを開けて、ジャントルを中に招こうとしている。

「立てませんか?」
心配そうな少年の顔。
「だ、大丈夫だ」
生きれるならばなんでもいいと、ジャントルは少年に招かれるまま、ドアの中へと一歩踏み入る。

ドアの中に入ると、そこは楽園だった。
涼しい風に、潤う澄んだ空気に、木々が揺れる音。
確かに砂漠のど真ん中だったのに。
唖然とするジャントル。
もうそこは別空間だ。
ここは?
唖然とするジャントルに、少年は微笑む。

「初めまして、僕の名前は西田俊彦といいます。あなたは?」

自分の名前を聞かれたが、それどころではないと、ジャントルはつばを飲み込む。
「俺はジャントル。旅の商人だ。お前は、なんだ?ここは何なんだ?俺たちは砂漠のど真ん中にいたはずだろう?」

「ここは、俺の家です。何でか知らないけど、色んな空間をさまよっている家なんです」
そう西田と名乗る少年は、ジャントルに言ったのだった。

「あそこに見えるのが、俺の家です」
少年西田が指さしたそこには、美しい自然の中に一軒の白い色の家が建っていた。

森の中に立つ一軒家の庭には湖が見えた。その湖の中心には、異常にでかい大木がそびえたっていた。

「な、なんだあれは?」
ジャントルは唖然として、その異常なでかい木を指さす。あのでかさは空を貫通しているように見える。

西田は首をかしげて、ジャントルの指さす方を見た。
「ああ、あの木ですか?
家の庭にはでかい木の世界樹があって、でかい木の周りには命の湖が広がっています。あそこの湖で傷をつけると、治りますよ。けどあそこにはでかい狼の健太郎がいて、湖を守っているから、あまり近づかないようにしています」

そうわけわからないことを、西田少年は呟いたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ

天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。 彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。 「お前はもういらない」 ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。 だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。 ――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。 一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。 生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!? 彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。 そして、レインはまだ知らない。 夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、 「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」 「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」 と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。 そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。 理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。 王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー! HOT男性49位(2025年9月3日0時47分) →37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

公爵閣下、社交界の常識を学び直しては?

碧井 汐桜香
ファンタジー
若い娘好きの公爵は、気弱な令嬢メリシアルゼに声をかけた。 助けを求めるメリシアルゼに、救いの手は差し出されない。 母ですら、上手くやりなさいと言わんばかりに視線をおくってくる。 そこに現れた貴婦人が声をかける。 メリシアルゼの救いの声なのか、非難の声なのか。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と愛人母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

処理中です...