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第90話 テディベア誕
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焦げ臭いにおいがスラム全体を覆っている。
その中で逃げ遅れたエルフの子供のポポムは一人泣いていた。ポポムはエルフの森から攫われて、奴隷としてこの町に連れられてくる途中だった。
火事の勢いに、奴隷商人の人間たちはポポムたちを乗せた馬車を乗り捨て、縛られていたポポムたちを見捨てて、走って行ってしまった。
人々の悲鳴が聞こえてくる。ポポムが乗っている馬車に逃げ惑う人があたったり、どかどか他の馬車が激突して、乗っている馬車が傾く。
馬車の中で泣き叫ぶ女の人の声がする。
その女の人を、頭の上に角を生やした男の人が、「しっかりしろ。大丈夫か?」と励ましている。
破壊した馬車から何とかでたが、走って逃げる人がたくさんいてポポムはぶつかって尻もちをつく。
「お母さん」
お母さんに会いたい。
ポポムは焦げ臭い街並みで、涙ぐんでいると、目の前に見たことがない毛がふさふさしているなんか人工的なよくわからないものが、ポポムの前に現れた。
異世界でいうとそれはテディベアのぬいぐるみが、二足歩行で立っていた。
ぬいぐるみは、ポポムに手を差し伸べて言った。
「大丈夫?」
「な?何?見たことがない生き物」
ポポムは見たことがない生き物というか、生きていると見えない無機物が話し出したことに、怯えた。
そのもふもふのぬいぐるみは、手から花を出してポポムに差し出してくる。
「え、くれるの?」
「うん。どうぞ。人が逃げているときは危ないから、ゆっくり壁沿いに逃げたほうがいいです。あの、私の名前はアル。一人ですか?もしかして迷子ですか?」
心配そうにいうクルッポ(ぬいぐるみ)に、ポポムは顔を覆って泣き出した。
アルはおろおろする。
こうなってしまったのは少し、時間をさかのぼる。
アルは夢の中で目を覚ました。
矛盾しているが、目の前には心配そうな顔の仮面をつけた女性であるウィルがいることで、アルにはこれが夢だとなんとなく分かった。
「よかったねぇ!魔法使えるようになって!」
にこにこウィルは微笑んでいると、思う。顔が仮面に包まれているが、なんとなく声が弾んでいるのと感じでわかる。
「え、魔法ってまさか」
「うん。アル、手からお花出してじゃない?」
「まさか私の魔法って、手から花を出すことなんですか!?」
どうしてそんなしょーもない魔法なんだろう?
アルはがっくりする。
「お花出すなんてすごいことなのに。そんなにがっかりしないで、アル」
よしよしと、ウィルにアルは頭をなでられる。
なんだかアルはほっとして、涙ぐむ。
「ソニアさんたちどうなったんだろう?子供たちも。無事であってほしい」
「アル」
それを見送るウィルはため息をつく。
「全く何なの?とにかくアル。もう時間がないから言うね。あなたの大事な様子を見に行きたいけれど、拘束されてみにいけないんだよね?」
「そうです」
アルは教会で掴まって、気絶してしまっている状態だ。
「なら別の体に入って、会いに行けばいいじゃない?これをあげる」
ウィルから手渡されたのは、大きな茶色いテディベアだった。
「これは?」
「アルが寝ている間だけ、この空間にきて、このぬいぐるみの体に入って、会いたい人に会いに行けばいい」
「え」
「大丈夫。すぐにわかるから。ただし気を付けてね。アルの体は別の場所にあるし、あまり長い時間クマのぬいぐるみの体でいると、戻れなくなるかもしれないから」
ウィルに突き飛ばされて、アルは深い底に落ちて言った。
そしてアルは気が付くと、ぬいぐるみのテディベアの体になっていたというわけである。
その中で逃げ遅れたエルフの子供のポポムは一人泣いていた。ポポムはエルフの森から攫われて、奴隷としてこの町に連れられてくる途中だった。
火事の勢いに、奴隷商人の人間たちはポポムたちを乗せた馬車を乗り捨て、縛られていたポポムたちを見捨てて、走って行ってしまった。
人々の悲鳴が聞こえてくる。ポポムが乗っている馬車に逃げ惑う人があたったり、どかどか他の馬車が激突して、乗っている馬車が傾く。
馬車の中で泣き叫ぶ女の人の声がする。
その女の人を、頭の上に角を生やした男の人が、「しっかりしろ。大丈夫か?」と励ましている。
破壊した馬車から何とかでたが、走って逃げる人がたくさんいてポポムはぶつかって尻もちをつく。
「お母さん」
お母さんに会いたい。
ポポムは焦げ臭い街並みで、涙ぐんでいると、目の前に見たことがない毛がふさふさしているなんか人工的なよくわからないものが、ポポムの前に現れた。
異世界でいうとそれはテディベアのぬいぐるみが、二足歩行で立っていた。
ぬいぐるみは、ポポムに手を差し伸べて言った。
「大丈夫?」
「な?何?見たことがない生き物」
ポポムは見たことがない生き物というか、生きていると見えない無機物が話し出したことに、怯えた。
そのもふもふのぬいぐるみは、手から花を出してポポムに差し出してくる。
「え、くれるの?」
「うん。どうぞ。人が逃げているときは危ないから、ゆっくり壁沿いに逃げたほうがいいです。あの、私の名前はアル。一人ですか?もしかして迷子ですか?」
心配そうにいうクルッポ(ぬいぐるみ)に、ポポムは顔を覆って泣き出した。
アルはおろおろする。
こうなってしまったのは少し、時間をさかのぼる。
アルは夢の中で目を覚ました。
矛盾しているが、目の前には心配そうな顔の仮面をつけた女性であるウィルがいることで、アルにはこれが夢だとなんとなく分かった。
「よかったねぇ!魔法使えるようになって!」
にこにこウィルは微笑んでいると、思う。顔が仮面に包まれているが、なんとなく声が弾んでいるのと感じでわかる。
「え、魔法ってまさか」
「うん。アル、手からお花出してじゃない?」
「まさか私の魔法って、手から花を出すことなんですか!?」
どうしてそんなしょーもない魔法なんだろう?
アルはがっくりする。
「お花出すなんてすごいことなのに。そんなにがっかりしないで、アル」
よしよしと、ウィルにアルは頭をなでられる。
なんだかアルはほっとして、涙ぐむ。
「ソニアさんたちどうなったんだろう?子供たちも。無事であってほしい」
「アル」
それを見送るウィルはため息をつく。
「全く何なの?とにかくアル。もう時間がないから言うね。あなたの大事な様子を見に行きたいけれど、拘束されてみにいけないんだよね?」
「そうです」
アルは教会で掴まって、気絶してしまっている状態だ。
「なら別の体に入って、会いに行けばいいじゃない?これをあげる」
ウィルから手渡されたのは、大きな茶色いテディベアだった。
「これは?」
「アルが寝ている間だけ、この空間にきて、このぬいぐるみの体に入って、会いたい人に会いに行けばいい」
「え」
「大丈夫。すぐにわかるから。ただし気を付けてね。アルの体は別の場所にあるし、あまり長い時間クマのぬいぐるみの体でいると、戻れなくなるかもしれないから」
ウィルに突き飛ばされて、アルは深い底に落ちて言った。
そしてアルは気が付くと、ぬいぐるみのテディベアの体になっていたというわけである。
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