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第五章 学園編2

第66話 夕食①

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 授業が終わる。
 せっかくだから夕食は皆で取ることにした。

 寮では男子と女子は建物が別々であるので今日は外食をすることにした。

 6人は何を食べようかと話し合う。
 ルーシーはふと疑問を言う。

「あのー。ニコラス殿下は私達と一緒に外食しても良いんですか? 身分的に……」

 貴族の文化を知らないルーシーらしい質問。側に仕えるアベルとゴードンとしては少し注意すべきかと思う。

 皇子とて外食はする。先々代の以前の時代であれば皇族は決して庶民が通うレストラン等にはいかなかっただろう。
 だが今は違うのだ。

 ニコラスはルーシーに注意をしようとした二人を制止し答える。

「もちろん、俺が皇子だって外食はするよ。……というかな、外食するしかない。ほら、俺の家は今工事中でな。しばらくは寮で過ごすことになったんだ。
 それでその間はアベルとゴードンの部屋にしばらく世話になっている。……すまないな本当に」

「いえ、こちらこそ何も出来ず申し訳ありません。殿下には個室をと、散々寮監に説得したというのに……」

「いや。寮監は兄上とは知己だ。俺を甘やかさない為だろう。だが、俺の為にお前達には迷惑を掛ける、だが連帯責任だと言って譲らなかったよ、兄は厳しい方だから」

 というわけで、現在はアベルとゴードンの二人部屋に皇子が押しかけ、手狭なようだった。

 もっとも、アベルとゴードンは結構偉い貴族家の子供で、寮の部屋自体は広い。もう一人くらいどうということはないだろう。

 平民であれば男三人一つの部屋でも別に何も問題ないのだ。むしろ殿下は今までが甘えていたのだ。

「では、殿下、今日のディナーはいかが致しましょう?」

 週末はどこも満員。予約をしないと6人は難しい。大衆食堂ならまだしも皇子様だ。
 もちろんアベルとゴードンは予約などしていない。
 事件の直後でそこまで気を回せないのだった。

 ルーシーはもちろん、ソフィアも周辺のレストランについては詳しくない。

「それじゃあ、味も量もなかなかで、私の知ってるお店があるんだけどそこにする?」

 セシリアはそう言うと、返事も聞かずに一人で歩きだす。
 特に選択肢はないので一同はセシリアに続く。

 セシリアが言うには学園からは少し遠いが馬車を使うほどの距離ではないらしい。
 ルーシーは土地感がまだないのでソフィアにそっと尋ねる。
 だがソフィアの返事もあいまいだった。

「うーん、私もここに来たのは初めてですし……。ねえ、セシリアさん。ここって冒険者ギルドの近くよね。ということは……」

「はい、冒険者ご用達の食堂兼酒場です。ちなみに父上のお店ですので家族割りが効きます。ですのでお腹いっぱい食べてください」

 店の前に着くと外からでも中の賑わいが分かるくらいに客で一杯だった。

「クノイチ亭、ベラサグン本店。クノイチ?……聞きなれない言葉ですわね」

「ええ、そのはずです。クノイチとは私の母方の一族の言葉で、特殊なスキルを持った女性の魔法戦士のことです。父上はクノイチだった母上に多大な敬意をもっており店の名前にしたそうです」

 セシリアを先頭に6人は店に入る。

 店内は随分と広い。お客さんはいっぱいいる。冒険者とはこんなにいたのかとルーシーは思った。
 東グプタでは冒険者はほとんどいないからだ。

 奥からウェイトレスさんが来た。
「いらっしゃい。あら。これはこれは、セシリアお嬢様じゃないですか」

「うん、今日はお友達を連れて来た。席は空いてる?」

「ええ、空いてますよ。もっとも空いてなくても空けさせますけどね!」

 そう言うと、たくましい二の腕を見せるウェイトレスさん。
 普段から大盛りの料理が乗ったお皿を運んで鍛えられていることが伺える。

「そういうのは良くない。でも相変わらず繁盛していますね」

「ほんと、オーナーのおかげで毎日繁盛さね、でもすっかり鍛えられちまって、今ではお客さん達からは元冒険者疑惑を掛けられたりとかね。おっと長話はいけないね。さあ6名様ごあんなーい!」

 そういうとウェイトレスさんは奥のテーブルに案内してくれた。
 店内は清潔。冒険者がお客のほとんどで酔っ払いの笑い声が響くが、それ以外は悪くない。

 ルーシーとしてはこういうお店は初めてでワクワクしていた。
 だがアベルとゴードンは不満だった。お店がどうだという事ではない。

「あの給仕、殿下が居るというのに敬意の欠片もないとは……」

「仕方ないさ。所詮、俺は第七皇子だからな、無名なのさ……」

 自嘲気味に笑う殿下にセシリアは言った。

「半分正解、だけど殿下は無名ではない。第七皇子ニコラス様の名前くらいは皆知ってる。でも殿下には何も功績がないから、皆も顔を知らないだけ、だから元気出して」

 セシリアは無表情であったため慰めているのか馬鹿にしているのかは分からなかった。
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