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第二章
第78話 博物館
しおりを挟むちなみに、シルビーはあの後、持ち出しに難があるため、試作一号機のディーに埋め込み、主導権をシルビーに移行している。
まあ、ディーは単純なAIであって、人格があるわけではない。
口調が某ネコ型ロボットの旧型にそっくりなだけで、ただのサポートAIである。愛着はあるがこの際は実用性を優先した。
だからだろうか、デュラハンがシルビーに突っ込むのは。
まあ、相棒がいるのはいいことだ。互いに異なる出自のAI同士で知識を深めるのもいいことだ。
そんなわけでデュラハンは新たな相棒というか、長期活動が可能となる永久バッテリーを手に入れたのだ。
「歴史館っていっても殺風景ですー、つまらないかしらですー」
せっかく永久バッテリーを手に入れたのだから普段のシャキッとした性格に戻れとは思うが、これは本人が気に入った人格らしい。というか、味をしめたな。まあそれはいい。
俺だってこの身体の魔力は完全に回復しているが、キャラを変える必要もないしな、何もなしだ。うん? 俺は何をいっている? つまり別に変わる必要はないそういう事だ。
「じゃあ、まあ、勇者の魔法をお披露目といこう、そうだな、とりあえずこの暗闇を昼間に変えようか、さてと、この広さだとこれくらいか、よし、太陽の魔石ワンデイバージョン!」
手持ちの魔石に魔法を込め、上空に放つと魔石は空中に漂い太陽のように輝いた。
「これは! さすがは勇者殿、魔法都市を永久に照らす太陽の魔石の生成過程をこの目で見れるとは、感激です」
リッチはその外見に似合わず、光を放つ上空に漂う太陽の魔石を凝視しながら感嘆の声を上げる。
「まあ、ワンデイバージョンだ、一日たつとだんだん暗くなってくるから、そんなに大したことは無い」
明るく照らされたのか、フロアの雰囲気は変わる。そこはまさに博物館のようだった。様々な展示物が展示されている。古代文明……というか、俺達のが古代文明ではないか。
自動車に、調理器……電子レンジみたいだ、それに宇宙服みたいなのもあるし。うーん、ユーギから聞いてはいたが、あと一歩で宇宙に手を伸ばす寸前だったというところか。
「あー、マスター、これって兵器ですよね? なんなのかしらーですー」
デュラハンが指さしたのは、でっかい筒が生えたトラックよりも大きな車だった。
「そうだな、俺の知識でいうとこれは戦車だな、シルビー君、解説を頼むよ」
『はい、ではガイドをさせていただきます、右手に見えますのは、マーク2自走りゅう弾砲です。
ドラゴン大戦の初期に活躍した汎用りゅう弾砲ですね。
人類同士の戦争で活躍した、りゅう弾砲を急造で対ドラゴン用にアレンジした傑作品でしょう。しかし残念なことにドラゴンに対しては無力でした。
かろうじで防衛戦にて弾幕をはることで強襲してくる飛竜に対して貢献したのみですね。威力は高いのですが空を飛ぶ飛竜への命中性能に難がありました。
その隣に見えますのが、マーク3対ドラゴン用レールガンですね。これは威力と命中精度は極めて高いのですが、発射までのインターバルが長いのが致命的な弱点となり、多くの英雄を犠牲にしました。
しかしながら後に、技術革新が起こり、マーク3は連射性能を獲得、飛竜に対して圧倒的なアドバンテージを得ました。
しかし、それによって前線に登場した貴族クラスのドラゴンの前には無力でした。
飛竜とは比べ物にならない装甲を持つ貴族級ドラゴンには命中させてもかすり傷程度でした。
所詮はミスリルの弾芯を飛ばす実態弾では、それよりも強力なドラゴンのウロコを貫通させるには及ばなかったようです。
さて、それでも、歴史は動きました。手負いの貴族級ドラゴンの生体を入手することができました。これによって技術は進化しました。
そうですね、その次にはある巨大な建造物ですが、……これは凄いですね。この博物館は国立でしょうか、全てが展示されています。どれも本物ですよ。
この巨大な建造物はマーク4疑似ドラゴンブレス砲ですね。これは人類が多大な犠牲を払って得たドラゴンの生体と、バイオテクノロジーの進化によって得たドラゴンの切り札であるブレスを再現した兵器です。
これによってドラゴンの王族を倒したとされます。ちなみにマーク4の開発と同時にメカドラゴンの開発も並行して進められました。マーク4を発射するためにはドラゴンの生体パーツを必要としたからです。
さてこの奥にもう一つフロアがあるようですね。開けてみましょう。』
一通りの解説を聞いた一同、なるほどな、旧人類の兵器の歴史に触れたわけだ。歴史オタクで教授のスヴェンソン先生なんか連れてきたら凄い反応だっただろうな。
シルビーがなにやらパスワードを送信したのか巨大な扉が開く。
その中にはあった、先程のマーク4よりも二回りでかい。というかビルみたいなドラゴンの像が立っている。
『やはりありましたね。これはかつて私が搭載されていた機竜3号機ですね、外形がかなり変わっていますが。そうですね装備が対人用になっています』
たしかにな、両手の指先には不格好な爪の様な機械に小さな穴が空いている。あれは絶対バルカン砲だ。それに両肩の上からはなんだろう、キャノン砲だろうか、それがバックパックから両肩の上部に向かって巨大な砲身を傾けている。
カッコいいけど重武装すぎないか? ごてごてしすぎておもちゃっぽい。むしろ機動力を犠牲にしているのではと思われるほどに重武装である。
『はい、ごもっともです、これは対人用装備ですね。全ての武装が貴族級のドラゴンには無力です。しかし、主砲であるマークファイブはそのままですね。固定装備ですから外すことが出来なかったかもしれませんが、まあ、人類に対してはオーバースペックですし、この装備構成だと一回、発射できるかどうかという感じでしょうか』
ふむ、ドラゴンの口にあるのがマークファイブってやつか、隙間から覗くメカメカしい兵器に男心をくすぐられたのだった。
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