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第八章 ダンスパーティー
第137話 宮中パーティー③
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ダンスフロアに入場するルーシーとニコラス。
宮殿の中央に広がるダンスフロアは、美しい大理石の床に天井にかかったシャンデリアから降り注ぐ光が反射してキラキラと輝いていた。
音楽隊が静かな前奏曲を奏でる中、美しく着飾った来客たちは各々にダンスフロアで談笑をしている。
ルーシーは余りの現実離れした光景に思わずニコラスの腕をぎゅっと握る。
そして緊張の余りニコラスの体を力一杯引き寄せたのか二人の距離は近づく、ニコラスは密着するルーシーから熱を感じた。
ニコラスの腕から彼女の心臓の鼓動が伝わる。ルーシーは自然とニコラスの腕に抱き着いていた。
「ぐぬぬ、緊張してきたー。これが上流階級のダンスパーティー。足が震えて上手く歩けない。殿下は緊張しないの?」
ニコラスは、やや不安げに自分を見上げるルーシーが愛おしかった。
「あ、ああ。たった今、俺も緊張してきた。とりあえず父上の挨拶が始まるまでは静かだから少し休憩しようか。
その、ルーシー。落ち着いて……あんまり俺の腕を握りしめても……いや、しばらくこのままでいようか……」
ニコラスはルーシーの肩を優しく抱くと、飲み物が置いてあるテーブルに向かった。
「セ、セシリアさん。あれは、なんですの? ルーシーさん殿下の腕に抱き着いてますわ? あれではルーシーさんのお胸が殿下に触れられてしまいます」
「いいえ、ソフィアさん。むしろそれでいい。あれは、モガミのクノイチに伝わる奥義『当ててんのよ』です。
でもルーシーさんにそういう知識があったとは。やはりルーシーさんはやり手。……でも惜しい、ルーシーさんのお胸はやや控え目、効果は薄いか」
「そんなことはありませんわ。ほら、殿下のお顔はみるみる赤くなっていってらっしゃいます。それに殿下の視線の先は……いやらしいですわ」
「おい、お前等、何言ってんだよ、あまり下品な会話は社交界だと減点だぞ?」
「これは失礼。アベル君。でも女の子の会話はこんなもの。夢見がちな男子はだまっていればいい。ちなみにソフィアさんは結構着やせするタイプ、脱いだら凄い」
「ちょ、余計なことを言わないでくださいまし。それにセシリアさんだって立派なものをお持ちじゃない。なんで隠してるのよ」
「これはモガミ流の掟、女性のニンジャーであるクノイチはさらしを巻いて胸は隠すの。動きにくいし、いざという時は武器にもなる」
「おいおい、たのむから俺達の前でそんな話はするなよ。……その、会話に参加できないだろ?」
「ふふふ、サービス。でもおかげで緊張は溶けた。これからカチコチになっているルーシーさん達をフォローする。アベル君にゴードン君も協力するべき」
そう、ソフィアとセシリアとて初めてのダンスパーティー。それなりに緊張していたのだ。
「ああ、言われるまでもない。それにしても殿下があんなに緊張するなんてな。初めて見たよ」
「うむ、アベルよ、それだけ殿下は本気ということだ。殿下にフィアンセの前で恥をかかせるのは従者失格、全力で行くぞ」
アベルとゴードンはさすがに上位の貴族令息、緊張こそしていないが随分と気合がはいっている。
やや大げさな態度に芝居じみた言い方だった。
「ソフィアさん、これは空回りするフラグ。やる気になったポンコツ男子はろくなことを考えない。たぶんエッチな方向に二人を持っていくつもりかも……」
「ええ、セシリアさん私もそう思いますわ。きっと殿下をそそのかして、休憩を言い訳に、専用の個室にルーシーさんを連れ込むに違いないわ」
「だから、なんでそう言う方向に話を持ってくんだ。俺達はダンスの邪魔が入らないように殿下を中心に警戒するんだよ、何気に殿下を狙っているご令嬢は多いんだ」
「そうだぞ、それにルーシーさんだって、あの見た目だからきっと他の貴族達にダンスを申し込まれたりするだろう。
それにだ、名誉のために言っておくが殿下には女性を部屋に連れ込む度胸なんてないのさ。むしろそれくらいの甲斐性があればいいんだけどな」
アベルとゴードンは軽く溜息をつきながら笑う。
「ふむ、なるほど、男子たちと私達の利害は一致したと言える。では我々はどうしましょうか……影に徹して邪魔者は排除するとか」
セシリアはドレスの内側に隠した大小様々なナイフの位置を確認する。
セシリアの特注ドレスは武器を隠すのに最適であったのだ。
一応ニコラスの護衛任務も含まれているためアベルとゴードンの許可は得ているが。
それでも最初は武器が仕込まれているとは思わずに随分と面食らったものだった。
「おいおい、あまり物騒なことは言うなよ。それは万が一の為に特別に許可したんだからな。
それにダンスパーティーなんだからダンスをするしかないだろう? まさか踊らずに帰れると思ったのか?」
「そ、そうですわね。やはり踊らないといけませんわね」
ソフィアとしてはなんやかんやでダンスを避けれればいいと思っていたが、さすがにそうもいかなかった。
そして、音楽隊の演奏が止まると、来客たちの会話も静かになる。
いよいよ、パーティーの開始だ。
皆はバルコニーを見上げる。そして盛大な拍手と共に皇帝陛下が開催の挨拶を始めた。
宮殿の中央に広がるダンスフロアは、美しい大理石の床に天井にかかったシャンデリアから降り注ぐ光が反射してキラキラと輝いていた。
音楽隊が静かな前奏曲を奏でる中、美しく着飾った来客たちは各々にダンスフロアで談笑をしている。
ルーシーは余りの現実離れした光景に思わずニコラスの腕をぎゅっと握る。
そして緊張の余りニコラスの体を力一杯引き寄せたのか二人の距離は近づく、ニコラスは密着するルーシーから熱を感じた。
ニコラスの腕から彼女の心臓の鼓動が伝わる。ルーシーは自然とニコラスの腕に抱き着いていた。
「ぐぬぬ、緊張してきたー。これが上流階級のダンスパーティー。足が震えて上手く歩けない。殿下は緊張しないの?」
ニコラスは、やや不安げに自分を見上げるルーシーが愛おしかった。
「あ、ああ。たった今、俺も緊張してきた。とりあえず父上の挨拶が始まるまでは静かだから少し休憩しようか。
その、ルーシー。落ち着いて……あんまり俺の腕を握りしめても……いや、しばらくこのままでいようか……」
ニコラスはルーシーの肩を優しく抱くと、飲み物が置いてあるテーブルに向かった。
「セ、セシリアさん。あれは、なんですの? ルーシーさん殿下の腕に抱き着いてますわ? あれではルーシーさんのお胸が殿下に触れられてしまいます」
「いいえ、ソフィアさん。むしろそれでいい。あれは、モガミのクノイチに伝わる奥義『当ててんのよ』です。
でもルーシーさんにそういう知識があったとは。やはりルーシーさんはやり手。……でも惜しい、ルーシーさんのお胸はやや控え目、効果は薄いか」
「そんなことはありませんわ。ほら、殿下のお顔はみるみる赤くなっていってらっしゃいます。それに殿下の視線の先は……いやらしいですわ」
「おい、お前等、何言ってんだよ、あまり下品な会話は社交界だと減点だぞ?」
「これは失礼。アベル君。でも女の子の会話はこんなもの。夢見がちな男子はだまっていればいい。ちなみにソフィアさんは結構着やせするタイプ、脱いだら凄い」
「ちょ、余計なことを言わないでくださいまし。それにセシリアさんだって立派なものをお持ちじゃない。なんで隠してるのよ」
「これはモガミ流の掟、女性のニンジャーであるクノイチはさらしを巻いて胸は隠すの。動きにくいし、いざという時は武器にもなる」
「おいおい、たのむから俺達の前でそんな話はするなよ。……その、会話に参加できないだろ?」
「ふふふ、サービス。でもおかげで緊張は溶けた。これからカチコチになっているルーシーさん達をフォローする。アベル君にゴードン君も協力するべき」
そう、ソフィアとセシリアとて初めてのダンスパーティー。それなりに緊張していたのだ。
「ああ、言われるまでもない。それにしても殿下があんなに緊張するなんてな。初めて見たよ」
「うむ、アベルよ、それだけ殿下は本気ということだ。殿下にフィアンセの前で恥をかかせるのは従者失格、全力で行くぞ」
アベルとゴードンはさすがに上位の貴族令息、緊張こそしていないが随分と気合がはいっている。
やや大げさな態度に芝居じみた言い方だった。
「ソフィアさん、これは空回りするフラグ。やる気になったポンコツ男子はろくなことを考えない。たぶんエッチな方向に二人を持っていくつもりかも……」
「ええ、セシリアさん私もそう思いますわ。きっと殿下をそそのかして、休憩を言い訳に、専用の個室にルーシーさんを連れ込むに違いないわ」
「だから、なんでそう言う方向に話を持ってくんだ。俺達はダンスの邪魔が入らないように殿下を中心に警戒するんだよ、何気に殿下を狙っているご令嬢は多いんだ」
「そうだぞ、それにルーシーさんだって、あの見た目だからきっと他の貴族達にダンスを申し込まれたりするだろう。
それにだ、名誉のために言っておくが殿下には女性を部屋に連れ込む度胸なんてないのさ。むしろそれくらいの甲斐性があればいいんだけどな」
アベルとゴードンは軽く溜息をつきながら笑う。
「ふむ、なるほど、男子たちと私達の利害は一致したと言える。では我々はどうしましょうか……影に徹して邪魔者は排除するとか」
セシリアはドレスの内側に隠した大小様々なナイフの位置を確認する。
セシリアの特注ドレスは武器を隠すのに最適であったのだ。
一応ニコラスの護衛任務も含まれているためアベルとゴードンの許可は得ているが。
それでも最初は武器が仕込まれているとは思わずに随分と面食らったものだった。
「おいおい、あまり物騒なことは言うなよ。それは万が一の為に特別に許可したんだからな。
それにダンスパーティーなんだからダンスをするしかないだろう? まさか踊らずに帰れると思ったのか?」
「そ、そうですわね。やはり踊らないといけませんわね」
ソフィアとしてはなんやかんやでダンスを避けれればいいと思っていたが、さすがにそうもいかなかった。
そして、音楽隊の演奏が止まると、来客たちの会話も静かになる。
いよいよ、パーティーの開始だ。
皆はバルコニーを見上げる。そして盛大な拍手と共に皇帝陛下が開催の挨拶を始めた。
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