記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。（多分）

第91話 生花は燃えにくいのか？

石造りの塀が多いが、やはり木の家も多い。だが火の勢いよりも、ひどい煙の匂いがする。ポポムが苦しそうに咳き込んでいる。
そういえば、火事では二酸化炭素を吸ってしまうのが、危険だとアルは聞いたことがある。
とにかく火事の煙を遠ざけようと思い、アルは手から大量の花を出してみた。
焦げ臭い中に強烈な花の匂い。
周囲の人間は呆然として、テディベアを見ている。

煙を遠ざけるのを成功したのだが、手から出る花はとまらない。
「て、うわぁ！！」
アルは慌てて燃え盛る方に、手を向ける。
たくさんの花は、燃え盛る火を包んでいき、何故だか火の勢いを弱らせていく。燃えにくい魔法の花が、火の元の酸素などを遠ざけたのか？

「ま、魔法でも消えない火が！？」
誰かの驚愕の声が聞こえてくる。

「すみません、止まらないっ！だ、誰か止めてください！！」
アルはそう叫ぶが、もちろん止まらず花は出続けて、一面花だらけになった。すると、なぜか火事の火の勢いは消えたていくのだった。

火事の中、一階に飛び降りた者も、たくさんの花がクッションになったおかげで助かり、泣きながら家族と抱き合う。

茶色い謎の生き物が、たくさんの花をだして、火事の消失。
その神の生き物はアルと名乗る。
謎の生き物アルは、この町で火事を消す神として、崇め奉られることになった。

ポポムはなんとなく馬車で一緒だった、奴隷のみんなの元へと戻った。
奴隷商人に掴まっていた皆は、突然の火事やらで呆然としている様子だ。

ポポムと同い年くらいのドワーフのノリも呆然としている。そのノリの美しい顔に、ポポムはどきどきする。
エルフの不細工だと称されるポポムが、そう思うのは迷惑だろうとすぐに顔をそらす。

「おい、そこの子供。俺の名前は、鬼のギゾル。お前も奴隷として連れてこられた身であろう？ここにずっといては、奴隷商人どもが戻ってくるぞ」
背の高い筋肉質な男が、呆然としている他の人？たちに言う。

鬼っているんだな。
そんなことをアルは思っていると、ポポムはアルを抱えて歩き出した。

「ち、ちょっと！！」
ソニアたちに会いに行きたいのに！！と伸ばしたアルの手はむなしく宙を切り、アルはポポムに連れられて歩き出した。