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番外編 花屋の噂の二人 (表)
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女子高生の華南の日課は、学校の通り道にある花屋を見ることだ。
その花屋にはいつも男二人組の店員さんがいる。
イケメンの目つきが鋭い背の高い男の人と、もう一人いつもにこにこしている平凡な男の人の店員さんだ。
華南はその二人をなんとなく見るのが趣味だ。
華南の学校の女子達も、その二人が恋人同士だとか噂している。
イケメンの店員が、もう一人の店員の男の腹に手を回していたとか。なんとか。
華南もちょっぴり二人を見て妄想をしているが、華南はそれだけで、その花屋の二人に興味があるわけではない。
その花屋の二人が、ちぐはぐな印象なのに、なぜかいつも仲良しなのが不思議で、つい見てしまう。
華南は学校の友達と、最近うまくいっていない。他に趣味がない華南は、学校で友達との会話についていけてなかった。華南の家が貧乏で、ろくに友達と飲み食いにもいけるわけではない。
一緒に食べに行けない華南は、皆に置いてけぼりな感じだ。
だから恋人同士かもしれない、花屋の二人を見ては、寂しい気持ちをなぐさせめていた。
花屋の二人とは話したことはない。
そんな勇気は華南にはなかったのだった。
その日一人ぼっちの帰り道、なんだかやさぐれた気持ちと、一人寂しさで一人でぼんやり花屋の花を眺めていると、中から花屋の平凡な男の方が出てきて、華南に笑顔で話しかけてきた。
「いらっしゃい。花はお好きですか?」
にこにこ平凡顔の店員は微笑んでいる。
華南は驚きながらも、なんとか口を開く。
「ま、まぁ」
「よかったら、花屋の中に入って、花でも見ていきませんか?あ、花は買わなくても全然いいです。今日たくさんお菓子買ってきたんです。お茶いれるので、よかったらどうぞ」
そんなことを花屋の男は言う。
若干華南は花屋の店員の男に警戒していたが、一人の寂しさと好奇心に負けて、恐る恐る花屋の店内の中に足を踏み出す。
店内には花がたくさんバケツにあり、奥には畳部屋があり、そこには黒いランドセルを背負った小学生らしき男の子が、お茶を飲んでいた。
小学生は眉を寄せると、華南の方を見て言う。
「忍、こいつ、誰?」
こいつとは失礼だなと、華南は小学生を睨む。
「初めて来る方です。お花が好きそうなので、僕が誘ったんです。僕の名前は佐々木忍といいます。こちらの小学生は笹梅祥くんです。僕の友達です」
「いや、俺は忍の彼氏で、友達じゃないけどな」
祥という小学生は漫画を読みながら言う。
くつろいでいる。
小学生をもしや連れ込んでいる?と、華南は忍への警戒心をグレードアップさせる。
「忍!」
ワイシャツ姿のサングラスをかけた危険な雰囲気のイケメンが、入り口から入ってくる。
「そこにいるぞ」
とイケメンはわけわからんことを言う。
「そうですか。あの華南さん、この方は花屋のもう一人の店員の、後藤義嗣さんです」
「ああ」
義嗣は華南の方を見る。
サングラスで瞳は見えないが、義嗣は男の色気というか、すごい迫力があって、華南はぶっちゃけビビる。
「こ、こんにちは。井上華南です」
「ああ、こんにちは。お前大丈夫か?お前のこと後をつけてる男がいるぞ。気が付いてるか?」
義嗣は煙草をくわえ、舌打ちをしてすぐさま煙草を胸のポケットにしまう。
「え!?」
華南は飛び上がる。
「そうです。ずっとここ最近あなたの後ろを尾行する男がいて、心配になって今日ここに呼んだんです」
曇り顔の忍。
「俺が半殺しにしてやろうか?」
義嗣さんが無表情に言う。
「え、え!?」
華南は何と答えていいかわからない。
「心配です。華南さんのご家族に連絡して、ここまで迎えに来てもらいましょうか?」
「う、うち共働きだから、内に親いない」
怖い。男に後をつけられているなんて、嘘か本当か?目の前の人たちを信じていいもんかどうか、華南は戸惑う。
「ここから見てみろ」
義嗣は視線の方向を見ると、外の建物から間から確かに見知らぬ男が花屋の中の様子をうかがっているのが見える。
華南の心臓に冷たいものが走る。
「ど、どうしよう!」
「俺が送っていってやる」
義嗣が入口の方へ歩き出す。
「あ、ありがとう」
戸惑いながら華南は義嗣の方へと歩き出す。
「いってらっしゃい」
にこにこ微笑む忍。
「忍、お前もやばいストーカーに狙われやすいんだ。気をつけろよ」
義嗣が振り返って言う。
忍はにこにこ微笑むながら。
「はい」
その緊張感のなさに、義嗣は眉間のしわをもみながら、華南を連れて外へと歩き出した。
その後華南はストーカーに狙われることはなかったが、なぜかあの忍の花屋に不法侵入して半殺しにされた男のことが、ニュースで報道されていた。
華南が次にお礼のお菓子とともに、あの花屋に訪れる。
「すいません」
「あ、いらっしゃい」
忍は、抱き着いているあの小学生の子の頭をなでている。
花屋に義嗣はいなかった。
にこにこ微笑む忍にむかって、華南はずっと気になっていたことを聞いていた。
「あの、義嗣さんと忍は、二人は恋人同士?」
ずっと気になっていたことを、華南は口に出していた。
顔を真っ赤にさせた忍。
その顔を見て、華南はすべてを悟ったのだった。
義嗣は格好がいいので、正直残念だったが、
おっとりしている忍と、イケメンの義嗣が、あんなことやこんなことをしているとすると、華南の妄想はとても膨らんだのだった。
その花屋にはいつも男二人組の店員さんがいる。
イケメンの目つきが鋭い背の高い男の人と、もう一人いつもにこにこしている平凡な男の人の店員さんだ。
華南はその二人をなんとなく見るのが趣味だ。
華南の学校の女子達も、その二人が恋人同士だとか噂している。
イケメンの店員が、もう一人の店員の男の腹に手を回していたとか。なんとか。
華南もちょっぴり二人を見て妄想をしているが、華南はそれだけで、その花屋の二人に興味があるわけではない。
その花屋の二人が、ちぐはぐな印象なのに、なぜかいつも仲良しなのが不思議で、つい見てしまう。
華南は学校の友達と、最近うまくいっていない。他に趣味がない華南は、学校で友達との会話についていけてなかった。華南の家が貧乏で、ろくに友達と飲み食いにもいけるわけではない。
一緒に食べに行けない華南は、皆に置いてけぼりな感じだ。
だから恋人同士かもしれない、花屋の二人を見ては、寂しい気持ちをなぐさせめていた。
花屋の二人とは話したことはない。
そんな勇気は華南にはなかったのだった。
その日一人ぼっちの帰り道、なんだかやさぐれた気持ちと、一人寂しさで一人でぼんやり花屋の花を眺めていると、中から花屋の平凡な男の方が出てきて、華南に笑顔で話しかけてきた。
「いらっしゃい。花はお好きですか?」
にこにこ平凡顔の店員は微笑んでいる。
華南は驚きながらも、なんとか口を開く。
「ま、まぁ」
「よかったら、花屋の中に入って、花でも見ていきませんか?あ、花は買わなくても全然いいです。今日たくさんお菓子買ってきたんです。お茶いれるので、よかったらどうぞ」
そんなことを花屋の男は言う。
若干華南は花屋の店員の男に警戒していたが、一人の寂しさと好奇心に負けて、恐る恐る花屋の店内の中に足を踏み出す。
店内には花がたくさんバケツにあり、奥には畳部屋があり、そこには黒いランドセルを背負った小学生らしき男の子が、お茶を飲んでいた。
小学生は眉を寄せると、華南の方を見て言う。
「忍、こいつ、誰?」
こいつとは失礼だなと、華南は小学生を睨む。
「初めて来る方です。お花が好きそうなので、僕が誘ったんです。僕の名前は佐々木忍といいます。こちらの小学生は笹梅祥くんです。僕の友達です」
「いや、俺は忍の彼氏で、友達じゃないけどな」
祥という小学生は漫画を読みながら言う。
くつろいでいる。
小学生をもしや連れ込んでいる?と、華南は忍への警戒心をグレードアップさせる。
「忍!」
ワイシャツ姿のサングラスをかけた危険な雰囲気のイケメンが、入り口から入ってくる。
「そこにいるぞ」
とイケメンはわけわからんことを言う。
「そうですか。あの華南さん、この方は花屋のもう一人の店員の、後藤義嗣さんです」
「ああ」
義嗣は華南の方を見る。
サングラスで瞳は見えないが、義嗣は男の色気というか、すごい迫力があって、華南はぶっちゃけビビる。
「こ、こんにちは。井上華南です」
「ああ、こんにちは。お前大丈夫か?お前のこと後をつけてる男がいるぞ。気が付いてるか?」
義嗣は煙草をくわえ、舌打ちをしてすぐさま煙草を胸のポケットにしまう。
「え!?」
華南は飛び上がる。
「そうです。ずっとここ最近あなたの後ろを尾行する男がいて、心配になって今日ここに呼んだんです」
曇り顔の忍。
「俺が半殺しにしてやろうか?」
義嗣さんが無表情に言う。
「え、え!?」
華南は何と答えていいかわからない。
「心配です。華南さんのご家族に連絡して、ここまで迎えに来てもらいましょうか?」
「う、うち共働きだから、内に親いない」
怖い。男に後をつけられているなんて、嘘か本当か?目の前の人たちを信じていいもんかどうか、華南は戸惑う。
「ここから見てみろ」
義嗣は視線の方向を見ると、外の建物から間から確かに見知らぬ男が花屋の中の様子をうかがっているのが見える。
華南の心臓に冷たいものが走る。
「ど、どうしよう!」
「俺が送っていってやる」
義嗣が入口の方へ歩き出す。
「あ、ありがとう」
戸惑いながら華南は義嗣の方へと歩き出す。
「いってらっしゃい」
にこにこ微笑む忍。
「忍、お前もやばいストーカーに狙われやすいんだ。気をつけろよ」
義嗣が振り返って言う。
忍はにこにこ微笑むながら。
「はい」
その緊張感のなさに、義嗣は眉間のしわをもみながら、華南を連れて外へと歩き出した。
その後華南はストーカーに狙われることはなかったが、なぜかあの忍の花屋に不法侵入して半殺しにされた男のことが、ニュースで報道されていた。
華南が次にお礼のお菓子とともに、あの花屋に訪れる。
「すいません」
「あ、いらっしゃい」
忍は、抱き着いているあの小学生の子の頭をなでている。
花屋に義嗣はいなかった。
にこにこ微笑む忍にむかって、華南はずっと気になっていたことを聞いていた。
「あの、義嗣さんと忍は、二人は恋人同士?」
ずっと気になっていたことを、華南は口に出していた。
顔を真っ赤にさせた忍。
その顔を見て、華南はすべてを悟ったのだった。
義嗣は格好がいいので、正直残念だったが、
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