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第一章

第6話 飯より宿

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 目的地に着いたら最初にすることがある。食事か? 観光か? いや違う、宿探しである。

 俺はさっそく宿を探した。日本には飯より宿という有名な格言があるのだ。

 ちなみにロボットばれしないために食事は出来るようにしとかないといけないが。それに時間を掛けてしまうと気付いたらどこの宿もとれずに、町にいるのに野宿という悲惨な状況になる。

 あれはテレビの企画だから面白いのであって現実でやるのは馬鹿だ。

 というわけで、俺は宿屋街まで来ていた。

 ちなみに所持金は金貨が数枚と銀貨に銅貨など、割と現実的な金持ちのお嬢さん設定にふさわしいくらいはもってきている。

 もちろん学費込みだ、ちなみに相場はよくわからない。それは別に大したことじゃない。むしろこの外見でやたら詳しかったら怪しいと言える。

 足りなくなったら、何個か持ってきたミスリルインゴットを換金すればいいのだ。いや素直に仕送りしてもらえばいいのかもしれないが。

 そんなことを考えながら数件ある宿屋から。無難な宿、決して高級というわけではないが。安宿でもない。女性一人でも大丈夫そうなそこそこ高級の宿を選んだ。

 この辺は大事だ。最高級を選ぶとどこぞの貴族様アピールになってしまう。だからそうだな、一番高そうな宿から三番目くらい格下の宿をチョイスした。


 これならよい。二番目の宿でも貴族様アピールだ、三番目がいい、二位ではダメなのだ。

 俺は中に入ると。仕立てのいい服をきた男性がカウンターにたっている。受け付けはあそこか。

 カウンター目指して歩いていると途中で従業員らしいメイド服をきた女性を見つけた。

 なんだろう、メイド服のデザインは俺がいたころに比べて随分変わったな。割とかわいい感じに進化している。俺が持ってきたのに比べるとデザインに遊びがみられる。

 ここはそういうホテルではないはずだよな。そういうホテルというのに行ったことがないので全て憶測なのだが。


 そう思いながら、とりあえず二週間分の宿泊料を払い部屋まで来た。


 言っておくが、受け付けは無難にこなせた。

 事務的な手続きでどもるほどの陰キャではない。多少、気を使われていた感じがしたが、接客がとても丁寧ないい宿なだけだ。

 クッキーやキャンディーなどのお菓子をくれるただの親切ないい宿だ。

 しかしこれは好都合だ。いまから飯を食えるようにしないといけないからだ。


 いきなり、食堂にでて実践するにはリスクが大きい。


 さて、この体は俺が作ったロボットだ。自慢ではないが食事が出来るようにはできる。別に食べる必要もないがもともと機能はあるのだ。


 半永久的なエネルギーを生み出す【太陽の魔石】をエネルギー源にしたこの体、三号機は食事によるエネルギー補給が必要ない。

 二号機以前のロボットは食事によるエネルギー供給が基本だったので。現三号機にもその機能はある。

 使ってないだけなので今からその機能を起動させるだけだ。なぜ、現三号機に食事の機能があるかというと、当たり前だ。味見をしない料理人の作った飯が食えるか。とうわけで味覚の機能のみ使用していた。

「さて、ロボさんや。いまから食事機能を起動させるから、君の身体を少々いじくることになるがいいかい?」

(おや、マスター、わざわざ聞く必要は? むしろいやらしく聞こえますよ)

「いや、これは君の身体だ、それにいやらしい気持ちはない。ないのだ、だか本人の了承なしに行うのはダメだ」

 いくら俺が作ったロボットとはいえ人妻の身体をだな、いや、だんだんいやらしく聞こえてくるからやめておこう。

 俺は、服を脱ぎ、バスルームに向かう。なんとこの部屋、というかこの宿は全室に風呂があるのだ。この辺は時代の進化を感じた。

 俺がいたころはこういう風呂付宿はなかった。まあこんな高級宿じたい入ったことは無かったが。


 というわけでお湯をだしつつ俺はあくまで入浴中という状況を作る。ありばい工作みたいだが、もしもの時のためだ。

 部屋にラッキースケベ属性の何者かが侵入しても裸でいる理由に正統性がでる。俺がロボットだということはどんなことがあってもばれてはいけない。

 慎重すぎるが。正体がばれたらそいつは殺すしかないのだ、俺は殺したくないからな。


 風呂にある鏡の前に立つと。俺は鏡に映る自分の瞳の奥を見つめながら。

「管理者モード、パスワード入力。奇妙奇天烈摩訶不思議奇想天外四捨五入出前迅速落書無用」

 管理者モードのパスワードを言うと瞳の奥が光った。俺は長文のパスワードは苦手だが、これは歌うように言える。日本の有名な歌の歌詞である。


 さて、管理者モードに移行したのを確認し、瞳の奥の光が点滅するのと同時に胸部が開いた。

 心臓部にある【太陽の魔石】が露出した状態となる。まあ、グロくはない。その辺は安心してほしい。

 俺もグロ系は苦手だ。

 こうして、俺は鏡に移る自分を見ながら。食事機能、つまり食べたものを【太陽の魔石】に吸収させるように改造を施した。

 まあ、食事によるエネルギー補給も今の身体では必要と言えるし結果往来だ。少しは足しになるだろう。

 これからの俺は魔法学院に行くのだから必然的に魔法を使用する機会が増えるだろう、その分だけでも食事で補うのは理にかなっていると言える。


 さっそく、クッキーを一口。うん旨い……とはいえないかな、ぼそぼそだ。そうだロボさんの感想も聞かないと。

(ぼそぼそですね。60点です。しかし味の基本はおさえてありますので。一般的に普及してるお菓子としては良い方だと思います)

 そうだな、日本のお菓子は旨いのだ。それに比べたらこんなものか。ここはパティシエとして今後の活動に、いややめておこう。


 さて、ちょうどお湯も貼れたしお風呂につかるとしよう。恐れていたラッキースケベの襲来などなかった。

 まあ、実際そんなやつなどいてたまるか、鍵はかけてあるのだ。というかなぜ世の中のヒロインは着替え中や入浴中に部屋の鍵を掛けないのか。覗いてくださいと言ってるようなものじゃないか。

 そんなことを考えながら湯船につかる。
 
 久しぶりの風呂だ。風呂はどこの世界でも裏切らない。人類共通の宝物だ。


 ちなみに、貰ったお菓子はもったいないので全て食べて翌日を迎えた。
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