記憶喪失で美醜反転の世界にやってきて救おうと奮闘する話。(多分)

松井すき焼き

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第118話 牢屋の夜 上

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犯されている間生理的な反応で、アルの体が反応すると、「犯されたがっているんだろう?」とアルの上にいる狼獣人の男が笑う。
アルはため息をつく。
「違いますよ」
体が反応したからといって、何故強姦されたいなぞ思うのだろうか?
激しくゆすられて、ううっと、アルはうめき声をあげる。ふさふさの狼の体の毛が、アルの裸の皮膚にあたり、獣臭いし汗臭いしノミが跳んでて痒いし、最悪である。

催眠で抱きしめる=性的な行為と狼獣人に暗示をかけまくっているが、実際犯されていない場合が多いとはいえ、狼獣人たちはアルの体を乱暴に扱うので、結構噛み跡とかからだにきずが後を絶たなかった。

ロゼット姫に呼びだされて、また牢屋の中に戻ってきてすぐこれである。
ソニアたちのことはどうなったのだか、悠長にしている場合じゃないというのに。ヴェルディになんとかアポを取ってもらえるように、見張りの騎士にお願いするしかないのかもしれないと、アルは歯を食いしばりながら考える。

「お前、綺麗すぎて、喰いたくなる」
べろりと、オオカミは舌なめずりする。
オオカミが目を光らせ、アルに牙をむこうとした瞬間、そのオオカミはシロウに殴られて、吹っ飛んだ。
片腕だと感じさせない、シロウのすさまじい腕力に、殴られたオオカミは、壁にめりこんでいる。

呆気にとられるアルの横に、やれやれとシロウがやってきて胡坐をかく。
「あいつら、お前さんが優しいから、調子こくんだ。一発噛みついてやれ」
「無理です。怖いです」
みんな狼の姿をしている人間は、筋肉ムキムキの姿をしている。アルがかなうわけがない。シロウは今のところ、アルに乱暴しようとはしない。そんな性衝動があるように見えない達観した様子である。

遠くから赤毛の狼のバルバロスが、シロウの方を睨んでいるのが見えた。
バルバロスはシロウのことをなぜか毛嫌いしている。

「アルさん!やっほー!!大丈夫ですか?本当に乱暴なんだから。発情期の狼ほど手に負えないものはないですよ」
下っ端と言われている白狼の獣人のシラノがやってきて、アルの背中に腕を回してくる。じっとりと下触り方である。

アルは内心げっそりする。
この牢屋の中の狼たちは、アルのことをたいてい、群れの中に迷い込んだか弱い女扱いする。
それもとびきりの美人扱いだ。アルを見る視線が、独特だ。

昔アルの同級生の梓を思い出す。男たちのグループの中で、美人の梓は、男たちにちやほやされていたように見えて、いじめられていたアルは、そんな梓を羨ましいとさえ思っていたが、実際そのような立場になると、セクハラ連発やら、まるで性処理をする人形のように扱う。同じ同等の人間と思っていないような扱いだ。
凶悪犯がいる牢屋だからかもしれないが。
あとなんだかアルから一歩引いている感じがする。アルと顔が合うと、赤面する獣人とか。アルなんて、ただの一人の不細工な人間にすぎないのに、妙に意識されて気まずい。
全員とは言わないが、なんだか妙な扱いで、アルは居心地が悪いと感じていた。

「あの、狼さんって、発情期なんですか?今」
アルの質問に、ため息をついて白狼のシラノは言う。
「狼に限りなく近いとはいえ、狼とは違う獣人ですからね。そりゃ発情期は頻繁にそれなりにありますよ。
普通はボス狼のメスカオスしか交尾はしないんですけど。この狭い檻の中だからね、すぅーぐ殺し合いになっちまうから、一番下っ端が性処理役になるって取り決めができたらしいです。嫌だねぇー。僕なんて、小柄だからすぐ女扱いされる。でもさ、僕よりも小柄の奴が入ってきてくれたから、ラッキーだなって」
白狼の手がアルの臀部をはう。

アルの背筋がぞわぞわ怖気だつ。大変嫌な触り方である。
白狼の舌がアルの首筋から耳を舐めあげた。ぶんぶん白狼の尻尾が揺れている。
「アルは最高」
 アルの中を、あらぬところを触りつつ鼻息が荒く迫ってくるシラノに、アルはため息をついて、右手を動かす。
アルのマッサージテクニックの出番である。
白狼の毛並みを整えつつ、優しくマッサージを繰り返す。
そうすると、頭皮ではなく毛並みの汚れも取れやすくなるのである。

アルのマッサージに、シラノは「きゃぅん!」と、甲高い悲鳴を上げて、身もだえた。
「そ、そこだめ」
涙声でシラノは希うが、アルは容赦はしない。
シラノの全身を、マッサージをしまくった。

完璧である。
自身の完璧なマッサージに、アルは額の汗をぬぐい、満面の笑みを浮かべる。

何もできずにアルのマッサージに翻弄され、床に撃沈した白狼は、涙目でアルを睨む。
「卑怯ですよ!!」
「マッサージならいくらでもしますが、それ以外はお断りです」
「僕が本気出したらそうはいかないですからね!覚えておけよ!!」
と言われ、アルは指をさされてしまった。

言われたアルは飛んでたノミを捕まえて、「あ、ノミ」とつぶした。

他の狼に、童貞とからかわれていた白狼シラノさんは、アルと一緒に寝たことはない。
アルも童貞だが、無理やり手籠めにしようとするのはやめてほしいと思う。

もうすぐ夜である。

正確な時刻や、牢屋には日の光はあまり届かない。だが、なんとなく眠たくなるので、わかる。
アルの体がカタカタ震えてくる。
夜になると、クロウは毎夜アルを殺そうとやってくる。凄まじい苦痛の時間の始まりだった。
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