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第3章 カストポルクス、真の敵。
第100話 黒き大龍。
しおりを挟む「ここからは私がお話しましょう」
姿は普段のニアのままだが、光を纏っていて表情も凛々しいし、口調も変わった。
「先程まで、貴方達がニアと呼ぶ私の分身体と話していた事、及び今起こった音と振動について、私からお話し致しましょう」
「ニアではダメなのですか?」
わざわざ本体が出てくる程の事?
「ええ。馬場勇人さんにお預けしているニア? には、ある程度の知識や記憶は持つ事を許しておりますが、私の持つそれ以上の記憶や知識には簡単には触れられないようにしておりました」
「モンスターや魔法については知っていても、禁呪とか『違う段階の者』についてはなかなか出てこなかったと?」
「はい。……ですが、状況が進んで、勇人さん達がこの世界の伏せられた真実に近づきましたので、私が直接お話しさせて頂きます。――――」
ディスティリーニア曰く――
ニアが言っていたように、遥か昔に“黒き大龍”が肥大化し、モンスターを操り続けてカストポルクスの生命や自然・植物が滅亡の危機を迎えた。
その当時、カストポルクスにはディスティリーニアとアレアルティスという二柱の神がいた。
神には『星の営みには介入せず』という不文律があるのだが、“黒き大龍”の行いは星の命運をも左右するものであった為、二柱の神は介入を決めた。
「私とアレアルティスとで黒き大龍と戦い、充分に弱らせたところでアレアルティスが自らを犠牲にして、黒き大龍をある大陸に封印しました」
「そのアレアルティスは命を犠牲にしたのですか?」
「話せば複雑ですし、神界の事ですので詳細は言えませんが、神格を犠牲にしたということです。あの方は神では無くなり、記憶を取り除かれ、どこかで天使として他の神に仕えているはずです」
話が少し逸れてしまったが、その封印から数万年の後。その大陸にも自然が戻り、生命も隆盛していた。
しかし、数万年という年月の経過によって少しずつ封印が緩んでいき、黒き大龍の思念やモンスターを操っていたような禁呪が少しずつ漏れていった。
それがその大陸の者を狂わせ、他の大陸の人間も呼び込み巻き込んでの酷い争いが起きた。
その争いは凄惨を極め、その大陸で破局的な争いとなり、全ての生命・自然・植物を死滅させた。
「それが黒の大陸と呼ばれる大陸で、このカストポルクス北部に今でも存在します」
「あれ? 俺達がステータスを初めて見た時に、ニアが『力を数値化する事によって、力を追うあまりに争いによって荒廃した土地がある』的な事を言っていたような気が……」
「そうです。“黒き大龍”の禁呪によって、そのように操られた者が出ると、他の種族も対抗せざるを得なくなったのです」
他にいくつかの段階や要因があって破局的な戦いに繋がったのだが、ニアにはその段階までしか触れさせてなかったからそのような言い方になったらしい。
『分身体ですので……』って、そういう意味も含んでいたのかな? 当時は全然分からんかったな。
「それと、龍人族に伝わる黒いドラゴンの話も、元は“黒き大龍”の思念がドラゴンの卵に影響を及ぼして、生まれるドラゴンを黒きドラゴンにしたモノです」
「……で、聞いたように、ある程度成長したら狂って周囲に破滅をもたらす?」
「はい。その時に他に強力なドラゴンや龍人がいれば被害が抑えられるのですが、いない場合は甚大な被害が出るので、それが龍人族の中で伝承されたのでしょう」
俺とアニカ、そして動けないピルムはディスティリーニアの話を聞いているが、ミケとアニタは暇そうにメルガンやメルティナを小突いたり、鎖を蹴ったりしている。
まだどんな代物か解っていないから、危ないので鎖には触れるなと、改めて釘を刺す。
話を中断して悪いとディスティリーニアに謝ると、「お気になさらず」と言い、話を続ける。
「そして……今起きた、音と振動。これは黒の大陸の“黒き大龍”の叫びです」
「復活したのですか!?」
「いいえ。封印はまだ効いていますが、地中での大きな叫びが地上に出たのでしょう。その影響で、これから各地で何かしらの異変が起こるでしょう」
「異変?」
「はい。モンスターの暴走であったり、狂化、人心の変化もあるかもしれません。もちろん異変が起こっても、自分たちで対処できる種族や国もあるでしょうが、中には手に負えない所もあるのではないかと……。勇人さんには、その鎮静化に力を貸してもらいたいのです」
「……ええ、分かりました。俺達でお役に立てるのなら」
そこで、俺の頭にバハムートのスキルが浮かんだ。
「あの、ディスティリーニアさん。もしかして【聖剣技】って……」
と問いかけると、ディスティリーニアは静かに頷いた。
「そうです。魔王にではなく、“黒き大龍”への対抗策になり得る技なのです」
か~~~! 大変なモノを引き継いだもんだ!
「異変は、すぐに起こるとは思えませんが、優先度は高いと思います。どうかお願いしますね、馬場勇人さん」
「あ、あの! 携帯ショップにいたのって……もしかして?」
「はい、私です! 覚えておいででしたか……嬉しいです」
ディスティリーニアは、「今度、私にも美味しいモノを食べさせて下さいね」と言って消えて、ニアが戻ってきた。
「ニアは聞いていたのか? 今の会話」
「はい。本体の許しがありましたので。……大変な事になりましたね」
「本当にな。それに……」
俺はミケ達に小突かれ続けているメルガンとメルティナに目をやる。
ミケとアニタもこちらに呼んで、改めてアニカとアニタにどうしたいかを問う。
「私は……この人達の口から、どうしてあんな事になったのか聞きたいですけど……危ないですか?」
「う~ん? 2人を一緒にしていると厄介だな」
「アニタはわかんない!」
「我がトドメを刺そうか?」
「待て待て、物騒だな。――あれ? でも待てよ? さっきニアは禁呪って闇系統魔法と“まじない”って言ってたよな?」
「はい。そうです」
「ってことは、だ。この鎖と首輪……俺とスマホとアニカの光属性魔法で、色々試してみるか?」
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