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その二
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忍はあせっていた。亡くなった母親が看護師で色々応急処置の方法を教わっていたとはいえ、男の腕の傷は明らかに刃物でえぐられたような傷だからだ。そんな傷の処置方法教わったことはない。とにかく止血や感染症など危険だが、どう傷を縫い合わせたほうがよいのかわからない。しかも男の体はかなりの出血量だ。輸血しなければ危ない。
やはり救急車を呼ばなければ危険だ。だが、男は忍をにらみつけたまま、「誰か呼んだら、殺す」という。
とにかく忍は傷口を消毒と止血をすることにした。
「痛いですが、我慢してくださいね」
「すまない」
男の声は、低い獣のうめき声のようだ。忍の高めの声とは正反対だ。
「あなたの体が心配です。しばらくしたら病院に行ってくださいね」
「ああ、もちろんだ」
男はまだ年若い青年だ。忍と歳もそんなに違わなく見えた。今は辛くても、いつかはきっといいことがあるかもしれない。なんだか辛くなって、忍はうつむく。
「俺の名前は後藤義嗣。あんたの名前は?」
男が忍のことを見る。
「佐々木忍、です」
「ありがとな」
義嗣は狼のような険しい顔で、忍から目線をそらしそういう。
「迷惑かけてすまない」
目つきが悪そうでド派手な金髪の男で柄が悪そうだが、なんだか悪い人でもなく、なんとなくヤクザというよりもなんだか品?のよさそうな人に、忍は見えた。
「いえ、困ったときはお互い様です」
義嗣を少し目を見開いて忍を見ると、横を向いて舌打ちをする。なにか忍は男のきにそぐわないことを言っただろうかと、首をかしげる。
「ここは人が来ますし。僕の部屋に来ませんか?」
「いい。もう行く。迷惑はかけらんねぇ」
「そんな傷では無理ですよ。車を取ってくるから少し待ってください」
「お人よしだな。いつか刺されるぞ」
「僕は別にお人よしではありません。けが人は放っておけない主義なんです」
そう言って、忍はにっこり微笑んだ。
義嗣はため息を吐き、サングラスをとった。やはりサングラスの下には生真面目な目つきの鋭い忍とそう変わらない青年の顔があった。
やはり救急車を呼ばなければ危険だ。だが、男は忍をにらみつけたまま、「誰か呼んだら、殺す」という。
とにかく忍は傷口を消毒と止血をすることにした。
「痛いですが、我慢してくださいね」
「すまない」
男の声は、低い獣のうめき声のようだ。忍の高めの声とは正反対だ。
「あなたの体が心配です。しばらくしたら病院に行ってくださいね」
「ああ、もちろんだ」
男はまだ年若い青年だ。忍と歳もそんなに違わなく見えた。今は辛くても、いつかはきっといいことがあるかもしれない。なんだか辛くなって、忍はうつむく。
「俺の名前は後藤義嗣。あんたの名前は?」
男が忍のことを見る。
「佐々木忍、です」
「ありがとな」
義嗣は狼のような険しい顔で、忍から目線をそらしそういう。
「迷惑かけてすまない」
目つきが悪そうでド派手な金髪の男で柄が悪そうだが、なんだか悪い人でもなく、なんとなくヤクザというよりもなんだか品?のよさそうな人に、忍は見えた。
「いえ、困ったときはお互い様です」
義嗣を少し目を見開いて忍を見ると、横を向いて舌打ちをする。なにか忍は男のきにそぐわないことを言っただろうかと、首をかしげる。
「ここは人が来ますし。僕の部屋に来ませんか?」
「いい。もう行く。迷惑はかけらんねぇ」
「そんな傷では無理ですよ。車を取ってくるから少し待ってください」
「お人よしだな。いつか刺されるぞ」
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