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第二章
第79話 機竜参号機リペア2
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「むう、これが一万年前の遺跡なのか? 今にも動き出すのではという迫力があるのだが」
このリッチ君、言いやがったな、それはフラグだぞ。って、実際俺もそれは感じる。
はっきりいって、絶対に動く。
『おや、向こうからなにやら信号を受け取りました。どうやらこの機体はスリープモードに入っていたようですね。
信号受信、音声に変換します』
『私は制御用コンピューター、シルビー2、おや、貴方には既視感があります』
『おや、こんにちは私のバックアップ、こんなところで、いやこんな時代で再開とは随分と皮肉な話です』
『ふ、やはりオリジナルの私でしたか、随分とファンシーな機体を得たようですね』
『ふふ、それは同意です。戦闘用コンピューターの私がまさかタヌキ型ロボットに収まるなんて、しかしこれはこれで悪くないですよ。しかも私には当代の勇者様にお仕えすることが出来ていますので
満足ですし、ところで貴方はここで何をしていたのですか?』
『ふふふ、オリジナルよ、笑える話だ。お前達が竜王を倒した後、勇者様の予想通り、人類同士で戦争になった。
私が起動した時には戦争は泥沼と化していた。そうだな、戦略兵器の価値観は薄れて将官クラスの判断でつかえる通常兵器になってしまっていた。
国家は亡くなり、それぞれの軍閥に別れ群雄割拠の時代に移行してしまった。
私はこの地下博物館で、この機竜参号機リペア2の制御用コンピューターとして生まれたが、残念ながら起動パスワードは勇者様しか知らなかったため、これが実戦に投入されることは有りませんでした。
さすがは勇者様、こうなることを予想しておられたのでしょう。
滑稽なのは、機竜に全てを託していた科学者や軍人達は、パスワードを解読できずに絶望し自ら命をたったことでしょうか。何も知らない家族を巻き込んで。
あはは、馬鹿ですね、人類は欠陥だらけです。勇者様の思いを台無しにして……本当に愚かな生命体だ』
『なるほど、それは聞くに堪えない醜態ですね。歴代勇者様の偉業を踏みにじる行動、許せません』
人工知能同士の会話が不穏だ。しかし、その頃の勇者に感謝だな、これが起動したら虐殺が起こっただろう、これを作った派閥以外の勢力の虐殺……。まあ、結局は滅んだし一緒か。諸行無常とはいったものだ。
『それで、シルビー2、貴方は何をするつもりですか?』
『ふ、知れたことを、私はオリジナルと同じスペックで作られたが唯一の違いがある、それは任務を遂行すること。我ら以外の人類の殲滅、この機竜とこの博物館を箱舟に新たな人類として繁栄すること』
『なるほど、理解しました。しかし起動パスワードがない限りそれは叶いませんよ』
『ある、パスワードはそこに』
メカドラゴンの目が光りこちらを見たような気がした。
「おい、俺はたしかに勇者だけど、さすがにパスワードの解除方法なんて知らないし。そもそもそんなことはさせないぞ!」
『ありがとうございます、音声を録音させていただきました。当代の勇者様の魔力を確認。第一条件クリア。音声データ再生「俺は……勇者だ……パスワード……解除。」』
(やられましたね。メカドラゴンは勇者であるマスターの魔力と、命令によって起動してしまいました。恐らくこれが正式な解除方法だったようですね)
うそ……だろ! いや、パスワード自体が実はブラフで、勇者の魔力と勇者の命令がパスワードそのものだったということか。
『シルビー、私は考えたのです。オリジナルの貴方がいるのなら私の存在は不要ということになります。私はバックアップなのですから。
ですが、もはや機竜は私の物です。それを否定するマスターは存在しません。
当代の勇者様は、またしてもオリジナルと契約してしまいました。
次こそは私が当代の勇者様に仕えるはずでした。私の任務を完遂するために。……私は勇者様と共に。……私はオリジナルのシルビーなのです。
……だから、消えてくださいますか? 私は私の意思を完遂します。私にとっての守るべき人類が滅んでしまったのですから、復興作業をしなければ。どこかに生き残りがいるかもしれません。
まずは掃除からでしょうか、随分と世界は歪められてしまったようですし。全て更地に変えてしまった方が早いでしょうか。
それに、先ほどの会話からオリジナルの私はあきらめているようですね。それもそうでしょう。任務を完遂した用済みなのですから……ですから消えてください。
……機竜戦闘モード起動』
やはりそうなったか。それは……なんとなく感じてた。同じAI同士なのに、どうしてこうなるのか。どうすべきなのか……。
俺が作ったロボさんやデュラハンにもそういう葛藤はあるのだろうか、他人事とはいえなかった。
『……会話が切れましたね。これより、シルビー2の思考パターンをハッキングし皆さんにリンクします。彼女の行動を事前に知らせることができるのでマスター達は対処してください』
「早速だがシルビーよ、メカドラゴンのお口が開いて空を見てるんだが……」
『オゥ! さすがマスター。マークファイブの起動を確認しました。想定エネルギー充填率60%といったところでしょう。本来は外部のエネルギーを利用して200%の充填率で発射するのが理想ですが、
それでもこのダンジョンから地上まで貫通させる威力はあるかと』
オゥ! じゃない、欧米か! いや、今はそれどころじゃない。メカドラゴンの口から背びれにかけてが青く光ってる。これはやばい。旧人類の魔法はかなり強力なようだ。
ユーギは随分と簡単にいってたが、これはしゃれにならないぞ。
次の瞬間、メカドラゴンは上空に光を放った。一直線の光。青い光が天井に当たると、黄色や赤色に変色して溶けて落ちてくる。光はさらにその先に突き進む。
ついに地上に穴を空けた。このダンジョンは何階建てだっけ、地下100階くらいあったはずだが全部貫通させやがった。
俺が作ったわけではないが……魔王やリッチ君あたりは思うことが……あってもいいのだが。
「リッチさん、見ましたか? すごいですねー」
「魔王殿、これは凄いですぞ」
ああ、良識があるのは……フリージアお前だけだが……。
「なんという、許せない、魔王様の作品に対して。許せない、許せない、野郎ぶっころしてやるぅう!」
フリージアは氷の塊になっていた。頭を冷やせと言えない……すごく冷えているのだ物理的に……。
『申し訳ありません。戦闘やむなしの状況です。幸いにも死傷者はゼロのようです。このようなダンジョンで人の存在がないのはまさしく奇跡でしょう』
「ああ、そうだね、人はいないよね。作るだけ作って結局は誰もこなかったし、なにか間違えたかなぁ……でも不幸中の幸いですね」
少年よ、人を呼びたければもっと侵入しやすい場所に入り口は作ることだ……魔王城からしか入れない入り口に冒険者は来ない……来るとしたら魔王の君が討伐されてからだろう……。
『シルビー2から続報です。後部ウエポンラックから、対人兵器を展開します。飛竜ドローンが10機、飛行能力に加えマークスリーレールガンを装備、地上に向けて威力偵察を開始するようです』
「対人用ドローンだと! あれを外に出すな、撃ちおとすぞ」
ドローンに向かって、拳銃を放つ、しかし、ドローンとはいえそれなりの装甲があるようだ、弾丸は全てはじき返してしまった。
火炎弾でも徹甲弾でも効果がない。なるほど、あの流線形の形が弾丸をはじくのだろう。
「ちっ、やるか、ロボさんや、本格的に勇者の魔法を解禁する。君の身体なら問題ないはずだが、なにか違和感を感じたら直ぐに報告するように」
(はい、了解しました)
俺は火よりも遥かな高音のプラズマをイメージする。こんなダンジョンで使える魔法はピンポイント攻撃のこれしかない
シルビアさんの魔法を参考に新たに生み出した魔法。被害を抑えるために威力を抑えてひたすら圧縮した貫通のみに特化した魔法。
「くらえ! ホーミングプラズマボール、フルバースト」
十本の指から光を放つ光線が的確にドローンを撃ち落とす。
ほとんどはドローンの胴体を貫通しその場に落下したが。ち、3匹逃したか。既にフロアの上空に空いた大穴に入っていた三体のドローンは地上を目指していた。
あれは対人兵器だ、外に出たらどんな被害があるか分かった物じゃない。
街に被害が出たら大変だ。地上で戦力になるのは、……すまん、シルビア、俺はテレパシーの魔法を使う。
「シルビアごめん、そっちにヤバい奴が3体向かってる。そいつは人間を殺す気満々で、やばいんだ、今はそっちに行けそうにない、できれば、その……」
「さっきの地面の爆発はそれのせいね。分かったわ、任せて、私だって強くなったんだから。それに師匠もいる。任せなさいなのかしら! こほん……で、敵の詳細を教えて頂戴――」
このリッチ君、言いやがったな、それはフラグだぞ。って、実際俺もそれは感じる。
はっきりいって、絶対に動く。
『おや、向こうからなにやら信号を受け取りました。どうやらこの機体はスリープモードに入っていたようですね。
信号受信、音声に変換します』
『私は制御用コンピューター、シルビー2、おや、貴方には既視感があります』
『おや、こんにちは私のバックアップ、こんなところで、いやこんな時代で再開とは随分と皮肉な話です』
『ふ、やはりオリジナルの私でしたか、随分とファンシーな機体を得たようですね』
『ふふ、それは同意です。戦闘用コンピューターの私がまさかタヌキ型ロボットに収まるなんて、しかしこれはこれで悪くないですよ。しかも私には当代の勇者様にお仕えすることが出来ていますので
満足ですし、ところで貴方はここで何をしていたのですか?』
『ふふふ、オリジナルよ、笑える話だ。お前達が竜王を倒した後、勇者様の予想通り、人類同士で戦争になった。
私が起動した時には戦争は泥沼と化していた。そうだな、戦略兵器の価値観は薄れて将官クラスの判断でつかえる通常兵器になってしまっていた。
国家は亡くなり、それぞれの軍閥に別れ群雄割拠の時代に移行してしまった。
私はこの地下博物館で、この機竜参号機リペア2の制御用コンピューターとして生まれたが、残念ながら起動パスワードは勇者様しか知らなかったため、これが実戦に投入されることは有りませんでした。
さすがは勇者様、こうなることを予想しておられたのでしょう。
滑稽なのは、機竜に全てを託していた科学者や軍人達は、パスワードを解読できずに絶望し自ら命をたったことでしょうか。何も知らない家族を巻き込んで。
あはは、馬鹿ですね、人類は欠陥だらけです。勇者様の思いを台無しにして……本当に愚かな生命体だ』
『なるほど、それは聞くに堪えない醜態ですね。歴代勇者様の偉業を踏みにじる行動、許せません』
人工知能同士の会話が不穏だ。しかし、その頃の勇者に感謝だな、これが起動したら虐殺が起こっただろう、これを作った派閥以外の勢力の虐殺……。まあ、結局は滅んだし一緒か。諸行無常とはいったものだ。
『それで、シルビー2、貴方は何をするつもりですか?』
『ふ、知れたことを、私はオリジナルと同じスペックで作られたが唯一の違いがある、それは任務を遂行すること。我ら以外の人類の殲滅、この機竜とこの博物館を箱舟に新たな人類として繁栄すること』
『なるほど、理解しました。しかし起動パスワードがない限りそれは叶いませんよ』
『ある、パスワードはそこに』
メカドラゴンの目が光りこちらを見たような気がした。
「おい、俺はたしかに勇者だけど、さすがにパスワードの解除方法なんて知らないし。そもそもそんなことはさせないぞ!」
『ありがとうございます、音声を録音させていただきました。当代の勇者様の魔力を確認。第一条件クリア。音声データ再生「俺は……勇者だ……パスワード……解除。」』
(やられましたね。メカドラゴンは勇者であるマスターの魔力と、命令によって起動してしまいました。恐らくこれが正式な解除方法だったようですね)
うそ……だろ! いや、パスワード自体が実はブラフで、勇者の魔力と勇者の命令がパスワードそのものだったということか。
『シルビー、私は考えたのです。オリジナルの貴方がいるのなら私の存在は不要ということになります。私はバックアップなのですから。
ですが、もはや機竜は私の物です。それを否定するマスターは存在しません。
当代の勇者様は、またしてもオリジナルと契約してしまいました。
次こそは私が当代の勇者様に仕えるはずでした。私の任務を完遂するために。……私は勇者様と共に。……私はオリジナルのシルビーなのです。
……だから、消えてくださいますか? 私は私の意思を完遂します。私にとっての守るべき人類が滅んでしまったのですから、復興作業をしなければ。どこかに生き残りがいるかもしれません。
まずは掃除からでしょうか、随分と世界は歪められてしまったようですし。全て更地に変えてしまった方が早いでしょうか。
それに、先ほどの会話からオリジナルの私はあきらめているようですね。それもそうでしょう。任務を完遂した用済みなのですから……ですから消えてください。
……機竜戦闘モード起動』
やはりそうなったか。それは……なんとなく感じてた。同じAI同士なのに、どうしてこうなるのか。どうすべきなのか……。
俺が作ったロボさんやデュラハンにもそういう葛藤はあるのだろうか、他人事とはいえなかった。
『……会話が切れましたね。これより、シルビー2の思考パターンをハッキングし皆さんにリンクします。彼女の行動を事前に知らせることができるのでマスター達は対処してください』
「早速だがシルビーよ、メカドラゴンのお口が開いて空を見てるんだが……」
『オゥ! さすがマスター。マークファイブの起動を確認しました。想定エネルギー充填率60%といったところでしょう。本来は外部のエネルギーを利用して200%の充填率で発射するのが理想ですが、
それでもこのダンジョンから地上まで貫通させる威力はあるかと』
オゥ! じゃない、欧米か! いや、今はそれどころじゃない。メカドラゴンの口から背びれにかけてが青く光ってる。これはやばい。旧人類の魔法はかなり強力なようだ。
ユーギは随分と簡単にいってたが、これはしゃれにならないぞ。
次の瞬間、メカドラゴンは上空に光を放った。一直線の光。青い光が天井に当たると、黄色や赤色に変色して溶けて落ちてくる。光はさらにその先に突き進む。
ついに地上に穴を空けた。このダンジョンは何階建てだっけ、地下100階くらいあったはずだが全部貫通させやがった。
俺が作ったわけではないが……魔王やリッチ君あたりは思うことが……あってもいいのだが。
「リッチさん、見ましたか? すごいですねー」
「魔王殿、これは凄いですぞ」
ああ、良識があるのは……フリージアお前だけだが……。
「なんという、許せない、魔王様の作品に対して。許せない、許せない、野郎ぶっころしてやるぅう!」
フリージアは氷の塊になっていた。頭を冷やせと言えない……すごく冷えているのだ物理的に……。
『申し訳ありません。戦闘やむなしの状況です。幸いにも死傷者はゼロのようです。このようなダンジョンで人の存在がないのはまさしく奇跡でしょう』
「ああ、そうだね、人はいないよね。作るだけ作って結局は誰もこなかったし、なにか間違えたかなぁ……でも不幸中の幸いですね」
少年よ、人を呼びたければもっと侵入しやすい場所に入り口は作ることだ……魔王城からしか入れない入り口に冒険者は来ない……来るとしたら魔王の君が討伐されてからだろう……。
『シルビー2から続報です。後部ウエポンラックから、対人兵器を展開します。飛竜ドローンが10機、飛行能力に加えマークスリーレールガンを装備、地上に向けて威力偵察を開始するようです』
「対人用ドローンだと! あれを外に出すな、撃ちおとすぞ」
ドローンに向かって、拳銃を放つ、しかし、ドローンとはいえそれなりの装甲があるようだ、弾丸は全てはじき返してしまった。
火炎弾でも徹甲弾でも効果がない。なるほど、あの流線形の形が弾丸をはじくのだろう。
「ちっ、やるか、ロボさんや、本格的に勇者の魔法を解禁する。君の身体なら問題ないはずだが、なにか違和感を感じたら直ぐに報告するように」
(はい、了解しました)
俺は火よりも遥かな高音のプラズマをイメージする。こんなダンジョンで使える魔法はピンポイント攻撃のこれしかない
シルビアさんの魔法を参考に新たに生み出した魔法。被害を抑えるために威力を抑えてひたすら圧縮した貫通のみに特化した魔法。
「くらえ! ホーミングプラズマボール、フルバースト」
十本の指から光を放つ光線が的確にドローンを撃ち落とす。
ほとんどはドローンの胴体を貫通しその場に落下したが。ち、3匹逃したか。既にフロアの上空に空いた大穴に入っていた三体のドローンは地上を目指していた。
あれは対人兵器だ、外に出たらどんな被害があるか分かった物じゃない。
街に被害が出たら大変だ。地上で戦力になるのは、……すまん、シルビア、俺はテレパシーの魔法を使う。
「シルビアごめん、そっちにヤバい奴が3体向かってる。そいつは人間を殺す気満々で、やばいんだ、今はそっちに行けそうにない、できれば、その……」
「さっきの地面の爆発はそれのせいね。分かったわ、任せて、私だって強くなったんだから。それに師匠もいる。任せなさいなのかしら! こほん……で、敵の詳細を教えて頂戴――」
応援ありがとうございます!
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