記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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番外編 ピーノちゃんのこと

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うさぎの獣人は基本多産だ。
子供は多い。それは子供の死亡率が高いからか。
スラムでは子供が満足に医療をうけられない。ましてや獣人は差別対象だ。子沢山である兎獣人の子供の死亡率は高い。
そんな兎獣人の母ウルと父のメットルの間に生まれたのが、ピーノだった。

ピーノには十三番目人の兄妹がいる。ピーノは一番の末っ子だ。他の兄妹は働きに行き、ピーノは一人で家の周辺を散策する日々を過ごしていた。

体中にぴょんぴょん虫が這いずっている。ピーノは体をポリポリかきながら、地面のミミズを探していると、人の気配に耳がピクリと動いて、顔を上げると、そこには仮面をかぶった一人の人間が立っていた。

「こんにちは。お母さんお父さんは?こんな裏路地に一人は危ないよ?」
優しい柔らかな声の人間。
久々にかまってもらえた嬉しさに、ピーノの耳は揺れる。
薄汚いピーノのことを毛ぎらう子供は多い。遊んでもらえないのが寂しい。

お母さんとお父さんはいないと、ピーノは首を横に振る。
すると人間は困った様子で、懐から袋を取り出すと不思議なものを取り出して、ピーノの方に差し出す。

「兎獣人さん専用のクッキーだよ」
するとその人間はクッキーを半分に割ると、その半分を人間は口に入れて食べた。
「おいしいよ。知らない人から食べ物は貰っちゃいけないから、毒見したからね」
そういってにっこり微笑んで、人間はピーノの頭をなでた。

この時食べたクッキーと言う食べ物は、それはひどく美味しいものだった。貧しい家のピーノのおやつはそこら辺になっている草や花の蜜とかなので、この時初めてピーノはお菓子を食べたのかもしれなかった。

「私の名前はアル。この先の家で子供預かり所をしているんだよ。お父さんかお母さんと一緒に遊びに来てね」

それからピーノはアルという人間を見ると、条件反射で涎をたらすこととなった。

その夜少ない野菜根菜類のご飯を食べながら、ピーノは昼間食べたクッキーを思い浮かべていた。
またあの謎の食べ物を食べたいと思い、ママとパパに話すことにした。

「ママ、パパ。ピーノ、今日アルという人間に食べ物もらった。子供預かっているところがあるらしい。ピーノそこに行きたい!」
そうピーノがいうと、それまで騒がしかった食事の時間が、ぴたりと静かになった。

パパとママは深刻そうなすごい顔で、ピーノを見た。

「ピーノ。知らない人から食べ物貰っちゃだめだよぉ」
パパは困り顔である。
「そうよ。人間なにするかわからないんだから、私たちの肉を食べちゃう人間もいるっていうわ」
怖い顔のママが言う。

「あの人間ピーノの肉食べちゃうの!?」
恐ろしい真実に、ピーノの耳はピーンと恐怖でまっすぐに硬直する。
ショックと恐怖でピーノが涙ぐむと、パパがピーノの涙を指で拭って、膝の上に乗っけてくれた。

その夜わら布団の中でピーノは寝ていると、家族の話声が聞こえてくる。兎獣人は耳がいいので、結構遠くからでも聞こえてくるのだ。

「どうしようか。もう限界かもしれない。国に払う税も高いし。作った野菜は買いたたかれるし。今年は不作だ。雨が多すぎて高く売れるはずの葉物野菜も葉の根が腐ってしまった」
パパの胸をつくような物悲しげな声。

「どうしたらいいの?もう明日食べるものがほとんどない」
ママが泣き出した。

「俺たち働きに出るよ!」
長男のピップ兄ちゃんの声。

「ありがとう。ピップ」
ママの物悲しげな声。

すると隣で寝ていたジャンお兄ちゃんが、ピーノを見て言った。
「ピーノは働きもせずに、邪魔なだけだな」
その言葉がピーノの心に突き刺さった。

ピーノは邪魔な兎だ。この家にいては邪魔になる。ピーノはアルという人間の家に行くことを涙ながらに決意した。

ピーのは次の朝一人になると、アルのいる家の戸を叩く。
「はい?」
「ピーノ、アルの家に来た。今日からここで暮らすことにする。入れて」
そういうと、アルは困った顔になった。

「どうしたの?お父さんとお母さんは?」
アルはピーノの頭をなでる。すこしこそばゆくて、ピーノは首をすくめる。

「ピーノがいたらみんな困るの。食べ物もないから」
「………そっか。ピーノちゃんのお父さんとお母さんに話を聞かないと。ピーノちゃんのお家に案内してくれる?」
「やだ」
「なんで?」
「ピーノ迷惑かけたくない」
「ピーノちゃん、それは全然迷惑じゃないよ。家族なんだから、きちんと甘えたり話さなくちゃいけません、ピーノちゃんのこと。一緒にお家に行って、きちんとお話ししよう!」
「うん」
ピーノは頷く。

「その前に毛ダニを退治しようね」
アルはピーノの全身にお札をやると、ぽろぽろピーノの全身からダニが落ちてくる。くすぐったい。
アルはピーノのふさふさの頭や腕や足の毛を、ブラシでとき始めた。気持ちよくて、ピーノは眠ってしまい、アルに起こされた。

こうしてアルはピーノと手をつないで、ピーノの家にやってきた。
「ごめんください」
アルがピーノの家の気のドアを叩く。

「はい?」
不思議そうなピーノママがドアを開けて、アルの姿をみると玄関のドアを閉めた。

「あなた!!人間よ!どうしよう!!」というピーノママの声が聞こえてくる。ピーノのママは、人間が苦手なのだ。

「はい?」
ぽりぽり頭をかきながらピーノのパパが、不機嫌な様子でドアを開ける。その後ろの遠くに隠れて震えながらこちらを見ているピーノママの姿も見えた。

「初めまして、私はあるといいます。この先の家で子供預かりの仕事をしています」
そんなことをいうアルのことを、ピーノパパは不審そうに見た。
「子供預かりぃ?」

「はい。お子さんを一時預かるサービスです。お昼の食事はうちで出していますが、食べ物を家から持ってくることもできます」

「だめだめ。そんなよくわからん所に、うちの子預けられねぇわ」
ぽりぽりピーノパパは白い髪の毛をかく。その髪の毛にのみが跳ねているのが見える。

「ピーノ、アルのとこに行く!家にいたら迷惑になるし。ピーノみんなに迷惑をかけたくない!」
泣きながら言うピーノに、パパとママは物悲しげな顔になって、「ピーノ……」
とつぶやく。

「ピーノちゃんを預かりたいのですけど。昼間預かって、家に帰る形になります。あと夜泊るときはご両親が原則同伴になるんですが」
しんみりした空気の中、アルは真剣な顔で話し出す。

「だめだめ。うち野菜作り屋なんだけど、今野菜が不作でお金がないんですよ。どうせ高い金がかかるんでしょ?あんたら人間はすぐ私らを食い物にするんだから!」
ぷんすこピーノパパは怒っている。

「そうですか。一か月無料でもいいです。その代わり、もし野菜が取れるようになったら、でいいんですけど、ピーノちゃんを預かる費用の代わりに、野菜を少し安く買わしていただきたいんですが。うちで食べ物も出しているので」
にっこり微笑んだアル。
するとメットルパパは渋い顔になり、「今あまりうちいい野菜がとれなくて、不格好な野菜ですけど、いいですかい?」
「はい」

それからアルの家にピーノのパパのメットルは野菜を届けるようになった。最初メットルは、アルに野菜を安く買いたたかれると警戒しているようだったが、まとめて買ってくれることや、市場で獣人差別的に安くされるよりも、高く売れたため、ピーノの家は助かることになった。

それに何よりもアルは、作ったお菓子や料理をよくピーノの家におすそ分けにくるので、ピーノ達家族はたいそう喜んだのだった。

ピーノが日々毛並みがつやつやになり、にこにこ楽しそうにしていたため、ピーノの兄妹はアルの子供預かり所に行きたがるようになる。
ちなみにピーノのウルママも、ピーノの毛並みの良さを見て、アルのブラシ屋に通うようになった。


その後ピーノの兄妹が増えて、避妊の効果がある果実を飲むように、アルはピーノのパパとママに怒ることとなった。
ピーノママとしては、作るつもりはなかったが交通事故的なことで、うっかり妊娠してしまったらしかった。

アルはそれぞれの獣人にあった料理を研究中である。
ピーノがうろうろ家の周りで遊んでいることに気づいて、兎獣人の食事も研究していた。












兎獣人は手と足に毛が生えてふさふさしていて、顔は人間見たいですが、猿から進化した人間とは少し違って、顔は兎ににている姿です。兎とは少し違うけど、そこはひとっぽい感じです。
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