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第一章
第11話 シルビアさん
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数日たちアールとシルビアは無事合格したとの通知が来た。
アールは制服をまだ持っていなかったので。約束通り二人で買い物にという流れになった。
アールとシルビアの二人は商業地域で待ち合わせとなった。シルビアの邸宅は商業地域から少し離れているため。馬車で近くまで来たのだという。
最初はアールのいる宿屋まで迎えに行こうとしたが、それでは大げさになってしまうということで現地集合という形になった。
シルビアは外出用のドレスを着ていた、仕立てはいいが質素なデザインのものを彼女は好んだ。傾向として貴族は皆、質素なものを好んで着るが公爵家はそれが顕著であった。
アールは今日もワンピースだったが。以前とはやや異なるデザインのものだった。彼女が言うには故郷ではこれが流行のファッションらしい。
たしかに美しい布地であったため、シルビアとしては興味がわいた。素材について質問をしたが。アールははぐらかしていた。どうやら魔物の糸を使っているそうだ。
今から4000年まえに【魔法都市ミスリル】では魔物との交流がはじまったそうだった。糸を出す魔物とは何か気になったが。シルビアとしてはその個体がなんなのか想像するにとどめた。
彼女は虫が苦手である。糸を出す虫系の魔物はグロいのが多い。アール自身もそんなニュアンスで説明したので想像するだけでぞっとしたのだった。
そんな話をしながら街を歩くと目的の服屋に着いた。ここは魔法学院指定の制服を扱っている。
シルビアがやってくると少し店内の空気が変わった。公爵家は共和制の国でも名家には変わりない。店員たちは忖度せざるを得ないのだった。
しかし、そんな引き締まった店員たちの表情は、アールを見るとみるみる緩んだ。
「あら、この間のお嬢ちゃんじゃない。どうしたの? もっと大胆なのが着たくなったのかしら?」
アールはもじもじしながら。
「今日は……おれ、私の制服を買いに来た……の」
シルビアは思った。アールは可愛い。男女は問わず誰からも好かれるのだろう。私も好かれるように努力するべきなのかしら……と。
努力した結果が、先ほどの店員の反応だったのだが。かといって彼女の真似は無理だろうとも思った。
彼女の可愛さは幼さに似ているのだ。買い物を済ませて喫茶店に立ち寄ったとき彼女はアイスクリームが食べたいといった。
そこまではいい、シルビアとしても甘いものは好きでアイスクリームは割と高級なお菓子にはいる。
しかしアールは小さな口を思いっきりあけアイスを頬張ったのだった。とうぜん口の周りはクリームだらけになってしまった。
わざとやっているのだったら相当あざといが振る舞いが自然すぎるし。途中で誰かに叱られているのかのようなびくっとした反応をすると口元を紙ナプキンで拭いた。
子供っぽい仕草だが子供というわけでもない。彼女は常識はあるし頭がいい。魔法学院ではシルビアと同じAクラスなのだ。
しかしこの彼女の身のこなしのちぐはぐさがシルビアにとっては違和感に思えた。まあこれから同じクラスなのだからそれも慣れてくるだろう。
なにより、学院での最初のお友達なんだから。とアイスクリームを頬張るアールを見ながら思った。
「さてと、まだ時間に余裕がありますわね。どこか行きたいところはあります?」
シルビアは彼女が何に興味を持っているか気になっていた。
「そう……ね、えっと魔法道具屋さんに興味がある……の」
魔法道具屋とは、なんとも魔法使いらしい。シルビアはてっきりぬいぐるみが欲しいと言うのかと思っていた。
実はシルビアもぬいぐるみが好きであったので。この後一緒に行こうかと思ってたくらいだ。自分の方が可愛らしい趣味だったことに少し恥ずかしくなった。
魔法道具屋は商業地区の若干はずれにある。
魔法学院からの方が近い場所にあるため、主なお客さんは学院の先生や生徒たちであった。
「さあ、着きましたわ。でもまだ授業が始まってもないのに熱心なのね」
そういうとアールの表情は少し明るくなったような気がした。これが本来の彼女の表情なのかしらと、シルビアは思った。
アールは先ほどの服屋とは違い堂々と店内に入っていった。
「お、あったぞ……だわ。 これだ、わ、これが丁度ストックからなくなってたのだぜ」
口調がやや変わっていたが、それよりも彼女の態度の変わりように驚いてしまってシルビアは特に気にしていなかった。
「ちょっと、さっきから何を探していますの?」
アールは少し間を置き、咳払いしながら。いつもの調子にもどる。それでも、いつもよりずいぶん饒舌ではあったが。
ひょっとしたら魔法道具がかかわるとこういうテンションになるのかとシルビアは彼女の新たな一面を知れて嬉しくなった。
「こほん、これは魔法道具の材料。魔石のブランク品」
「知ってますわ。それに魔力を込めることによってさまざまな魔石になるのよね」
「そう、これを小さく加工して弾丸を作るのだ……だわ。プライマーとガンパウダーがこの魔石で代用できるのぜ」
「ちょっとアールさん、何言ってるのかわかんないわよ。あと口調がおかしなことになってますわ」
シルビアは少し、いやかなり調子の狂った友人に引きながらも。饒舌に語る彼女の話を聞くはめになった。
どうやら筒状の魔法道具に弾を入れて発射して遊ぶ大人のおもちゃらしいのだが。
あまりに熱っぽく語るそれは卑猥な単語にしか聞こえない。そんな魔法道具は知らないし、知りたくない。
彼女は大人だ……。そうシルビアは少しだけ恐怖を覚えたのでした。
アールは制服をまだ持っていなかったので。約束通り二人で買い物にという流れになった。
アールとシルビアの二人は商業地域で待ち合わせとなった。シルビアの邸宅は商業地域から少し離れているため。馬車で近くまで来たのだという。
最初はアールのいる宿屋まで迎えに行こうとしたが、それでは大げさになってしまうということで現地集合という形になった。
シルビアは外出用のドレスを着ていた、仕立てはいいが質素なデザインのものを彼女は好んだ。傾向として貴族は皆、質素なものを好んで着るが公爵家はそれが顕著であった。
アールは今日もワンピースだったが。以前とはやや異なるデザインのものだった。彼女が言うには故郷ではこれが流行のファッションらしい。
たしかに美しい布地であったため、シルビアとしては興味がわいた。素材について質問をしたが。アールははぐらかしていた。どうやら魔物の糸を使っているそうだ。
今から4000年まえに【魔法都市ミスリル】では魔物との交流がはじまったそうだった。糸を出す魔物とは何か気になったが。シルビアとしてはその個体がなんなのか想像するにとどめた。
彼女は虫が苦手である。糸を出す虫系の魔物はグロいのが多い。アール自身もそんなニュアンスで説明したので想像するだけでぞっとしたのだった。
そんな話をしながら街を歩くと目的の服屋に着いた。ここは魔法学院指定の制服を扱っている。
シルビアがやってくると少し店内の空気が変わった。公爵家は共和制の国でも名家には変わりない。店員たちは忖度せざるを得ないのだった。
しかし、そんな引き締まった店員たちの表情は、アールを見るとみるみる緩んだ。
「あら、この間のお嬢ちゃんじゃない。どうしたの? もっと大胆なのが着たくなったのかしら?」
アールはもじもじしながら。
「今日は……おれ、私の制服を買いに来た……の」
シルビアは思った。アールは可愛い。男女は問わず誰からも好かれるのだろう。私も好かれるように努力するべきなのかしら……と。
努力した結果が、先ほどの店員の反応だったのだが。かといって彼女の真似は無理だろうとも思った。
彼女の可愛さは幼さに似ているのだ。買い物を済ませて喫茶店に立ち寄ったとき彼女はアイスクリームが食べたいといった。
そこまではいい、シルビアとしても甘いものは好きでアイスクリームは割と高級なお菓子にはいる。
しかしアールは小さな口を思いっきりあけアイスを頬張ったのだった。とうぜん口の周りはクリームだらけになってしまった。
わざとやっているのだったら相当あざといが振る舞いが自然すぎるし。途中で誰かに叱られているのかのようなびくっとした反応をすると口元を紙ナプキンで拭いた。
子供っぽい仕草だが子供というわけでもない。彼女は常識はあるし頭がいい。魔法学院ではシルビアと同じAクラスなのだ。
しかしこの彼女の身のこなしのちぐはぐさがシルビアにとっては違和感に思えた。まあこれから同じクラスなのだからそれも慣れてくるだろう。
なにより、学院での最初のお友達なんだから。とアイスクリームを頬張るアールを見ながら思った。
「さてと、まだ時間に余裕がありますわね。どこか行きたいところはあります?」
シルビアは彼女が何に興味を持っているか気になっていた。
「そう……ね、えっと魔法道具屋さんに興味がある……の」
魔法道具屋とは、なんとも魔法使いらしい。シルビアはてっきりぬいぐるみが欲しいと言うのかと思っていた。
実はシルビアもぬいぐるみが好きであったので。この後一緒に行こうかと思ってたくらいだ。自分の方が可愛らしい趣味だったことに少し恥ずかしくなった。
魔法道具屋は商業地区の若干はずれにある。
魔法学院からの方が近い場所にあるため、主なお客さんは学院の先生や生徒たちであった。
「さあ、着きましたわ。でもまだ授業が始まってもないのに熱心なのね」
そういうとアールの表情は少し明るくなったような気がした。これが本来の彼女の表情なのかしらと、シルビアは思った。
アールは先ほどの服屋とは違い堂々と店内に入っていった。
「お、あったぞ……だわ。 これだ、わ、これが丁度ストックからなくなってたのだぜ」
口調がやや変わっていたが、それよりも彼女の態度の変わりように驚いてしまってシルビアは特に気にしていなかった。
「ちょっと、さっきから何を探していますの?」
アールは少し間を置き、咳払いしながら。いつもの調子にもどる。それでも、いつもよりずいぶん饒舌ではあったが。
ひょっとしたら魔法道具がかかわるとこういうテンションになるのかとシルビアは彼女の新たな一面を知れて嬉しくなった。
「こほん、これは魔法道具の材料。魔石のブランク品」
「知ってますわ。それに魔力を込めることによってさまざまな魔石になるのよね」
「そう、これを小さく加工して弾丸を作るのだ……だわ。プライマーとガンパウダーがこの魔石で代用できるのぜ」
「ちょっとアールさん、何言ってるのかわかんないわよ。あと口調がおかしなことになってますわ」
シルビアは少し、いやかなり調子の狂った友人に引きながらも。饒舌に語る彼女の話を聞くはめになった。
どうやら筒状の魔法道具に弾を入れて発射して遊ぶ大人のおもちゃらしいのだが。
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彼女は大人だ……。そうシルビアは少しだけ恐怖を覚えたのでした。
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