記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

アルの記憶２

　学校が終わると、アルは心底ほっとする。アルの両親は両親とも共働きなので、テーブルの上に置いてあるお菓子を手に取る。お母さんはいつもおやつにテーブルの上にお菓子をおいて置いてくれる。
お菓子をもって自分の部屋に行く。
部屋には二段ベッドの下に、霞がいた。
姉の霞とアルはもう中学生だというのに、同部屋だった。正直姉との相部屋はきつい。アルは机に座ると、お菓子をぼりぼり食べ始める。
「アル、なんか蛇の形をした生霊がついているよ。気を付けたほうがいいよ」
アルの顔を見た霞が言い出す。

霞は昔から霊感というものがあった。

「なにそれ、怖い。どうしたほうがいいかな？盛り塩したほうがいい？」
「さぁ？私見えるだけだから。アルは悪霊に好かれやすいからね。私心配だよ」
霞の手がアルの頭をなでる。
アルはその暖かな手が嬉しくて、少しどきどきした。

遠くで笛の音が聞こえてくる。
この村ではもうすぐ祭があり、笛の練習をしているのだろう。
「もうすぐ村の祭りだね」
「そう、だね」
霞は目に見えて、元気をなくす。
霞は昔から村の祭りが嫌いで、子供の時から村の夏祭りになると泣いて、霞は絶対村の夏祭りには参加することはない。

一度アルは霞に何故村の夏祭りに参加するのを嫌がるのを聞いたことがある。すると霞は悲しそうな顔になって、「わかんない」とぽつりとつぶやくように言った。そして泣きそうな顔になって無理な笑顔になると、「私、神様に好かれやすいから」とも言っていた。

霊感がある霞は、神様も見えているのだろうか？と、憂いに満ちている美しい姉の横顔をアルは見つめた。
アルは姉のことが大好きだ。
姉のためならばなんでもする。霞が夏祭りに出たくないというのならば、姉を守ろう。そうアルは決意して、姉の長い髪に少し触れた。