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第117話 ロゼット
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アルは騎士男二人に連れられ、牢屋の中を出た。
アルの前方にやってきた騎士は、アルに向かってウィンクする。アルは苦笑いで答える。
アルは絶世の美しい人間に見えるらしいが、どうみてもただの不細工な人間である。
ロゼット姫にはいろいろ頼みたいことがある。
もともと牢屋には体を洗う水浴び場がなかった。アルの騎士への色仕掛けで、なんとか受刑者たちの水浴び場ができたのだが。
しかし水浴び場とはいっても、牢屋の中になかった水道の水を、アルは頼み込んで、牢屋の中に水を飲む場所を作ってもらい、その場所を拡張して、体を洗っていい場所も作って、体をそこで洗う許可ができただけである。
肌寒い牢屋の中で、水で体を洗うのはきつい。お湯で体を洗いたいが。
そこまで考えて、アルは首を横に振る。
牢屋の待遇改善も重要だが、ソニアやジャファール達のいわれなき冤罪をはらすほうも重要だ。
ジャファールさんは無罪ではないのだが。
今はどうなのかアルにはわからないが、ジャファールさんは異様に長く留置されている。釈放されているのか、わからない。なんとか頼み込んでジャファールさんがレオン君に会えるようにしなければ。
これはチャンスだと思う。
シルベリアの現身とされているロゼットに頼み込めば、なんとかなるかもしれない。アルは決意して、拳を握りしめる。
シルベリア様!
アルの前に、いつの間にかいたシルベリアはにこりと、微笑んだ。
豪華な細工がほどかされた大きな扉には、甲冑を着た立派な騎士がいる。騎士は扉を開けてアルを中に招いた。
部屋の中にはロゼット姫が一人で、席についている。
出迎えてくれたロゼット姫は、アルからしてみると、たいそう麗しい姿に見える。
この世界からすると、アルが美しいと見えると、その正反対の不細工らしい。
つくづく不思議だなと、思う。
「いらっしゃいませ」
ロゼットは不機嫌な様子で、アルに言った。
アルはなんと答えたらいいのか、緊張しながら案内されて席に着いた。
アルが席に着くなり、ロゼット姫はアルを睨みつけた。
「あなたはなんなのです?あなたに面会を申し込んでいる貴族が二人もいます。あなたがその貴族たちをたぶらかしたのですか?」
そうロゼット姫がいうが、アルは何のことかわからず戸惑う。
アルには貴族の知り合いなんて、いない。
この世界に来てから、ずっと下町で暮らしていただけだし。戸惑うアルはロゼットに聞くことにする。
「あの、私に会いたいっていう貴族の方って、どなたでしょうか?」
「ヒヨルド伯と、ディストニアヴァニアー一族のアウローレンのお二方です」
「アウローレン?」
どこかで聞いた名前だ。
なんとか思い出そうとしていると、アルの脳裏に可愛い蝙蝠獣人の男の子ポアルと、その父親のアウローレンの姿が思い出される。
「まさかアルローレンさん?」
「ディストニアの一族は、人をひときわ憎んでいる古き一族の貴族の末裔なのですけどね。人間を気に掛けるなんて、びっくりしました」
「古き一族?貴族?」
確かアウローレンさんは奥さんが貴族って言っていたような?
「ディストニアは獣人と人との混血貴族。あなたは牢屋の中で散々な目にあってもまだ獣人達の味方をするんですね」
「あの私は獣人とか人とかを、区別して考えたことありません」
「私シルベリア様の現身であり、加護を受ける私には真実を見る目がある。犯罪者の思っている映像を見ることができる。
加害者は皆保身や醜い加害ばかり。あなたが罪びとの保護に走るのは結構ですが、被害者の方々はどうなるのでしょう?
加害者に同情したとしても、被害者にはなにも戻ってくるものがない。だからこそ、私は加害者への罰が必要だと考えるのです」
きらきら輝いて見えるロゼットに、アルは見ほれる。
なんて綺麗な人なのだろう?
それでもアルには譲れないものがある。
アルは意を決して、口を開く。
「罪がある人を全員死刑ではないと思います。事情を見なければ、事実なんて見えてこないんじゃないでしょうか?
私の知り合いは皆罪もないのに、連行されました。
罪を犯したかもしれないけど、誰も殺していないのに獣人だからといって罪が重すぎる人もいます!お願いです!罪びとでも正当な罰で、更生させてください!待っている人もいるのです!お願いします!もう一度罪や罰が本当に正しいのか、考え直してください!」
アルは思い切り、ロゼットに向かって頭を下げる。
「殺された人にとって、加害者の事情なんてどうでもいいでと思いますが。加害者の事情よりも、被害者の損失の深さで罪を決めるべきだと私は思いますが」
しずかにロゼットは呟く。
「けれど!」
「分かりました。好きにやってください。あなたが次世代のシルベリアなのだから」
「え?」
ロゼットの言っている意味が分からず、アルは声を上げる。
「私はシルベリアの現身としての役目を引退することにします。真実の目が何も見えなくなりましたから。あなたが女神シルベリアに選ばれたのですから」
呆気にとられたアルは、ロゼットの瞳をただ見つめる。
「姫様!!」
慌てた様子の黒い騎士がロゼットの元へとやってくる。
「ごめんなさい。クロエット。私にはもう真実は見えません。私にはもうシルベリアとしての役目はできないのです」
ロゼットは両目を覆って、項垂れた。
「ロゼット様!!」
ロゼットの騎士のクロエットの悲鳴が上がる。
「私はどうせ、シルベリアの役目か、どこぞの貴族に嫁がされる運命の王女。そこでも不細工と馬鹿にされるのでしょう。下手に高貴な血なので、愛する騎士とも結ばれない。結ばれたとしても、あなたが不幸になるのが目に見えている」
ロゼットは騎士クロエットに視線を向ける。
そして、アルの方をまた見た。
「ならばどこぞの馬の骨ともしれない平民と子を作ったら、お父様たちはどう思うのでしょうね」
そういって、ロゼットはにっこり微笑んだ。
「クロエット、あなたが私と結婚してくれないのならば、私は死ぬか、今この場でこのアルという人間と子作りします。あなたはどうしますか?」
「姫様!?まさか、この美しきものに心動かされたのですか?不細工な私はもう姫様には必要がないのですか?」
「そんなわけないじゃないですか。私はあなたのことが、あなただけが好きなのです。どうせ私に残された時間は少ない。その時間に、あなたと過ごしたいのです。
あなたにはいばらの道でしょう。不幸になる道しかない。けれど、私はそれしかないの。これが私の結論です。
王女ではない私には、あなたには価値がないでしょうか?」
ロゼットの目が、クロエットを見つめる。
クロエットは視線を逸らす。
「そんなわけないじゃないですか。こんな私にはあなたしかいないというのに」
「そう」
悲し気にロゼットは俯く。
あなたが不細工だから、不細工な私しかいないということなの?
ロゼットの物悲しげな顔から、アルはなんか感じ取ってしまった。
アルも不細工だからとか、さんざん言われて、いじめられたほうである。
どう言ったもんか困ったアルだが。思ったことを言うことにした。
「私、別に顔よくないですし…」
「何を言っているのです?ふざけていますか?」
ブチ切れ気味のロゼットに睨まれて、アルはすくみあがる。
「い、いえ。以前不細工だって、私いじめられていまして!その顔が不細工だろうが、美人だろうが、それは人の好みに過ぎないと思います!自分の思うままでいいのではないでしょうか?」
何言っているかアルは自分でもわからなくなって、とにかく思ったことを脈絡なく言う。
「綺麗ごとを言わないでください。あなたが不細工なら、私は何になるのでしょうね?」
ロゼットはため息をつく。
「私も不細工だって、よく陰で言われてきたものです」
アルは結構顔でいじめられていた。
アルから見たら、ロゼットはたいそうな美人である。つくづくおかしな世界だなと、アルは思う。
「あなたは綺麗ですよ」
ぽつりとアルは思ったことを言ってしまった。
それがいけなかったのかもしれない。
そのアルの言葉に、ロゼットは激怒した。
「嘘をつかないでください!そうやって、私まで誑かすつもりですか?なんて人間なのでしょうか!!」
「イ、いえ嘘じゃありません!すいません」
アルの中のキリルが何かやらかしてしまったのかもしれないと、アルは謝る。
つかつか近づいてきたロゼットがおもむろに、アルのことをひっぱたく。
い、痛い。
アルを睨みつけるロゼットの顔は、まるでトマトのように真っ赤に染まっていた。涙目で、アルを睨みつけている。
「ロゼット姫を誘惑するつもりか?ロゼット姫は私のものだ!!」
クロエットが、ロゼットの前に出て、アルを睨みつける。
「クロエット」
ロゼットは、クロエットのもとに立つ。
クロエットはロゼットの両手を握り、抱きしめ合う。
アルは呆然とその様子を見た。
「ありがとう、アル」
にっこりロゼットに感謝された。
それから呆気に取られているアルはまた牢屋に戻され、ロゼットとクロエットは幸せな時間を過ごす。
二人きりの時間を過ごし、時間が過ぎてしまいロゼットは職務に一人戻る。
そして、ロゼットはぼんやり鏡を見る。
その鏡には、シルベリアの美しい姿映る。
『武力と法。どちらかに傾く時、この法庁は滅びるときでもあります。どちらかに傾いてはいけないのです 』
そう女神シルベリアは言うと、後ろから切りつけられシルベリアの首が切り落とされた。
ロゼットは悲鳴を上げる。
鏡の中から、黒い手がロゼットに向かって伸ばされた。
その黒い手がロゼットの目に伸ばされたとたん、ロゼットの目に激痛が走る。ロゼットは悲鳴を上げる。
それを聞きつけたクロエットが走ってやってくる音がする。
「姫様!!」
「クロエット!どこなの!?」
目が激痛で、何も見えない。
ロゼットは必死で、大切な騎士であるクロエットを探す。
その時ロゼットの手に、暖かなごつごつした手が触れた。
「姫様、忘れないでください。私はいつでもあなたの側にいます。そして私、いや、俺はあなたをお守りします。決して、結ばれませんでしたが」
暖かな低い声。
ロゼットの大切な人の声だ。
「どうして?」
「さようなら、姫様」
「嫌です!」
クロエットの手が、クロエットの頬に触れて離れていく。
遠くで剣と剣がぶつかる音がする。そして、男のうめき声。
「クロエット!!」
目が見えないロゼットは必死で、クロエットを探す。
異世界貴族の階級(全部の種族ではない)
公宿=侯爵
佼宿=伯爵
子宿=子爵
分仔=男爵
敬愛の意味を込めて、伯とつけたりする。
この世界に漢字をもたらしたものがいて、天神(別名天人ともいう)という種族と交わり、独自に発展した。
アルの前方にやってきた騎士は、アルに向かってウィンクする。アルは苦笑いで答える。
アルは絶世の美しい人間に見えるらしいが、どうみてもただの不細工な人間である。
ロゼット姫にはいろいろ頼みたいことがある。
もともと牢屋には体を洗う水浴び場がなかった。アルの騎士への色仕掛けで、なんとか受刑者たちの水浴び場ができたのだが。
しかし水浴び場とはいっても、牢屋の中になかった水道の水を、アルは頼み込んで、牢屋の中に水を飲む場所を作ってもらい、その場所を拡張して、体を洗っていい場所も作って、体をそこで洗う許可ができただけである。
肌寒い牢屋の中で、水で体を洗うのはきつい。お湯で体を洗いたいが。
そこまで考えて、アルは首を横に振る。
牢屋の待遇改善も重要だが、ソニアやジャファール達のいわれなき冤罪をはらすほうも重要だ。
ジャファールさんは無罪ではないのだが。
今はどうなのかアルにはわからないが、ジャファールさんは異様に長く留置されている。釈放されているのか、わからない。なんとか頼み込んでジャファールさんがレオン君に会えるようにしなければ。
これはチャンスだと思う。
シルベリアの現身とされているロゼットに頼み込めば、なんとかなるかもしれない。アルは決意して、拳を握りしめる。
シルベリア様!
アルの前に、いつの間にかいたシルベリアはにこりと、微笑んだ。
豪華な細工がほどかされた大きな扉には、甲冑を着た立派な騎士がいる。騎士は扉を開けてアルを中に招いた。
部屋の中にはロゼット姫が一人で、席についている。
出迎えてくれたロゼット姫は、アルからしてみると、たいそう麗しい姿に見える。
この世界からすると、アルが美しいと見えると、その正反対の不細工らしい。
つくづく不思議だなと、思う。
「いらっしゃいませ」
ロゼットは不機嫌な様子で、アルに言った。
アルはなんと答えたらいいのか、緊張しながら案内されて席に着いた。
アルが席に着くなり、ロゼット姫はアルを睨みつけた。
「あなたはなんなのです?あなたに面会を申し込んでいる貴族が二人もいます。あなたがその貴族たちをたぶらかしたのですか?」
そうロゼット姫がいうが、アルは何のことかわからず戸惑う。
アルには貴族の知り合いなんて、いない。
この世界に来てから、ずっと下町で暮らしていただけだし。戸惑うアルはロゼットに聞くことにする。
「あの、私に会いたいっていう貴族の方って、どなたでしょうか?」
「ヒヨルド伯と、ディストニアヴァニアー一族のアウローレンのお二方です」
「アウローレン?」
どこかで聞いた名前だ。
なんとか思い出そうとしていると、アルの脳裏に可愛い蝙蝠獣人の男の子ポアルと、その父親のアウローレンの姿が思い出される。
「まさかアルローレンさん?」
「ディストニアの一族は、人をひときわ憎んでいる古き一族の貴族の末裔なのですけどね。人間を気に掛けるなんて、びっくりしました」
「古き一族?貴族?」
確かアウローレンさんは奥さんが貴族って言っていたような?
「ディストニアは獣人と人との混血貴族。あなたは牢屋の中で散々な目にあってもまだ獣人達の味方をするんですね」
「あの私は獣人とか人とかを、区別して考えたことありません」
「私シルベリア様の現身であり、加護を受ける私には真実を見る目がある。犯罪者の思っている映像を見ることができる。
加害者は皆保身や醜い加害ばかり。あなたが罪びとの保護に走るのは結構ですが、被害者の方々はどうなるのでしょう?
加害者に同情したとしても、被害者にはなにも戻ってくるものがない。だからこそ、私は加害者への罰が必要だと考えるのです」
きらきら輝いて見えるロゼットに、アルは見ほれる。
なんて綺麗な人なのだろう?
それでもアルには譲れないものがある。
アルは意を決して、口を開く。
「罪がある人を全員死刑ではないと思います。事情を見なければ、事実なんて見えてこないんじゃないでしょうか?
私の知り合いは皆罪もないのに、連行されました。
罪を犯したかもしれないけど、誰も殺していないのに獣人だからといって罪が重すぎる人もいます!お願いです!罪びとでも正当な罰で、更生させてください!待っている人もいるのです!お願いします!もう一度罪や罰が本当に正しいのか、考え直してください!」
アルは思い切り、ロゼットに向かって頭を下げる。
「殺された人にとって、加害者の事情なんてどうでもいいでと思いますが。加害者の事情よりも、被害者の損失の深さで罪を決めるべきだと私は思いますが」
しずかにロゼットは呟く。
「けれど!」
「分かりました。好きにやってください。あなたが次世代のシルベリアなのだから」
「え?」
ロゼットの言っている意味が分からず、アルは声を上げる。
「私はシルベリアの現身としての役目を引退することにします。真実の目が何も見えなくなりましたから。あなたが女神シルベリアに選ばれたのですから」
呆気にとられたアルは、ロゼットの瞳をただ見つめる。
「姫様!!」
慌てた様子の黒い騎士がロゼットの元へとやってくる。
「ごめんなさい。クロエット。私にはもう真実は見えません。私にはもうシルベリアとしての役目はできないのです」
ロゼットは両目を覆って、項垂れた。
「ロゼット様!!」
ロゼットの騎士のクロエットの悲鳴が上がる。
「私はどうせ、シルベリアの役目か、どこぞの貴族に嫁がされる運命の王女。そこでも不細工と馬鹿にされるのでしょう。下手に高貴な血なので、愛する騎士とも結ばれない。結ばれたとしても、あなたが不幸になるのが目に見えている」
ロゼットは騎士クロエットに視線を向ける。
そして、アルの方をまた見た。
「ならばどこぞの馬の骨ともしれない平民と子を作ったら、お父様たちはどう思うのでしょうね」
そういって、ロゼットはにっこり微笑んだ。
「クロエット、あなたが私と結婚してくれないのならば、私は死ぬか、今この場でこのアルという人間と子作りします。あなたはどうしますか?」
「姫様!?まさか、この美しきものに心動かされたのですか?不細工な私はもう姫様には必要がないのですか?」
「そんなわけないじゃないですか。私はあなたのことが、あなただけが好きなのです。どうせ私に残された時間は少ない。その時間に、あなたと過ごしたいのです。
あなたにはいばらの道でしょう。不幸になる道しかない。けれど、私はそれしかないの。これが私の結論です。
王女ではない私には、あなたには価値がないでしょうか?」
ロゼットの目が、クロエットを見つめる。
クロエットは視線を逸らす。
「そんなわけないじゃないですか。こんな私にはあなたしかいないというのに」
「そう」
悲し気にロゼットは俯く。
あなたが不細工だから、不細工な私しかいないということなの?
ロゼットの物悲しげな顔から、アルはなんか感じ取ってしまった。
アルも不細工だからとか、さんざん言われて、いじめられたほうである。
どう言ったもんか困ったアルだが。思ったことを言うことにした。
「私、別に顔よくないですし…」
「何を言っているのです?ふざけていますか?」
ブチ切れ気味のロゼットに睨まれて、アルはすくみあがる。
「い、いえ。以前不細工だって、私いじめられていまして!その顔が不細工だろうが、美人だろうが、それは人の好みに過ぎないと思います!自分の思うままでいいのではないでしょうか?」
何言っているかアルは自分でもわからなくなって、とにかく思ったことを脈絡なく言う。
「綺麗ごとを言わないでください。あなたが不細工なら、私は何になるのでしょうね?」
ロゼットはため息をつく。
「私も不細工だって、よく陰で言われてきたものです」
アルは結構顔でいじめられていた。
アルから見たら、ロゼットはたいそうな美人である。つくづくおかしな世界だなと、アルは思う。
「あなたは綺麗ですよ」
ぽつりとアルは思ったことを言ってしまった。
それがいけなかったのかもしれない。
そのアルの言葉に、ロゼットは激怒した。
「嘘をつかないでください!そうやって、私まで誑かすつもりですか?なんて人間なのでしょうか!!」
「イ、いえ嘘じゃありません!すいません」
アルの中のキリルが何かやらかしてしまったのかもしれないと、アルは謝る。
つかつか近づいてきたロゼットがおもむろに、アルのことをひっぱたく。
い、痛い。
アルを睨みつけるロゼットの顔は、まるでトマトのように真っ赤に染まっていた。涙目で、アルを睨みつけている。
「ロゼット姫を誘惑するつもりか?ロゼット姫は私のものだ!!」
クロエットが、ロゼットの前に出て、アルを睨みつける。
「クロエット」
ロゼットは、クロエットのもとに立つ。
クロエットはロゼットの両手を握り、抱きしめ合う。
アルは呆然とその様子を見た。
「ありがとう、アル」
にっこりロゼットに感謝された。
それから呆気に取られているアルはまた牢屋に戻され、ロゼットとクロエットは幸せな時間を過ごす。
二人きりの時間を過ごし、時間が過ぎてしまいロゼットは職務に一人戻る。
そして、ロゼットはぼんやり鏡を見る。
その鏡には、シルベリアの美しい姿映る。
『武力と法。どちらかに傾く時、この法庁は滅びるときでもあります。どちらかに傾いてはいけないのです 』
そう女神シルベリアは言うと、後ろから切りつけられシルベリアの首が切り落とされた。
ロゼットは悲鳴を上げる。
鏡の中から、黒い手がロゼットに向かって伸ばされた。
その黒い手がロゼットの目に伸ばされたとたん、ロゼットの目に激痛が走る。ロゼットは悲鳴を上げる。
それを聞きつけたクロエットが走ってやってくる音がする。
「姫様!!」
「クロエット!どこなの!?」
目が激痛で、何も見えない。
ロゼットは必死で、大切な騎士であるクロエットを探す。
その時ロゼットの手に、暖かなごつごつした手が触れた。
「姫様、忘れないでください。私はいつでもあなたの側にいます。そして私、いや、俺はあなたをお守りします。決して、結ばれませんでしたが」
暖かな低い声。
ロゼットの大切な人の声だ。
「どうして?」
「さようなら、姫様」
「嫌です!」
クロエットの手が、クロエットの頬に触れて離れていく。
遠くで剣と剣がぶつかる音がする。そして、男のうめき声。
「クロエット!!」
目が見えないロゼットは必死で、クロエットを探す。
異世界貴族の階級(全部の種族ではない)
公宿=侯爵
佼宿=伯爵
子宿=子爵
分仔=男爵
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