記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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第73話 龍の来襲と望まぬ妊娠 (注意、残虐描写あり)

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 介護や保育など人を預かるところは、職員が少ないと必ず死人がでる。絶対であるとアルは確信している。

 一人ひとり子供の食べ物は違う。アレルギーがある子供もいる。それに特に獣人にはいろんな種族がいて、共通の食べ物は結構人間と同じだが、食べれないものは種族事にあるらしい。アルは子供の親や同じ獣人の種族の人に聞きまわって、何とか研究している。

子供は予期せぬ行動もするし、体調管理も大人と同じように自分でできるわけではない。
子供はひと時も目が離せない。
大人ですら突然喉に何かを詰まらせて死んでしまったりする。
きちんとと子供の行動や食事を管理するには、人が子供の人数分必要だと思う。
このスラムはお金がない貧しい人が多い。安い賃金で子供を預かりたいが、そうすると職員を大勢雇えない。
けれど大勢雇わないと結局は死人が出て、アルの子供預かり所が立ち行かなくなるし、なにより子供が死ぬのは嫌だ。

赤字の穴埋めはアルのブラシ屋や男娼の仕事などの副業でまぁまぁ、でできていると思う。けれどルナルなどの薬代を合わせると、ぎりぎりだ。しかもブラシ屋は基本低賃金だし、アルが年を取ってくると男娼の仕事もどうなるかわからない。

安易に人を雇うわけにもいかないが、ブラシ屋をもっと広げてやるために、そちらにも人を雇うのはいいかもしれないなと、アルは思う。
ブラシ屋を開くにも資金がいる。借金投資などしてくれる場所が、この異世界にあるのだろうか?
ピーノさんの家はたいそう困った様子だった。不作の時に借りられる場所がこの世界にあるのだろうか?税金を国でとっているが、それがピーノ達生活の助けに使われているのを、みたことがない。

アルはピーノのパパママに、避妊の説教をしてしまい、ピーノママとパパと気まずくなってしまったことも思い出して、ため息を吐く。

ブラシ屋がどれだけ需要があるかは、わからないのも困るのだが。
黒獣人のあの方からもらった黄金の置物を、お金に変えてお店をやるのもいいかもしれないな。

そんなことを考えながら歩いていると、突然眠気に襲われてすごい眩暈がアルを襲う。

「よぉ、人間。石を返してもらおうか?」
そんな男の声が遠くで聞こえ、アルは意識を失って倒れこんだ。

 

 遠くで鳥が啼いている。

 ここはどこだろう?
アルが目を開けるとそこは見知らぬ森だった。

アルは起き上がろうとするけれど、金縛りのようで動けない。

「よぉ、目覚めたか?人間風情が俺のお宝を盗みやがって。覚悟はできてるんだろうな?」
長い黒髪の長い、爬虫類のような金色の目をした、浅黒い肌の男が、アルを見下ろしている。

この青年は、ドラゴンだとアルはすぐに気づく。
ジュラとどこか似ているような雰囲気がある。

「お前のせいで俺はジュラに振られたんだ」

このドラゴンはどうやらジュラの知り合いらしい。

おもむろに男はアルの腹をに手を置く。するとアルの腹に激痛が走る。凄まじい痛みに、アルの目からは涙がこぼれ落ちる。体が硬直したまま、悲鳴すら上げることができない。

「だが喜べ人間。お前に俺の卵を与えてやる」
男は小さな青い卵を、アルの腹に押し入れる。

「この卵はジュラの宝玉の魔力とお前の魔力を吸いながら、大きく育ち、そのうちお前の腹を食い破ってでてくるだろう。托卵だ。俺の子供だ。立派に育てるがいい。まぁ、お前が死ぬまでだがな」

にやにや残酷な表情で笑う男。
アルは怖くてまるで悪夢を見ているようだ。

「じゃぁな、人間。俺の宝玉は返してもらったぞ。おおそうだ、切り裂いた腹は治してやる。俺の子供のためだ。俺以上の魔力を持つものがいたら、お前は助かるかもなぁ」

げらげら笑う男。

「じゃぁな、神に呪われた邪悪な人間」

男はドラゴンの姿になり、飛び立っていく。

アルはとにかく腹が痛くて、もう一度気を失った。
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