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第3章 カストポルクス、真の敵。
第111話 龍人領の異変。
しおりを挟む俺達は魔王城を出て、数日振りにマッカラン大公国へ戻った。
キースの宮殿へ行くが、ミケ達を連れて行ってお菓子を出してもらっても悪いし、どうせ簡単に挨拶程度に話をするつもりなので、ミケ達には冒険者ギルドへ行って待っていてもらう。
ピルムもいるしな。
「おおユウト殿。どうぞ入ってくれ」
執務室へ通されると、いつものメイドさんがお茶を出してくれたが、ミケ達がいないのを寂しがっているようだった。
「3日振りくらいですが、マッカラン大公国に異変はありましたか?」
「いや、これが不思議なのだが、無いんだよね……。ほら、エルフの大森林の山の噴火も風向きの関係で被害も無いし、国境を接する獣人領のモンスターの凶暴化もこちら側には来なかったしね」
「人心の変化は?」
「それも無さそうなんだ。ユウト殿の報告以降、各地との連絡を密にしているのだけど、変化は無いよ」
「良かったではないですか」
それでもキースは警戒を緩めてはいないのか、浮かない顔をしている。
俺は、3日前にマッカランを出て以降の各国の異変について、俺の知る限りを伝えた。
「ふんふん。魔大陸を含めて、各国で異変が認められているんだね?」
「どこも被害が拡大する前に治められて、良かった」
「ユウト殿……。やはり気がかりな事があるんだ」
キースの気がかりとは、マッカラン大公国の北部で常に小競り合いをしている龍人族の事だ。
“ドラゴンの巣”に向かう時にチラッと見た所だな。
ここ数日は大きな衝突も無く落ち着いているらしいのだが、いくら敵勢力といえども同じユロレンシア大陸内という事で、気になっているそうだ。
「奴らの勢力下で何かが起こっていて、それを奴らが解決できなかった場合、マッカランや獣人領に被害が及ぶかもしれない」
「そうか……。調べようにもマッカラン側が行けば、侵攻と捉えられて余計な軋轢が生まれるかもしれないということですね?」
「うん。申し訳ないが、龍人領を見るだけでもお願いできないだろうか」
「わかりました……。いずれにしろ明日にでも北の“黒の大陸”の向かおうと思っていたので、ついでに覗いてみますよ」
キースが宿を手配してくれようとしたが、ピルムもいるので辞退した。
帰りがけにメイドさんが袋いっぱいのお菓子をくれた。……いい人!
俺が冒険者ギルドへ向かうと、みんな上空にいて俺を待っていた。
ミケ達は一応ギルド内に行ったらしいが、「ハンナもおらんかったし、突っ掛かってくる馬鹿もいなくなってつまらん!」との事だ。
お菓子や食材を調達して、適当な場所を見つけてキャンプする。
実は俺のストレージにケーキの在庫が少なくなってきている事は、みんなには内緒だ。
人数が増えた事もそうだが、毎日の必需品になるとは思わなかったからな。あれだけ買い込んだのにな……
すぐに尽きる事は無いが、いずれ尽きる日に備えておかなければならないだろう。
俺達はこっちの世界のボア肉や、ミケ達が仕留めたハンマーヘッドバイソンの肉で、焼肉大会を済ませた。
アニタはピルム相手に遊び始めたが、俺はミケとアニカに予定を伝える。
「明日は朝から“黒の大陸”に行こうと思っていたけど、キースの頼みでちょっと龍人領を見てから行く事になった。何事も無ければそのまま北上だ」
「我は別に構わん」
「はい」
今日も比較的ゆっくり過ごせているので、久し振りにステータスを確認する。
いつだ? ピルムと出会って以来か。
名前 : ユウト ババ
種族 : 人族
年齢 : 24
レベル: 85
称号 : 世界を渡りし者 英雄
系統 : 武〈長剣〉 魔〈全〉 製作 商
スキル: S・聖剣技〈10〉 SS・魔法大全〈9〉
A・言語理解 A・魔力回復‐大‐ A・使用魔力低減‐大‐
B・探知〈9〉
名前 : ミケ
種族 : 白狐
年齢 : 0
レベル: 86
称号 : 世界を渡りし者 異界の神の眷族
系統 : 武〈拳・爪・獣〉 農
スキル: SS・操雷〈10〉 A・言語理解 A・感知〈7〉
C・火属性魔法〈9〉
名前 : アニカ クマル
種族 : 人族
年齢 : 10
レベル: 84
称号 : 世界を渡りし者
系統 : 武〈長柄〉 知識 魔〈光〉
スキル: A・言語理解 A・強靭〈10〉
C・槍技〈10〉 C・光属性魔法〈10〉
B・探知〈5〉 C・水属性魔法〈3〉
名前 : アニタ クマル
種族 : 人族
年齢 : 7
レベル: 85
称号 : 世界を渡りし者
系統 : 武〈短剣・弓〉 農 魔〈無〉
スキル: A・言語理解 A・感知〈10〉
C・短剣技〈10〉 C・無属性魔法〈10〉
C・風属性魔法〈3〉
名前 : ピルム
種族 : ハイドラゴン種
年齢 : 1
レベル: 〈2〉
称号 : 決意の成就せしドラゴン
系統 : 大地
スキル: S・人化〈2〉 A・大地の棘〈5〉
……体感として分かってはいたけど、魔法大全は〈9〉のまま。長い! 上がらない!
アニカとアニタとは、魔王城に行ってから一緒に戦っていなかったけど、6くらいレベルアップしているから、結構キツイ戦いをしてきたんだな。
ピルムも人化の時間が長くなったと思ったら、スキルレベルが上がっていたんだな。どことなく尻尾が小さくなっている気もするしな。
「ミケは、もう少しで火属性魔法が〈10〉になるな?」
「うむ。我のカッコイイ火が更に強力になるぞ?」
「アニカの水魔法も、アニタの風魔法もレベルアップしているしな」
「私もアニタも、バイソンの群れの時はほとんどそっちを使っていましたから」
「ヒューってね! ナイフよりも時間かかっちゃうけど、がんばったの~」
「ピルムも早う人化のレベルを上げい! アニタだけじゃぞ? 人化が解けて喜んどるのは」
[はい! 私もお洋服を着られるようになりたいです!]
「俺は、ピルムのバスタオル姿は良いと思うけどなぁ」
ピシャッ!
「――痛ぁぁ!」
「ユウトよ、バスタオルで思い出したわ。風呂じゃ風呂! 用意せい」
「……はい」
誰か土魔法覚えないかな……
朝になって、準備を整えて出発する。
マッカランと龍人領の境界に着くと、マッカラン側の陣には騎士達がいて、きっちりとした守備陣形を敷いている。
だが、龍人側には誰もいないようだ。
キースの依頼という事があるので、マッカラン軍の陣に俺だけ降りる。
「閣下からの依頼でお出でになったのですか」
指揮官の言うところでは、一昨日から龍人が出てこなくなり、たまにコチラの様子を窺う龍人がくる程度との事。
「偵察を送ったりは?」
「いいえ、侵攻と取られかねないのと……、罠の可能性もあるので」
予定通り、俺達が見に行く事になった。
しっかりと認識阻害をかけて侵入する。
龍人族の陣のはるか後方まで、誰もいない。潜んでいる気配も無い。
だが、奥へ進むにつれて龍人の死体が転がるようになった。
しかも斬られた刺されたとかではなく、裂かれたというか千切られたという程の損壊具合だ。
「なんだこりゃ。ピルムじゃなきゃ出来なそうな殺し方だな」
[その例え、なんか嫌です~]
「我なら跡形も無くやるがの?」
「そこは張り合わなくていいから」
仲間割れの線は無さそうだけどな。
もうしばらく進むと、怒声が聞こえて来た。
「また始まったぞー! 意地でも押さえ込めぇ! 耐えないと俺らがやられるぞっ!」
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