/// Tres

陽 yo-heave-ho

文字の大きさ
79 / 195
□海篇 The Pirates and Secret Treasure.

2.07.1 渦中の者達

しおりを挟む
 何度目かの起床。
 確か8日か…いや、もう10日かも。
 此処に入れられて、二日くらい嵐の中で過ごして、ぶっ壊してやった舵が直ったのか動き出して…
 四六時中薄暗い船底からじゃ、今が昼か夜かもわからねぇ。
 手も足も痛い。ずっと拘束されたまま同じ姿勢で身体中軋む。手当ては最低限、焼けた左腕が痒い。腹に弾の破片が残ったみてぇで、これも痛い。蛆が湧いてないからマシだけど。
 飯は何度か食ったが不味い上に少ねぇ。誰か来ても船医と下っ端が数人。オーウェンもソロウも、あの二人も、あれ以来見てない…

「……なぁ」
 キースはカサついた唇を動かし、日課の会話を始めた。
 一方的な会話。返ってこないキャッチボール。それは隣の檻に居るラッカムへ向けたもので、大海賊は寝ているのか無視なのか目を瞑ったまま。死んでいないのは確かなのだが。
「なぁ…いい加減、返事しろよ」
「……」
「わけわかんねぇイザコザに巻き込みやがって、バカイゾク」
「……」
「ずーっと黙ってるつもりか?都合が悪くなると、そうやって、ずっとずーっと」
「……」
「…老いぼれクソジジィ」
「……」
「……マジでクソ」
 ラッカムは返事どころか微動だにせずで、余計苛立ちが増す。
 遠くで鐘の音が聞こえる。それは甲板からで、何の合図なのか。キースはゆっくり息を吐くと第二の日課を口にした。
「ビアンカの、ペンダント」
「……」
「あんたが壊したんだろ、あれ。いい加減話せよ。中身の赤い石は、地図と関係してる」
「……」
「それに、他にもまだ……」
 返事の代わりに鋭い睨みが返ってくる。さて今日もいただきました、いい反応。相変わらず怖ぇ怖ぇ、檻の中でよかった。今日こそはお喋りしてくれよ…
「…他にも、まだあるだろ?赤い石とは別のもん…あんたはそれを、ビアンカも一緒に守った。だよな?」
 第二の日課は真相究明。ラッカムへの挑発といってもいい。試しに開けたと伝えたのが三日前で、それからこの話題の度に強烈な睨みが返ってくるようになった。結局、睨みだけだが。
 この老人の威圧感は未だに慣れない。ただ睨まれているだけなのに、身体が強張り緊張してしまう。それでももう少し粘ろうとした時、
「クソガキ…少し黙ってろ」
 なんとラッカムが喋ったのだ…と、同時に屋根の一部が開き誰かが下りてくる。二人共気配に視線を向ける。現れたのはハリソンと数人の軍兵と、ジェラルドだった。
 薄暗い船底を複数のランプが照らし出す。光を翳しこちらを窺う彼らに対し、二人も黙って睨みつけた。ハリソンがラッカムの檻の鍵を開け、兵達が中に入り無理矢理立たせ引っ張り、さらにキースの檻も開けられ、ジェラルドが入ってきて、
「…見てんじゃねぇッ」
「……」
 距離を取ったまま見下してくるジェラルド。あからさまに威嚇するキース。
「なぁにしてんだ?」
「!」「……」
「お前こそ、何しに来た?」
「迎えに来たんだよ、大海賊を。あんたらだけじゃ心配なんで」
 また一人、オーウェンが姿を現しニヤニヤしながらジェラルドに声をかける。黙ったままの彼に代わりハリソンが答えるが、オーウェンの興味はジェラルドだけのようで、
「今日はラッカムの尋問だろ?そいつに用はねぇはずだ。どうした?」
「…お前には関係ない」
「関係ない、ねぇ?…どうかなぁ」
 格子越しに顔を覗けば暗い中でもわかる鋭い瞳に睨まれ、オーウェンは笑い声を上げた。
「迎えに来たなら連れて行け!」
 ハリソンがラッカムを引っ張り出し鎖をオーウェンに押し付ける。彼は苦笑いして受け取るが、
「見事だった」
「?」
だ、剣の腕もいい…軍人やらすにゃ勿体ねぇ」
 立ち止まったラッカムが口を開き、ジェラルドに視線を向ける。オーウェンも兵達もわからず眉を寄せたが、ハリソンは一瞬顔を強張らせてしまう。
「お喋りなら上で聴く…嫌だと言っても、喋ってもらう」
 返事をしたのはジェラルドで、彼は肩越しにラッカムを睨みつけた。感情のない瞳を真っ向から受け止めラッカムは笑みを深めた。
 二人がそれ以上言葉を交わすことはなく、オーウェン達がラッカムを連れて行く。彼らの姿が甲板に消え、ハリソンは近づく気配がないか窺い…振り返り、
「大丈夫だ、これを」
 言って投げ渡したのは枷の鍵で、ジェラルドは受け取ると手早くキースの足枷を外しはじめた。
「っ…なんだよ」
「手当ての続きだ、このままじゃ化膿して死ぬぞ」
「は?おい、」
「騒ぐな、あまり時間がない」
「ちょっとま、」
「お前の尋問は明日。何か知ってるなら吐け、それで済む。陸に着くまでは守ってやれる」
「!?」
 足枷が外れ、今度は両手のを外そうとするが…キースが勢いよく飛びかかり、ジェラルドを床に押さえ付ける。まだ外していないはずの手枷は両手とも外れていて、見事枷抜けまでしてみせたキースは怒りのままに首を絞めた。
「!ッ…止せ!」
 ハリソンが慌てて止めに入りキースを押し退ける。ジェラルドは顔を歪めながらも枷の鎖を捕まえ、キースは引っ張られようとも二人から距離を取り、警戒心を剥き出しにした。
「ふざけんなッ、どういうつもりだ!?」
「聞け!エフライム、」
「偉そうに、守ってやるだと!?死ねよクソ野郎!テメェらで撃ったり斬ったり焼いたり!挙句手当てとかッ、意味わかんねぇんだよ!!」
 怒鳴り散らすキース。二人共何も言えず、ただの睨み合いになってしまう。

 あの時──船上での戦いでキースは左腕を火傷し、そこにあった刺青は綺麗に焼かれ消えてしまった。あの火傷は偶然ではなく、戦いの最中でジェラルドが仕組んだものだった。
「大人しくしろ…『刺青は?』盗人が『あるのか?』…」
「!」
「『まだあるだろ?』…わかったのか?
「……あぁ」
 ジェラルドに取り押さえられた時、キースにしか見えない、声とは別の口の動きが言葉を伝えてきた。音のないそれに覚えがあった。ハッキリ見えた者なら即座に理解出来る。読唇術の逆、と言えばよいのか。こういうことは無駄に器用なんだこいつは…そしてキースは問いかけに答えたのだ。
 このことを知っているのは二人とハリソンだけ、のはずが、先ほどの発言でどうやらラッカムも気づいているようだった。

 キースはジェラルドの行動がわからず、というかまったく理解出来ずで、憎悪にも似た怒りに苛まれていた。刺青を消したのは彼の保身の為…こいつにも同じものがあるから。そう思っていたのに。ジェラルドも何か察したのか眉間の皺を深くし、鎖をハリソンに渡すと牢から出て、
「…後は頼んでいいか?」
「ああ…なぁ、ジェラルド」
 足を止めた彼に大丈夫かと声をかければ、小声だけが返ってきて、そのまま上に戻って行ってしまった。
「なんなんだよテメェらはッ、何がしてぇんだ!?」
「いいから…手当てするぞ。頼むから大人しくしてくれ」
 怒りをぶつけるキースにハリソンは冷静を装い接して、暴れようとする腕を捕まえた。
 彼が反発するであろうことは予想していた。それでも一筋縄どころか拗れるばかりの現状に、ハリソンは奥歯を噛み締めた。

 また鐘が鳴る。働く軍兵達を避けながら、ジェラルドは上甲板へ向かっていた。キースの言葉が繰り返し頭に響く。わかってる、意味不明だ。お前の言う通り偉そうなことも言って。
 無意識に右手が動き左腕を掴む。あれは特別、だから辛かったはずだ…
(こうするしかなかった…でなきゃあいつも俺も、終わる…)
 何度も自身に言い聞かせるが、まるで抜けなくなった棘のような、小さくも煩わしい痛みに苛まれる。
 梯子口を上がったところで軍兵が一人現れ敬礼された。
「副指揮官殿、'閣下'がお呼びです!」
「今行く。ラッカムは?」
「尋問が始まったところで、<昇り竜>が、」
「止めろ…ただの海賊だ」
 つい言い返してしまい、咄嗟に付け足す。軍兵は一瞬顔を強張らせたが、また敬礼すると足早に行ってしまった。今甲板は忙しなく慌ただしい。遠くから呼び声(というか怒鳴り声)がして、思わず舌打ちをもらすと周りから視線を感じた…聞かれたところでいい、別に。
 ジェラルドはまた歩き出し、ソロウのもとへ向かった。旗艦はちょうど錨を下ろしたところで、合流した軍の補給船から橋板が架けられようとしていた。


 ──バルハラ軍艦船隊とラッカム一味の一戦から、二週間。

 一味の敗北、艦船隊の勝利、裏切り行為、<大海賊ラッカム>が捕まっただの死んだだの…凡ゆる話が南方諸島で噂され、そして陸、兎角バルハラへも広まっていった。
 正規の伝書鳩はまだ来ずで、しかし噂を吉報として受け取った南部統括は素直に喜び、上官も兵卒も浮き足立って艦船隊の帰りを待っていた。ノクシアやパールといった大きな街でも、人々は信じ難い内容に眉を顰めたが、やはり噂は瞬く間に広がりラッカム一味の終わりを囁き合い…
 一味がバルハラ軍南部統括に敗れたことだけは事実だと、誰かが言い、広まっていった。

「素晴らしい成果だねぇ。'田舎者'だけど、誇らしく思うよ」
「ありがとうございます。ですが…将軍であるあなたをそんな名で呼ぶのは、どこの命知らずです?」
「あれぇおかしいな、僕の目の前にいるけど」
「あはは!ご冗談がお上手で!」
 ルミディウスが笑い声を上げ、向かいに座る北部統括長将軍ライザーも朗らかに笑った。
 ノクシア離島基地、通称砦。
 急な訪問にも関わらず留守番のルミディウスは快く迎えてくれたが、愛想笑いなのは丸わかり。だが正反対のウィステリア基地から遥々やって来たライザーにとっては、彼に会えたのは好都合だった。
 扉がノックされ軍兵が入って来る。冷茶が目の前に置かれ、ルミディウスは漸く笑うのを止めた。
「…それで、異動の件がご不満だと?」
「ハッキリ言うね…まぁ、結局はそういう話だよ。あからさまに喧嘩売ったよね、君」
「喧嘩とは?ははっ、また冗談ですか?デュレーの異動は彼の意思です。私の誘い方が上手かったのかも」
「その割に、随分と扱き使ってくれて。難儀な隊に押し込めて、成果が無ければ即解隊」
「とんでもない!解隊に至ってしまったのは、のお考えもありまして…寧ろ彼の真面目さには皆が感化されてます。引っ張られるほどだ」
「…引っ張られる」
「はい、まるでのように。ああ、勿論名犬です。北部育ちの血統書も付いてて素晴らしい。今回の件も快く引き受けてくれました。戻ったら褒美を与えないと」
「…いやぁ、ホント君は…」
 レモンを沈めながらグラスを傾け、冷茶を口に運ぶ。視線の先のライザーは苦笑いし頭を掻いて、何故か立ち上がり、
「お口がお上手。それに解ってないね…あれは犬じゃない。そのうち噛まれるよ」
「またまた…ご冗談を。犬が主人を噛めるわけないじゃないですか」
 見下ろしてくるライザーにルミディウスも対抗する…どちらも目は笑っておらず、ライザーに至っては殺気が滲んでいる。
「兎に角困るんだよ、デュレーの代わりが5人ぽっち。二、三年物の兵卒なんて全然足りない。そもそも異動は僕の承諾無しだった…返さないならもっと寄越しなさい」
「…承知しました、手配します」
「それから……此処だ、おい。元首の許可は得てんだろうな?」
 茶に口も付けず早々に去ろうとするライザーを見て兵が慌てて扉を開けるが、彼は振り返りルミディウスの背中を見据えた。
 唐突に荒くなった口調に兵は固まってしまう。ライザーが言っているのは砦のことで…だがルミディウスは振り返ることなく、ただただ笑っていた。
「それはの仕事です。私もお邪魔させていただいてる身で…勿論抜かりないでしょう」
「……」
 さようならと付け足し、漸く肩越しに笑顔を返すが、
(消えろ田舎者)
 その裏では毒づき、面会は終わった。

 夕刻、ノクシア基地にて。
 連日雨続きで湿気が酷く、今日もそんな日だったが、ライプニッツは雨が好きなのか機嫌が良く(しかし雷は嫌なようで昨夜は付きっきりだった)、お世話係ブラウンも手間がかからず助かっていた。
 雨の街に連れ出してやろうと支度をするが、雨とは別で連日続いている問題が生じ、思わず溜息をもらす。ライプニッツの頭絡が無いのだ。
(またか…デュレーさんのなのに)
 いや、だからか。馬具の紛失は任されている自身の落ち度だ。自身が叱られるように何処かへ隠されて…捨てられてはないと思う。俺の罰や除隊が目当てかな?散歩から戻ったら探さなきゃ。
「ごめんな、今日も首で我慢して……どした?」
 頭絡代わりのロープを首に巻いてやる。機嫌が良いから出来るものの、我儘な時にやるとイヤイヤされると、この二ヵ月でブラウンは学んでいた(その程度で済むのも彼だけなのだが)。しかしロープを引いてもライプニッツは動かずで、何やら警戒しているようだった。
「おい'青毛'!」
「いいご身分だなぁ、馬の世話だけで金貰ってんのか!」
 背後で声がし、ついビクりとしてしまう。
 呼び方でわかるこの後のこと。チラりと振り返れば厩舎の出入口に軍兵が二人立っていて、その手には頭絡…やはりそうだ。'青髪'の自身が気に入らなくて、盗んだんだろう。
「…返してください。僕なら何でもしますから」
 苦笑いして言えば二人はニヤりと笑い、ライプニッツが嫌そうに嘶いた。何でもとは言ったが場所を変えねば、ライちゃんの機嫌損ねるな…なんて考えていると、
「!…あ、」「…ヤバ、」
「何してる?」
「ッ、い、いえ!これはその、」
「それは奥の子のか?」
「…はい」
「ふぅん」
 軍兵達の視線が違うほうへ向き、顔色が変わる。ブラウンからは見えなかったが、どうやら上官が現れたようで、手を出したその人へ軍兵は頭絡を渡すのだが…ライザーは至極不機嫌そうに引っ手繰り睨み返した。
「'青髪差別'で暇潰しかい?こっちはお行儀のいい奴ばっかだねぇ、いっそ清々しいな」
「ひ…ぁ、っ…」
「今すげぇ機嫌悪ぃの。消えろクズ」
 言われた途端軍兵達は逃げていき、ライザーは舌打ちをもらした。
 青い髪の人種への差別的行為は国や世界全体での問題だったが、今のライザーの神経を逆撫でるには充分過ぎることだった。
「あ、あの」
「!…大丈夫?怪我は?」
 振り返るといつの間にかブラウンが近くに来ていて、ライザーは柔らかい表情に戻り頭絡を渡してやる。
「いえ、ありません…あのっ、ホントに助かりました、みにあまる光栄です、ありがとーございますッ」
「大袈裟だなぁ」
「だっ…です、が、北部の、ショーグン閣下に、助けていただいて、」
「'閣下'じゃない」
 何度も頭を下げおかしな喋り方をするブラウンに、ライザーは思わず笑ってしまう。ブラウンは笑われようとも頑なで、先ほどよりも身体を強張らせ緊張していた。昨日から来ているという北部統括長の噂は本当で、今まさに自身に降りかかっていて、恐怖でしかない。
「あの馬は、君が面倒を?」
「ふぇ……あ、はい。ライプニッツという名で、僕のではなく、」
「ジェラルド・デュレーの愛馬」
 言い当てたライザーは嬉しそうな表情で、ブラウンは少しだけ気持ちが解れる。ライプニッツも見覚えがある顔をまじまじと見つめていた。
「はい。ご存知でしたか」
「元部下だしね。あいつは気難しいが、速いし出来る」
「はい。少し怖がりなだけで、いい子です。副指揮官殿がいない間は、時々我儘ですけど」
「怖がりで我儘か…ははは!」
 二人でライプニッツを眺めていると、彼は恥ずかしいのかお尻を向けてしまい、ブラウンも漸く顔を綻ばせ笑った。
「あいつを頼むよ」
「はい」
「そうだ、君なら大丈夫かな…これを渡しといてくれ。戻った時でいい」
「?デュ…副指揮官殿へ、ですか?」
「そう」
 ライザーは胸ポケットから小さな紙を出すとブラウンへ渡した。
「わかりました…ライザー将軍、本当にありがとうございました!」
「なんのなんの。ああいう馬鹿共には、気をつけなさい」
 隣の厩舎に付けられていた馬車がやって来て、ライザーはヒラヒラと手を振り行ってしまう。従者役の軍兵は四人もいて、さらに騎馬兵が四騎現れる。兵達が跛をひくライザーを支えようとするが、彼は躓いたり転んだりせず、自身の両脚で馬車に乗り込み、去って行った。
「……ん??いや…お前のことだよな」
 無事に戻った頭絡をライプニッツに付けてやりながら、ふと思う。今のはライちゃんの話のはず、なんとなくだが話し方に違和感が…渡された紙も気になり、つい中を覗く。しかし紙にはYesとSisterとしか書かれておらず、なんのこっちゃで眉を寄せた。
 ブラウンは深く考えず、紙をポケットにしまいライプニッツと共に雨の街へ出かけて行った。
 歩きながら考えるのはただ一つ。ラッカム一味敗北の噂だ。


 噂の渦中にあるラッカム一味はというと──

 或る日。南方諸島の西側、無人島ばかりが多い海域にて。
 エルドレッド海賊団はテンペスト号と幾つかの小型船に乗り込み、真っ暗な海を進んでいた。大きな嵐が過ぎ時化も続いたが、今は穏やかな風と波で、空では星々が輝いている。
「見えたか…?」
「わかんない…ホントにここ?」
「場所は合ってる。あとは奴らが死んで、」
「やめて!縁起悪いでしょ…」
 お互いに目も合わせず会話し、また静かになる。
 声の主はイザベラで、彼女は船尾の縁から身を乗り出し何かを探していた。見張りの船員達からも何もなく、エルドレッドは短く息を吐き舵を切ろうとするが、
「…待って!」
 イザベラが声を上げ頭上を指差す。
 暗闇のマストの上を旋回する影、'魔法の鳥'だ。一週間程前に報せを寄越し、今は道案内役のそれが戻って来ていた。
 鳥はまた何処かへ飛んで行きテンペストも後を追う。行き着いたのは大型船一つほどの小島で、よく見れば木々が海にまで出張っていて…その内側、枝や葉の隙間から微かな光が漏れていた。
「Qui est quelqu’un?!」
 操舵を船員に任せ、イザベラと共に様子を窺う。返事はない。だがそこに人がいるのは確かだ。
「……おいッ、リン!!」
 叫びランプを掲げる。イザベラも押し黙りじっと見つめる……すると漸くガサッと音がし、木々がしなり跳ね上がって──
 姿を現したのは小舟が一隻と、手を振るゼスだった。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

魔力ゼロの英雄の娘と魔族の秘密

藤原遊
ファンタジー
魔法が支配する世界で、魔力を持たない少女アリア・マーウェラ。彼女は、かつて街を守るために命を落とした英雄的冒険者の両親を持ちながら、その体質ゆえに魔法を使えず、魔道具すら扱えない。しかし、彼女は圧倒的な身体能力と戦闘センスを武器に、ギルドでソロ冒険者として活動していた。街の人々やギルド仲間からは「英雄の娘」として大切にされつつも、「魔力を捨てて進化した次世代型脳筋剣士」と妙な評価を受けている。 そんなある日、アリアは山中で倒れていた謎の魔法使いイアンを助ける。彼は並外れた魔法の才能を持ちながら、孤独な影を背負っていた。やがて二人は冒険の中で信頼を深め、街を脅かす魔王復活を阻止するため、「カギ」を探す旅に出る。 しかしイアンには秘密があった。彼は魔族と人間の混血であり、魔王軍四天王の血を引いていたのだ。その事実が明らかになったとき、アリアは「どんな過去があっても、イアンはイアンだよ」と笑顔で受け入れる。 過去に囚われたイアンと、前を向いて進むアリア。二人の絆が、世界を揺るがす冒険の行方を決める――。シリアスとギャグが織り交ざる、剣と魔法の冒険譚!

借金した女(SМ小説です)

浅野浩二
現代文学
ヤミ金融に借金した女のSМ小説です。

処理中です...